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白騎士はズボンを勧める。


私が羨ましいと話すスーリさんだけど、騎士として活躍されている人の方がすごいのでは?けれど、ニコニコと焼けていくお肉を見ているスーリさんの言葉に、嘘偽りはないんだろうな。


焼けてきたお肉にチーズをのせると、ジュワッと音を立てて溶けていくのをキラキラした顔で見つめるスーリさんは、それは可愛い。確かに白百合の騎士って言われちゃうかも‥。



「さて、お肉が焼けたのでテーブルに持っていきますね」

「持っていきます!」

「えーと、じゃあお願いします。私はその間にパンとスープを持っていきます」

「はい!」



嬉しそうに微笑む女性のスーリさん、可憐そのものだ。

私はパンとスープをお皿によそって、トレイにのせて持っていくと、ササッとスーリさんはパンとスープを取ってテーブルに置いてくれた。


「スーリさん、手慣れてますね‥」

「そうですか?野営で協力し合って食事の支度をしてたから、ですかね‥」


ふふっと笑って、ついでに私の椅子を引いてくれたので、私はどこかのお嬢様にでもなっちまったのか?なんて思ってしまった。


白騎士団の上のポストに就く人って身分がしっかりした人か、よっぽどの実力者って聞いた記憶があるので、どちらかなんだろうけど、どちらでも納得しちゃうような雰囲気あるよね。そんなことを思いつつ椅子に座ると、向かいでは湯気の立つお肉とパンを見て、嬉しそうなスーリさん。



「さ、いただきましょう」

「はい。いただきます!!」



元気よくスーリさんが返事した途端、白い靄がスーリさんの体から出てきた。



「「あ、」」



パッと一瞬でスーリさんは元の体‥、男性に戻った。

一瞬で美女から美男。

さっきも見てたのに、やっぱり驚いてしまうな。


すると、スーリさんは私に手を差し出した。


「あの、緊張するようなら手に触れて頂けますか?」

「え?」

「先ほど男性達で怖い思いをされたでしょう?」


絡んできた人達のことを思い出しけど、スーリさんは全然違うじゃないか。


それなのに私を怖がらせないようにそう言ってくれるスーリさん‥。

あまり言葉にはしないけれど、女性として扱われる事が好きじゃなさそうなのに。そんな風に思い遣ってくれるスーリさんに、胸が暖かくなった。



「そっだらこと、気にしねぇでくんせ!」

「っへ?」

「あ、すみません。めちゃくちゃ訛っちゃった‥。いや、スーリさんは怖くないですよ」

「けれど‥、」

「あと、すみません‥ずっと気になってたんですが、服が一瞬にしてぴったりのサイズに変化しましたよね?それってどうなっているんですか?!」

「っへ?」

「‥2回変身してて、なんでだろうって実は気になってて‥」



私の言葉に今度はスーリさんが目を丸くしたかと思うと、ぶっと吹き出した。


「‥そこ、気になるんですね」

「すみません‥。ちょっと気になっちゃって」

「これは呪いについてギルドに相談に行った際、エルフの方が服が自動的に変化してくれるようにと魔術をかけてくれまして‥」

「エルフが!??」

「滅多にそういう事をなさらないそうですが、私の呪いが非常に興味深いと‥。面白いものを見せてもらったお礼だと」

「‥エルフらしい」


この世界にはエルフ族がいて、魔女とは違って魔術を使えるけれど、基本魔女と違って自分達の為にしか使わない。あと、古代文明の遺跡の採掘とか呪具の解呪の為かな?



「‥よっぽど珍しいケースだったんですね」

「はい。男性が女性になるなんて、しかも完璧に一定時間とはいえ慣れるなんて、通常の魔術では不可能なのに‥と、言われました」

「つまり、それだけ解呪が難しいって事、ですね」

「はい。なので、せめて服くらいはどうにかしてやると‥」



そこじゃないだろ、そこじゃ。

と、思ってしまうけど、確かに服をいちいち着替えなきゃいけないし、そこは助かる、のか?そんな事を考えていると、スーリさんは熱々のお肉を綺麗に切り分けつつ、どこか遠くを見つめ、



「‥私も最初は便利だと感じていたんですが、一度妹達に女性の時にドレスを着せられて、男性に戻った瞬間に自分の体にぴったりサイズのドレスを見て膝から崩れ落ちました‥」



ぴったりサイズのドレスを着た男性のスーリさん‥。



吹き出してしまうのを一生懸命堪えたけれど、私の顔を見たスーリさんが微笑み、


「なかなか面白かったですけれどね」


なんて言うから、吹き出してしまった。

だめだ〜〜〜!!!そんな笑ったらいかんやつを本人が笑わさないで欲しい。



「す、す、すみません‥。でも、災難でしたね」

「女性とは随分動きづらい思いをしながら、色々されているのだな‥と、新たな知見を得ました」

「やめて〜〜〜!!もうまた笑っちゃいます!!」

「女性はズボンをお勧めします。動きやすいですよ」

「あはは!!」



それは確かにそう!

笑っては失礼だと思ったけど、スーリさんが笑わせてくるので私は遠慮なく美味しいお肉を食べつつ笑わせていただいた。うん、私もたまにはズボンを履くか〜〜。




こっちの世界では女性は主にスカートです。

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