花占いの魔女、デビュー!
いきなり私達を疑いの目を向けて捕まえようとした街の騎士さん。
でも白騎士団が管理してるはずなのに‥と、思ったけれど、今日きていきなり管理なんて忙しくてできない‥のか?
スーリさんによって、あっという間に地面に沈められた3人をまじまじと見ていると、ワクワクした顔のシュロさんが、
「エララちゃん、この3人どうします!?」
「‥シュロさん、エララちゃんは馴れ馴れしいですよ。魔女様なのですからルィンベル様と敬意を持ってお呼びしないと」
「い、いや、そんな苗字でなくても大丈夫ですが‥」
それを言ったらスーリさんも名前呼びですが‥と、思ったけど今更かと思い直した。
「とりあえず魔石店までこの3人を連れて行った方がいいですよね?」
「でも気絶してるようですけど‥」
「構いません。私が運びましょう」
「いやいや、スーリさん一人では大変ですよ!」
「大丈夫ですよ。3人くらい軽いものです」
「引きずっていいなら僕も1人くらい引っ張って行きますよ〜〜」
「あ、もう引きずってる‥」
ズルズルと気絶してる騎士さんを張り切って引っ張るシュロさん。
気をつけて!今、壁に頭ぶつけたよ?!!
スーリさんはそれを見て、残りの2人のロープを引っ張って通りの方へ歩いて行くけれど、スタスタと軽い足取りなので驚いてしまう。女性なのに、流石騎士さんやわぁ‥。
皆で通りを出ると、目の前にはさっきの魔石店。
急いで中にいるであろう白騎士団の人達に声を掛けようとすると、バタバタと足音がしてそちらを見ると、先日私を置いていった騎士さんが数人引き連れてこちらへやってくるのが見えた。
「げっ!!」
「エララさん、私の後ろに」
思わず出てしまった言葉に騎士さんに睨まれたけど、私だってあれはないわ〜〜って思ってるからね?さっと私の前に立ち塞がったスーリさんに、騎士さんもジロッと睨み、
「うちの隊の者に一体何を?‥事と次第によっては逮捕しますよ」
「‥そちらがこちらの言い分を聞く事もせず、突然言いがかりを付けて手を掛けようとしたのです。こちらでは疑いがあるだけで剣を抜くように指導されたのですか?」
ヒンヤリとした空気を纏ったスーリさんに言われて、騎士さんは言葉に詰まった。まぁ、先日かかと落とし食らった上に、お説教されたもんね‥。なんて思っていると、その事を知らないのか後ろにいた騎士さんの1人が、
「騎士に対してなんだその言い方は!!オレ達が間違ってるって言うのか?!」
いきなり怒鳴ってきたけど、間違ってるが?
すると魔石店の周囲にいた人達がそんな事を言った騎士さん達に気付かれないようにじとっと騎士さんの背中を睨んだ。‥なるほど、あんまりよく思われてない感じなんだな。
「ええ、間違っています。私の大事な友人はこの魔石店の石を買って欲しいと従業員にお願いされ、哀れに思って石を買ったところ、全く別物が入っていた。それを突然怪しいと一方的に騒がれ、疑われ、剣を抜こうとしたのです」
「じゃあ、確信犯じゃないか!相手から買ったんだろう!?」
「‥話になりませんね」
スーリさんが腰の剣に手を伸ばそうとして、私はハッとした。
だ、だめだって!!命は大事にだよ!!さっとスーリさんの腕をギュッと握り、私はスーリさんの前に飛び出した。
「私は魔女です!!魔女は悪事を行いません!!」
「エララさん?!」
魔女だとできれば名乗りたくないけれど‥、
これ以上スーリさんだけを矢面に立たせたくない!
私ばかりが守られるんじゃない。魔女は、人を助ける存在なんだから!
足がガクガク震えるけれど、目の前の騎士さんをきっと睨み、
「魔女は、悪事を行わないよう、人を助けるようにと教えられ、それを忠実に守る者です。私は今回、本当に魔石をよく知らずに売られただけです。スーリさんは‥、私の友人はそんな私を助けようとしてくれただけです!」
「エララさん‥」
スーリさんが私を心配そうに見つめるけれど‥。
私、引きこもりの魔女だけど、こんな時くらい誰かを助けたいんだよ。
すると、かかと落としを食らった騎士さんが私を見て、馬鹿にしたように笑った。
「‥魔女がいたなんて聞いてないが?苦し紛れに嘘を吐くな」
「嘘じゃありません」
「そうだそうだ!!魔女様の言葉を疑うなんてふてぇ野郎だ!!どっからどう見ても素晴らしい魔女様だろうが!!!」
シュロさんがすかさず私を庇ってくれたけれど、確かに一見すると一般人だしな。どうしたら信じて貰えるか‥と、思っていると、スーリさんが私の耳元にそっと顔を近付け、
「エララさん、花占いをして頂けませんか?」
「え?」
「‥私に考えがあります」
驚いてスーリさんを見上げると、スーリさんは静かに頷き、
「魔女の力を見せつけましょう」
と、不敵に笑った。
‥こんな時なのに、美女の笑みって色々種類あるんだなぁ〜なんて思った私。本当緊張感さ足りねぇな。
引きこもっててもやる時はやるぜ!!




