28 女子会という名のデート
伊集院の鬼塚への誤解は解けたが、事態は何一つ変化していなかった。
いい意味でも、悪い意味でも。
綾小路には、登校したところに声をかけて廊下まで出てきてもらった。
伊集院の誤解を解いたことを説明すると、
「そうですか……。ありがとうございます、早乙女さん」
綾小路は少し残念そうに、お礼を言った。
「い、いや、俺は別にそんな……」
結果的に何もできなかった自分が不甲斐ない。
南雲には、昼休みに話そうと思っていた。
伊集院の中に、もう綾小路への気持ちは残っていない。
となると、過去好きだったからといって綾小路を勧めるのは、伊集院にとってあまりいい気がしないだろう。
小中学生がやりそうな、幼稚な冷やかしに捉えられかねない。
逆に嫌悪感を持たれたら元も子もないのだ。
俺は昼休みに、南雲との作戦会議を開いた。
今回、綾小路は抜きだ。
「伊集院に綾小路をもう一回好きになってもらうのは、難しそうなんだ」
「ふーん……」
俺の話を一通り聞き終わった南雲は、モグモグと弁当のおかずを食べてから、
「それなら逆にしちゃえば?」
と、提案してきた。
「逆?」
「そ」
南雲は箸で俺を指さす。
行儀悪いな。
「生徒会長に、綾小路さんを意識させるんじゃなくて、綾小路さんに、生徒会長を意識させるんだよ」
「……!」
「綾小路さん側に何らかの気持ちを芽生えさせれば、生徒会長だって意識するかもしれないしね」
一理ある……気がする。
恋愛経験がないからなんとも言えないが、俺だったら、綾小路に気がある素振りをされて、平常心を保っていられる自信がない。
伊集院もハイスペックとは言え、所詮男である。
綾小路から迫ってもらったほうが、彼女に落ちる可能性が高くなりそうだ。
……綾小路に小さな片思いをしている俺にとっては、かなり苦しい仕事になりそうなことだけがネックだ。
だが、そうも言ってられない。
どうせ叶えるつもりのない恋心だ。
少しでも伊集院の気を逸らすことができるなら、それに越したことはない。
「放課後、綾小路さんと駅前のカフェとかで女子会してくれば?」
じょ、じょ、
「女子会!?」
「女子会」
外見は女子会かもしれないが、片方の中身が男なんだから、それは。
「合法的なデートじゃないか!」
「はぁ?」
俺の魂の叫びに、南雲はかわいそうなものを見る目になった。
「知らないなら教えてあげるけど、デートは犯罪じゃないよ」
甘党の南雲に、駅前のパンケーキが美味しいカフェを紹介してもらい、俺は人生初、好きな女子をデートに誘う運びとなった。
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