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白百合の騎士は真面目。


もう一度我が家へ戻ってもらって、スーリオンさんに今度こそお茶を淹れた。うちの畑でとれたお花を乾燥させて作ったハーブティーを一口飲んだスーリオンさんはホッと安心したように息を吐いた。



「とても美味しいですね‥」

「そうですか?お口に合って良かったです」

「ずっと、呪いがどうやったら解けるかと走り回っていたので‥、こんな風に落ち着いてお茶を飲んだのは久しぶりです」

「そうでしたか‥。そういえば呪具はどうなったんですか?」

「すでに壊れて跡形も無くなってしまって‥」

「う、うわぁ‥」



せめて形があれば、どんな呪いとか分かったのに跡形もないって‥。

スーリオンさんはカップのお茶をじっと見つめ、


「エルフ族にも、騎士団が知っている魔女達にも、どうにかして呪いが解けないかと聞いたのですが自分達ではどうにも出来ないと言われて‥」

「それは気が気じゃないですよね」

「父は卒倒するし、母は「娘がもう一人できた」と喜ぶし、双子の妹達は「お姉ちゃんだ!」と私をおもちゃのように着せ替えをするしで‥」

「‥楽しい家族、ですね?」


どう答えたら正解なんだべ。

だけど、そんな家族だから良かったような気もする。



「そんな時に、リルリ様が「うちの娘ならどうにかできるかも」と仰って下さって、藁にもすがる思いでこちらへ来たのですが、本当にここ一番で嬉しい出来事でした」

「そ、そうですか」



‥ただの花占いしかできない魔女だけど、それなら良かった‥と、思う反面、これは責任重大である。私如きがどうにか出来る‥のか?と、スーリオンさんは私を見て小さく笑った。



「無理な話かもしれませんが、そんなに緊張なさらなくて良いですからね。私は「戻る」という事実が確認できただけでも嬉しいんです」

「‥スーリオンさん」



な、な、なんてできた人だべぇええええ!!

前世の薄っすらとしかない記憶でも、こんな出来た人いたっけ??否、いないな!私は美女のスーリオンさんを見上げ、


「お手伝い頑張りますね!」


そう微笑むと、スーリオンさんが嬉しそうに微笑んだ。

うう、美女の微笑みも破壊力すごい!綺麗だなぁ!スーリオンさんは窓の外を見て、



「とりあえず、馬を貸して頂いたのでそれを村の方へまず返して来ますね。それからどんな風に占えば良いかアドバイスを頂けますか?」

「はい。あ、というか村に行くなら私も一緒に行きますよ」

「え、でも‥」

「丁度買い物と、あとさっき会ったアルのお婆ちゃんの所へ薬草を卸に行く予定だったんです」



それなら‥と、スーリオンさんも頷き、私は薬草を入れた籠とお財布を持って一緒に外へ出ると、村から借りたという馬が機嫌良さそうに尻尾を振った。


「村までは乗り合いの馬車で来て‥、エララさんの家までこの馬なら案内できると村の人が貸してくれたんです」

「あ、じゃあ、アルのおじさんかな?時々こっちまで食糧持って来てくれるんです」

「優しい村なんですね」

「みーんな知り合いだから、結構人付き合い大変ですけどね」


スーリオンさんも思い当たる節があるのか、小さく笑った。


少し村から離れた場所にある我が家。

丘を降って行く道を一緒に歩いて行くと、少しずつ小さな村が遠くに見えた。小さな村だからスーリオンさんの話もきっとすでに広まってるだろうな。ずっと女の子のままだと色々誤解されずにいて良いんだけどなぁ‥なんて思っていると、スーリオンさんがふと足を止めた。



「エララさん、村の中に入る直前に、私の肩に触れて貰えますか?」

「え?」

「男性である私がエララさんの家に、離れとはいえ泊まらせて頂くのは色々外聞が悪いでしょう」



気遣いの騎士か?!

私は驚いてスーリオンさんをまじまじと見つめると、ふふっと笑って、


「私だって女性ですからね?それなりに色々経験しました。あとスーリオンでなく、スーリでいいですよ。その呼び方の方が、女性でも男性でも可笑しくないですからね」

「な、なるほど」


元々男性なのに、順応が早いなぁ。

あれか、娘が増えた!って喜ぶお母さんや妹さん達のお陰かな?


「‥スーリさん、前向きですね」

「そうですか?」

「はい。私なんて魔法が一つしか使えなくて、ずーーーーーっと実はいじけっぱなしで‥」


しかもそれを隠してるんだぞ。

それなのにスーリさんときたら、男性と女性を使い分けしてるし‥。

そんな私をスーリさんが小さく微笑み、



「私も相当荒れましたよ。‥特に仲間から「白騎士でなく、白百合の騎士のようだ」と言われた時は、デスクを剣で真っ二つにしました‥」

「真っ二つ‥」

「騎士として剣を振るってきたのに、白百合の騎士‥」

「それはブチ切れますね」

「‥はい。ですが、その度に私は女性に対してきちんと誠意ある態度でいた騎士だったのかと、自分を振り返るきっかけを頂いたという風に考え直しました」

「真面目か!!いや真面目で結構なんですけどね?」



思わず突っ込んだ私をスーリさんは驚いたように見たかと思うと、小さく吹き出し、


「はい。真面目な騎士なんです」


と、言うから私も笑ってしまった。

うん、スーリさんは真面目な騎士だ。

それでもって、女性でも男性でもきっとこの人は変わらないんだろうなぁって思ったら、どこかいじけていた自分の気持ちもちょっとだけ軽くなった。




白百合の騎士だって格好いいと思うんだけど‥(怒られた団員談)

だから怒られるんだって〜〜と、言われたのも追記しておきます。

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