確信が持てない花占い。11
ひとまず家の裏手に石を置いて、玄関先に戻ってくるとスーリさんが玄関先のお花を見ていた。
うわ〜〜〜〜〜!!絵になる!!
私が立っていればそれだけなのに、スーリさんが花を見ていると絵画のようだ!
私が画家だったら熱きパッションで「お花とスーリさん」というタイトルで絵を描いてしまいそうだが、残念ながら今世は絵心が全く無いので無理だ。
「エララさん、どうかしましたか?」
「ええと、その、石、ありがとうございます」
「どういたしまして。ところで今日泊まらせて頂くお部屋はそちらの小屋ですか?」
小さな我が家の隣にある、小さい小屋を指差したスーリさん。まさにそこです。
「はい、普段は薬草を管理する部屋にしているんですけど、小さくて居心地がいいから気候がいい季節はその部屋に置いてあるソファーベッドでうとうとしてまして‥」
「確かにここはとても穏やかですしね」
「母が色々場所を探して決めてくれたんです。そこは本当に感謝してますね。あ、小屋の方に案内しますね」
白いペンキで塗られた小屋に案内すると、ハーブを収納してある棚や、所狭しと薬草を飾ってある様子を見てスーリさんは「魔女の家だ‥」と、呟いていた。いや、まさに魔女の家なんで。
窓際にあるソファーベッドのシーツを取り外して、ソファーの横にあるリネン類を入れてある籠から取り出して付け替えようと後ろを振り返ると、目をキラキラさせたスーリさんが、
「お一人でこちらでずっと暮らしてたんですよね?ここまで一人で生活空間を整えられるのは素晴らしいですね‥」
「は、はぁ。母に厳しく躾けられましたから。一人で5年間生きる為よ!って。でもそのお陰で結構たくましくやってこられましたね」
そんな話をしながら新しいシーツに張り替えようとすると、スーリさんがすぐに手伝ってくれた。やっぱり二人でやると仕事が早いな。
「でも、今日はスーリさんがいるんで安心して夜寝られそうです」
「え?」
「騎士さんがいてくれるなんて、一番安全じゃないですか!あ、でもスーリさんも安心して寝て下さいね?ちゃんと石は置いたし、今日はお疲れでしょうから」
スーリさんの事だから張り切って仕事をしそうだと思って慌てて訂正すると、スーリさんは目を丸くしてから可笑しそうに笑った。
「わかりました。確かにこんなハーブの良い香りがする部屋だったら気持ちよくてすぐ眠れそうです」
「それなら良かったです。あ、私はこの後、庭で薬草の手入れをしますがスーリさんはどうしますか?」
「少し周辺を見て回ってきます。珍しい魔物‥と、ベルナルさんが話していましたが詳細を聞いてなかったので、気になって‥」
「お仕事ほどほどでいいですからね?」
「‥こればかりは性分ですね」
白百合のような微笑みではにかむスーリさん。
うーん、真面目な人だ。そして綺麗だなぁ。
夕方頃には戻りますとスーリさんは言うと、我が家の裏庭の奥にある森の中へ消えていったけれど、だ、大丈夫だべか。
あげな綺麗な人が一人森の中とか‥と、思ったけど、崖から滑り落ちながら犬を助けたり、女性の体で数人の男性達をのしてしまったスーリさんだ。
「‥‥大丈夫、だんべ」
うん、きっと大丈夫。
とりあえず私は薬草の剪定をして、葉っぱを陰干しして、袋に詰めたりしないとだし‥。と、庭を右往左往してから、深呼吸して仕事に取り掛かる事にした。
「遅かったら、アルを呼ぼう」
犬のベロはあてにできないけど、ベルナルさんもいれば百人力だし。
そう思い直して薬草を剪定し始めたけれど、やっぱり大丈夫かな‥と、森の中をチラチラと見てしまう。
こんな時、占えればいいんだけど私は自分のことは占えないんだよなぁ。
何度自分を占っても結果はいつもはずれ。
まったく!せっかく転生しても自分も占えない上に、使える魔法も一つだけなんてちょっとシステムに問題ないか?なんて思いながら、薬草の横で揺れていた白い花を一本抜いた。
『花の力よ、小さき者に力を貸して』
いつも占いをする時の呪文をいうと、淡く花が光った。
光りはするけれど、当たらないんだよね‥と、思いつつ心の中で、
「スーリさんの呪いは魔女が解くことができる?」
と、聞いてみた。
白い花は丁度花弁が6枚。
結果はわかりきっているのに、私は何故か一枚ずつむしり始めた。
結果はわかりきっているけれど、よく考えたら人のことを占うのは初めてかも?ずっと自分は占えないって思ってたし‥。でも、6枚だから「いいえ」だろうけど。
「あれ?」
全部で6枚だと思っていた花弁をむしっていて気が付いた。
最後の1枚の花弁の後ろに、小さな花弁が付いていた。‥私が気が付かなかっただけ?けれど、その小さな1枚がスーリさんにとっては嬉しいことだろう。
帰ってきたら、教えてあげよう‥と、考えつつ最後の1枚をむしった。
「答えは「はい」か‥」
ってことは、どこかの魔女が呪いを解くって事かな?
でも、本当に当たっていれば‥だけど。そんな事を考えつつ足元に落ちた花弁を数えると、そこには6枚しか落ちていなくて‥。
「え?!あれ???」
確かに私は最後の7枚目をむしったはず‥。
キョロキョロと周囲をよく見回したけれど、白い小さな花弁は見えない。
「やっぱり、はずれ‥なのかなぁ」
と、地面をしみじみと見ながら呟いて、白い花弁を一枚拾ってまじまじと見つめた。
今日も読んで頂いてありがとうございまっす!!!
(マッスルって付けようとしたら「おっさんか」と突っ込まれた‥。おっさん、おっさんって‥)




