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いざ!花占い。


小さな白い家のドアを開けば、スーリオンさんと名乗った美女は、少し遠慮がちに部屋へ入ってきた。ぐるっと見渡せば全部見えてしまう平屋の小さな家だしなぁ。



「あ、そこの椅子に座って下さい。今、お茶を淹れますから」

「い、いえ!出来ればすぐに占って頂きたくて!」



切迫したような顔をしたスーリオンさん。

‥もしかして、こんな美人さんだし恋人が行方不明、とかのかな?

そうなると、確かに悠長にお茶なんか飲んでる暇はないか。とはいえ、私の魔法の説明をまずはしないとまずいよね。


椅子に座ってもらったスーリオンさんの向かいに私も一旦座った。



「あのですね‥、私はいつもは魔女と名乗ってないんです」

「え?」

「‥普通の魔女は、5個から10個魔法を使えるんですけど、私はどうしてか1個しか使えなくて‥。しかも1人に対して1日1回しか魔法を使えないんです」

「1回‥」



スーリオンさんは驚いたように私を見つめた。

だよねぇ‥、魔女っていえば万能のように思われているけれど、出来る事が結構限られているのよ。人生甘くねぇって、前世だけでなく今世でもいわれてるようで、ちょっと切ない‥。


と、綺麗な銀髪の前髪がはらりと一房落ちてきても、払いのける事もなくスーリオンさんは私を真っ直ぐに見つめた。



「‥一つだけで構いません。どうか、お願いします」



真剣な瞳に最早私は頷くしかなかった。

これはきっと恋人とか、恋愛とか、そういう類のものかもしれないな。


「わかりました。では準備しますのでちょっとお待ち下さい」


私は椅子から立ち上がり、部屋の一角に置いてあるキャビネットから今まで育てた花の種が入った箱を持ってテーブルの方へ戻った。



テーブルにそっと紺色の箱に色とりどりの花が描かれている箱を置くと、スーリオンさんは私と箱を交互に見つめた。


「これは‥?」

「植物の種です。この中から、どれか一つ種を選んで下さい」

「は、はい」


スーリオンさんは緊張した顔で、慎重に種を一粒選んで見せてくれた。



「そのまま種を握っていて下さいね」



私はそう言って、スーリオンさんが種を握った手にそっと自分の手を重ねた。



『花の力よ、小さき者に力を貸して』



そう呟くと、スーリオンさんの手の中がパッと白い光が指の隙間から漏れると、その隙間から勢いよく種の芽が出て、蕾ができ、淡い白い花弁のある花が咲いた。


スーリオンさんは、口を開けて自分の手の中ら出てきた花を見つめ、


「こ、この花は‥」

「私の庭で採れた花なんです。ええと、それでですね‥、「はい」か「いいえ」しか私は答えを出せないんですけど、そのお花を自分が本当に知りたいことを思い浮かべながら花弁を一枚ずつむしって下さい」

「むしる‥?」


「‥‥‥私ができる魔法って、その、「花占い」なんです」


ただでさえ静かな部屋が、シン‥と、一層静まり返ったような気がする。



うううう!!!だから魔女だって名乗りたくなかったんだい!!

期待を込めた瞳で私を見つめる人達に「花占い」っていうと、大概「花が咲くまではワクワクしたけど損した気分」とか、「好きとか嫌いとかの恋愛の占いでしょ?そんなの皆やってるやつじゃん」って言われるけど、それだけしか出来ないんだよぉおおおお!!!


驚いた顔のスーリオンさんは私と、手の中の花を交互に見つめ、



「占いの、」

「え?」

「占いの的中率はどれくらいですか?」

「‥‥‥信じて頂けないかもしれませんが、外れた事はありません」



私の言葉にスーリオンさんは、花弁にそっと指を伸ばすと、一枚ずつ無言でむしり始めた。どの花も本来は花弁の数が決まっているのに、占う時だけは花弁の数が変化する。なんなら増量までしてて、私は気が気でないし、相手もハラハラするのだ。


ぷちぷちとむしられた花弁がテーブルに落ち、



最後に2枚残った時、スーリオンさんは目を見開いた。


「‥‥‥最後まで、むしった方がいいですか?」

「そうですね。占いを終えた‥と、いうことになるんで」

「わかりました」


緊張感しかないこの時が一番嫌だ‥。

どうか良い結果でありますように!私も祈るようにスーリオンさんの手元の花を見つめると、スーリオンさんは1枚、そして最後の1枚をむしると、スーリオンさんはパァッと顔を輝かせ、椅子から飛び上がった。



「戻る!!戻ると出ました!!!」

「も、戻る?」

「はい!どこへ行っても不可能だと言われていたんです!!」

「そ、そうですか‥」



やっぱり恋人か〜〜。

どっか戦いとか行ってるのかな〜〜。スーリオンさんも鍛えていそうな雰囲気あるしなぁ‥なんて思っていると、テーブルの向かいに座って嬉しそうに花弁がむしられた茎を見ていたスーリオンさんの体から、白い靄のようなものが出てきた?!


「スーリオンさん?その靄って‥」

「ああ、丁度時間でしたね」


慣れたようにその靄を見つめたスーリオンさんの体が急に縦に伸びた。



「え!?」



柔らかい手が、骨ばった手に。

床につきそうだったマントが丁度良い長さに変わった頃には、美女から美丈夫に変わった男性が立っていて‥。



「えええええええええ!!!???」



私は前世でも出したことのない声量で思い切り叫んだ。

だって、女性が男性に変わるなんて聞いてねえべよ!!??




標準語だと思ってた言葉が、方言だったと知った時の驚き。

日本でも異文化コミュニケーションしている気分です。


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