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花占いの魔女と顔の皮の厚さ。


スーリさんが紹介してくれたフィリスさんは、金色の長い髪を三つ編みにして少し垂れた目でニコニコと私に微笑みかけてくれた。



「なんだスーリオン、すぐに有給取ったと思ったらいなくなったからどうしたのかと思ったら、こんな可愛い子とお知り合いとか羨ましいなぁ〜!あ、俺、フィリス・トリベルトって言います!よろしくね!」

「あ、エララ・ルィンベルです」

「エララさんか〜〜!素敵な名前だね!」



お、おお、スーリさんと同じ白騎士団でも随分と違うんだな‥。

隣にいたシュロさんが「チャラ‥」って呟いたけど、完全に同意ですね。するとスーリさんがそんなフィリスさんをジロリと睨み、



「フィリス、仕事をなさい。ほら、これを‥」

「え、なに?」



スーリさんがいつの間にか魔石店の女性から受け取った魔石が入った布袋をサッと手渡した。フィリスさんは驚きつつも、その小袋を開けて中を見ると真剣な顔になった。


「どこでこれを?」

「魔石店の店員と名乗った女性から受け取りました。その後、すぐにそこの気絶している騎士達に言いがかりを付けられたんです」

「‥簡潔にど〜も」


フィリスさんはやれやれといった様子でため息を吐き、私に花を押し付けられた騎士さん達に視線を向けた。



「おい、倒れている奴らを騎士団に連れて行って事情聴取する。すぐに連れて行け」

「で、ですが‥」

「魔女様が占ってくれただろ?「真犯人はこの街にいて、なおかつ身分の高い者」だって。良かったなぁ、魔女様に危害を加えていたらお前さん達どうなってたんだろうな?」

「それ、は‥」



まさか思い切り疑った上に、実は魔物が怖くて私を置いて逃げたなんて言えないよねぇ‥。ちょっと複雑な思いで騎士さんをチラッと見たけれど、それ以上はやめた。


これ以上は仕事の邪魔になっちゃうだろうし、そもそも周囲の人達からの「魔女ですって!」「一体他になんの魔法を使うのかしら?」という声が聞こえてきて、私は今すぐダッシュで逃げたい気分だからな。ええい!仕方あるまい!私はチキンな魔女なんだい!


「エララさん?」

「‥ええっと、お仕事のお邪魔をしても申し訳ないですし、一旦村に戻った方がいいかなぁって」

「確かに。それはそうですね。ではフィリス仕事は頼んだぞ」

「あ、おい!?そんな感じ??!」


フィリスさんが慌てて言うと、スーリさんは私の手を引いて優雅に微笑んだ。



「魔女様は目立つことをお嫌いになる。さ、魔女様、戻りましょう」

「は、はい」

「なんだよ〜。今度埋め合わせしろよ!エララさん、またね!」

「はいっ」



パチンと軽やかにウィンクしたフィリスさんを、スーリさんはしっしと手で払うと、私の手を引いて馬が繋いである場所まで歩き出すので、慌ててフィリスさんに小さく会釈をして私も同じ速度で歩き出した。



そんな私達の後ろをシュロさんも慌ててついてきた。


「あ、あの魔女様、またぜひうちの店にきてくださいね!」

「はい、なんだか色々とお騒がせしてしまって‥」

「むしろそれはこっちですよ。確かに魔物が珍しく多く出ているのに、この街の領主も役人も何にもしないから‥。でも魔女様は誰が犯人か、実はもうわかってるんですよね?」

「えーと‥」


‥何にもわかってません。


もう全部スーリさんの推理です。

でも花占いで「身分が高い者」って出たから、犯人特定は絞りやすいだろうけどね。私は曖昧に微笑んで、



「‥最後の仕上げは騎士さんにお願いしようかな〜っと‥?」

「なんと!!素晴らしいお心遣い!確かに全部当ててしまったら騎士も立つ瀬がないですしね」

「ふふっ、魔女様は本当にお優しいですね」



スーリさんがにっこり微笑んだけれど、全部スーリさんのお手柄だから‥。

私はまじまじとスーリさんを見上げ、


「スーリさんのお陰しかないですよ?」

「とんでもありません。私は花を咲かせることも、占うこともできない只の騎士ですから」


それを言ったら私は推理なんてできないぞ?

しかしそんなやり取りを聞いていたシュロさんはキラキラと顔を輝かせ、



「花占いができるなんて素敵ですね!そうだ!今度花の種を色々入荷しておきますよ!古代から育てられている花もあるんですよ」

「古代‥?」



古代遺跡の呪具で呪われてしまったスーリさん‥。

古代から育てられている花も、もしかして何か呪いを解くきっかけになる?

未だに呪いを解く糸口さえ見つけられていない私としては、何かできる事をしていきたい‥。私はシュロさんを見上げ、


「あの、古代から育てられている花の種、ぜひ欲しいです」

「そうなんですか?!じゃあ、爆速で用意します!!」


張り切った顔のシュロさんに頷くと、スーリさんが不思議そうに私を見つめた。



「古代の花に興味があったのですか?」

「もしかして呪いに関して何か糸口が見つけられるかなって‥」

「呪い‥」



スーリさんはまじまじと私を見つめると、少し照れ臭そうに微笑み、



「‥ありがとうございます」

「いえっ、むしろ何も出来なくて申し訳ないというか!!!」

「とんでもありません。そのお心遣い、やはり魔女様はお優しいです」



光の精霊だった?ってくらい美しい笑顔でスーリさんはそう言ってくれたけど、だからぁ、それはむしろスーリさんだから!!と、私は突っ込んでおいた。おら、そんなツラの皮厚くねぇど‥。





今日も読んで下さってありがとうございます!!

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