婚約破棄~避けられないのなら、体力で解決するのだからねっ男爵令嬢!
「エリザベスよ。前へ」
「はい、殿下・・・」
貴族学園の講堂に全員が集まられた。
今、この国の王太子ヘンドリックが婚約者、公爵令嬢エリザベスを講堂の中心に呼んだ。
王太子の傍らにはピンクブロンドの男爵令嬢がいた。
プルプル震えている。
王太子は皆が集まった事を確認して、一言発した。
【これより断罪を始める!】
すると、エリザベスの傍らに第二王子が寄り添う。
「エリザベス様、僕が付いています」
「ルドリック殿下・・・」
婚約破棄の始りだと皆は思った。
案の上、王太子は宣言をした。
「男爵令嬢サリーより。エリザベスからイジメられていると告発があった。それは相違ないか?」
「いえ、私はイジメをした覚えはありませんわ・・・むしろ私は不愉快な面に合わされていますわ」
「そうか、大勢の目撃がある。見た事のある者、証言をしてくれ」
「はい!」
一人の令嬢が手をあげた。
「私、見ましたわ・・・・」
☆回想
いつも、エリザベス様の前へ、サリー様が横からダイブをして転びます。
そして、キョロキョロしてエリザベス様を見ます。
エリザベス様は『まあ、大丈夫かしら!』と心配して手を差し伸べると。
『ヒィ』と叫び声を上げて逃げだします。サリー様は10メートルくらい走って、止って、エリザベス様を見ます。
そして、『エッ』と驚いた顔をして、また、走ります。
それが何回も続いて、最近は、両の手のひらを上に向けて、『やれやれ』と呆れた顔をします。
もお、その顔が憎たらしくて。皆、憤慨したものでございます。
エリザベス様は公爵令嬢です。
無礼ではないかと淑女科でも問題になっていましたわ。
・・・・・・・
「ほお、分かった。サリー嬢、どうして、そんな行動を取ったのか?」
すると、男爵令嬢は慌て出した。
「あ、その、イジメられている雰囲気をだすのが大事な感じ~?あたし、頑張りました!」
と第二王子の方を向いて言った。
「えっ」
とシーンと静まり帰った会場で第二王子の戸惑いの声が響いた。
「次の告発だ。サリー嬢は階段から落ちている現場にエリザベスが居合わせた。これは誠か?目撃者はおるか?」
一人の令嬢が手をあげた。
「はい、私は家門の名誉にかけて告発します。有名な話です。階段ではなく建物です」
☆回想
サリー様は、女子寮の二階から飛び降りていました。
『『キャアアアアーーーーー!』』
『飛び降りてるわ!』
『フン!五点接地、逆立ち編!』
腕から降りて、体をひねりながら着地する不思議な接地の仕方でした。
当然、エリザベス様は副会長で見に来ました。
『エリエリ~見て、見て』
『サリー様、お止めなさい。どうして、そんな危険行為を行いますか?それと、エリエリはやめなさい!』
『え~、もう一回?しょうが無いな』
・・・・・・・・・・・・・
「ほお、サリー嬢よ。何故、ややこしい言い方をしたのか?階段から落ちたらエリザベスがいたと言っていたな」
「え、これは、そ、その、あの、台本はそうなっている感じ?サリサリの演出みたいな~、エリザベス様を巻きこむ・・・いえ、エリザベス様に見てもらいたくて・・・」
ガン!
ヘンドリックは、足をならした。
「では、噴水で水浸しになっていた時にエリザベスがいたと言うのは?」
貴公子が手をあげた。
「はい!私は見ました!母の名にかけて見た事を話します。サリー様は池を走っていました」
☆回想
『見て、見て~、こうして、片方の足が沈む前にもう一歩の足を踏み出せば、沈まない感じ~!』
バシャ!バシャ!バシャ!
『だから、サリー様、お止めなさい!』
ええ、当然、エリザベス様は副会長、注意をしました。
・・・・・・
「サリー嬢よ。何故、イジメられてるとの嘘の告発をしたのか!」
すると、サリーはプルプル震え出しながら、懐から紙を出した。
「あの、その~、こういった場合は、その~」
チラ、チラと第二王子ルドリックを見る。
まるで、『ねえ、ねえ、どうしたら良いの?』と訴えているようだ。
ヒソヒソ~
「まあ、第二王子殿下、そっぽを向いたわ」
「不自然だな」
「もしかして・・・」
王太子の裁断が行われた。
「断罪する!サリー嬢よ。虚偽の告発で、退学に処す!それと取り調べをする。女騎士学生よ。前へ」
「「はい」」
するとサリーは慌て出した。
「ヒィ、私、知らないのだからね!ほら、アリバイがあるのだからね。いや、これは違うのだからね!」
チャリンと音がする袋が落ちた。
書類も落ちた。
ヘンドリックが拾う。
「何、何、もし、婚約破棄が成立したら身分は保障する。Byルドリック?だと!間違いのない。ルドリックの直筆のサインだ。それに男爵令嬢の小遣いにしては不相応な金貨・・」
「ヒィ、第二王子殿下、ごめんなさい!エリエリは公爵令嬢だからね。側妃腹のヘンドリック様が王位につけるのだからね。だから、婚約破棄させてルドリック様がヒーローになれば第二王子でも繰り上げて王位につける計画だったなんって!
サリサリ~、それだけは言えないのだからね!だから逃げるのだからね!」
サリー様は、「エイ!」と叫んで、女騎士学生の足下を前転で転がり。走ってそのまま
窓から飛び降りたわ。
「ヒィ、ここは三階よ!」
私、エリザベスは思わず悲鳴を上げてしまったわ。
今までは2階から飛び降りていたけども。
はしたなく走って窓を見に行く。
そしたら、誇らしげに立っていたサリー様がいた。
「フン!三階から飛び降りても大丈夫だったからね!」
【捕まえろ!】
「「「はい、殿下!」」」
しかし、追っ手を池の上を走って渡り巻いたわ。
バシャバシャシャ!
「おい、船を!」
「ないよ!」
「服を脱いで泳いでも間に合わない!」
そして、夕日に向かって走り出したわ。
・・・その後、第二王子は失脚したわ。地方の伯爵家に婿入りが決まったわ。
私は・・・
「エリザベス様、大変でしたわね」
「まあ、皆様のおかげですわ」
皆が心配してくれるようになったわ。
まるで、私の評判を上げてくれるためにやったようだ。
だが、気になる。
サリー様は男爵家の養女だ。
第二王子派で、ヘンドリック殿下を籠絡するように命令されたと判明された。
当主は交代し、一家ごと男爵家の親戚と入れ替えられた。
もしかして、この命令は逆らえない。どの道、身の破滅だ。
だから、あんなバレバレの事をやったのかしら。
言って下さったら公爵家で保護できましたのに。
それが悔やまれる。まだまだ副会長、未来の王妃としては未熟だわ。
サリー様の居場所は分からない。
夏休みになった。
私は夕日の方向に向かって小旅行をした。
すると、噂が流れてきた。
「怪奇!水の上を走る女がいる!」
「見物料、銅貨一枚だ!」
「それほんとかしら」
行って見ると、サリー様がいた。
「キャー!見て!見て!川を渡れるのだからね!」
バシャ!バシャ!バシャ!
「スゲー!小川でもすごい事だ」
「「「スゲー!」」」
本人に話を聞くのは少し先にしようと思う。
まだ、本当は賢いのか馬鹿なのかは分からない。
でも、エリエリと呼ぶのは許してあげようかしら。
それぐらいの功績はしたと思いますの。
最後までお読み頂き有難うございました。