花占いの魔女、花占いする。
うちに女の子が訪ねに来たと、婆ちゃんに教えてもらったけど一体誰なんだろう。
考え込む私をアルとリトさんが心配してくれて家まで送ってくれて、何かあったらすぐ連絡してね!と何度も念を押された。私、すっかり約束破る常習犯になってるな‥。
「うーん、ひとまず戸締りをしっかりしておくか」
防犯意識を高めるのは大事だしね。
早めに夕飯を作って、早めにお風呂に入って、髪を乾かしつつ窓の外を見てみる。夕陽が山の間に静かに沈んで行くのを見て、つい「スーリさん、まだ来ないかなぁ‥」と、呟いた。
‥って、いかんばい!!
相手は騎士!!しかも私のせいで仕事が忙しいってのに!
ついつい早く会いたいなぁなんて!!魔女の風上にもおけないぞ!
ピチピチと自分の両頬を叩くけど、それでも告白は夢じゃないよね?なんて思ってしまう。だってあげな素敵な人だよ?!私は引きこもりの魔女だよ?!
スーリさんに貰った花の種が入っているコンパクトが目に入って、私はそこから一粒種を取り出した。
『花の力よ、小さき者に力を貸して』
ぽっと手の中が白く光り、その中から花が勢いよく咲いていく。
「わ、綺麗!」
紫の小さな花びらがついた花が育ち、私はその花をまじまじと見つめた。
えーとですね?人探しとか、物探しは全然できないから、それ以外をちょっとやってみようかな‥っていう、まぁ、これは実験ですよ。実験。
‥などと心の中で言い訳をしてから、私は小さな花びらを一枚軽く引っ張る。
スーリさんは、本当に私を好きか、そうじゃないか。
「‥好き、嫌い、好き、」
いつになく真剣な目で花びらを一枚一枚むしり、最後の一枚は‥‥、
「好き‥‥、うわーーーーーーーー!!!!!」
思わずベッドの中へダイブして、枕を頭から被ったさ!!
や、やっぱり好きなんだ!本当なんだ!!自分で占っておいて、はっきり「好き」って出るとそれはもうなんていうか嬉しいけど、照れ臭くて‥、でも結局一周回ってやっぱり嬉しい!
今日、ここに訪ねに来るか、来ないかを占った方が良かったかな?とも思ったけど、「来ない」って出たらそれはそれで落ち込みそうだったから‥。まぁ、今回は気持ちが確認できただけ良かったって事にしよう!なんて思っていると、
コンコン。
と、小さくドアを叩く音が聞こえて、私はガバッと体を起こした。
そろっとドアの小さな小窓を見れば、どう見てもスーリさんっぽい大きなシルエットだ!
「は、はい!」
慌ててドアへ駆け寄り、鍵を開けて、ドアノブをゆっくり回すと、
「こんばんは‥」
どこか照れ臭そうな男性のスーリさんが立っていて、心臓が大きく鳴った。
う、うわーー!!!男性のスーリさんだ!わかってはいたけど、格好良くて緊張する!!しかし、好きな相手がきてくれて、嬉しくない訳がない。
「‥来てくれて、嬉しいです」
恥ずかしいけど、照れ臭いけど、そう言うと、スーリさんは一瞬目を見開き、
「‥‥‥‥すみません、一瞬だけドアを閉めても?」
「っへ?」
「‥可愛いすぎて抱きしめたいのですが、女性になってしまうので」
か、可愛すぎる??誰が?あ、おらか!
「女性になっちゃダメなんですか?」
「‥‥‥できればこの姿でエララさんに会いたくて、」
そうなの?
男性でも女性でもスーリさんはスーリさんだけど‥。
とりあえずドアを閉めるのもなんなので、少し大きく開けて、
「私はどんな姿でも、あの、好き、なので、その、どうぞ?」
そう言うと、スーリさんは天を仰ぎ、深く深呼吸すると、
「‥‥ありがとうございます。これも修行の一環だと思ってお邪魔します」
と、言うたが‥、恋人に会うのって修行なの?
騎士さんのする事はまだまだ良くわからないな‥と、思いつつ椅子を勧めると、スーリさんがピタッと足を止めて、何かをじっと見つめた。
「スーリさん?」
「‥‥花を、飾ってて下さったんですね」
「え?」
部屋の一角に、スーリさんが私をイメージしてくれた花束をドライフラワーにして飾っておいたのを嬉しそうに見つめていて‥。
私は小さく頷いて、
「‥スーリさんから貰った大切な花束ですからね」
「エララさん‥」
「でも、今度は黙ってどこかに行かないで下さい」
「はい」
スーリさんが小さく頷くと、私の方に向けて両腕を広げた。
「ん?」
「‥‥女性になってしまいますが、抱きしめても?」
だ、抱きしめる!顔がまたも赤くなってしまうんですが!
けれど視線だけスーリさんを見上げれば、スーリさんも顔がちょっと赤い。‥‥忙しいのに、来てくれたんだし、ちょっとくらいいいか?
そろっと私もスーリさんの体に腕を回すと、スーリさんが一瞬で女性に戻ったけれど、
「‥やっぱり魔女様には敵いません」
と、話す言葉はどこかとても嬉しそうだった。
ここだけの話、エララが花占いしてたの、
実は見てたんだ‥。(にやり




