探索と逃亡
扉を開けたその先は石造りの部屋になっていた。壁には苔と思われるものが淡く発光し、蔦状の植物がところどころにある。松明もかけられているが、全くものが燃えている匂いがしない。この部屋の先には人3人が並んで歩いても余裕のある通路がある。松明や苔の明るさを頼りに進んで行くとしよう。
進んでいく途中に蔦状の植物の実を発見したので一応採取しておこう。にしても枝分かれがひどい。もう何回右左折したか覚えていないし何処から来たかも分からない。時たま違う植物も見つけたし、コオロギのような、昆虫も見かけた。虫を生で食う勇気はないので最終手段として想像はしないでおこう。
そうして移動しながら探索を進めていた最中、さほど遠くないところがで何かの咆哮が何回か聞こえてきた。まずい。もし今戦いに巻き込まれたら、自分なんて秒でミンチになるだろう。武器も無ければ、道具もない今、早く離れて身を潜めないと。
大きな音を出さないように移動する。何処か逃げ込める場所は………
自分の背中側がヒリヒリするような感覚に襲われる。向こうは鼻がいいのかしっかりとこちらに向かってきてるようだ
「あっった!」
ここから『75メートル』程度先に通路の広々さとは真反対の窮屈な階段を発見した。しかし足跡も近い。
動き出そうとした瞬間、後ろの方から咆哮が聞こえた。前脚が異常に発達した熊のような何かが姿を現しこちらに向かって走り出した。
巨体がとんでもない速度でこっちに向かってくる。恐怖によって体が一瞬硬直してしまったがなんとか恐怖を抑え込み、足をうごかした。
固まった体は潤滑油を差してない機械のようだった。
足が早く一瞬で距離を詰められたが、ギリギリ階段に身を滑り込ませた。熊は相当興奮しているのか、前脚を階段にねじ込みこちらを攻撃しようとしてくる。
先ほど抑え込んだ恐怖が心のなかで溢れ、感情的に魔素を導いてしまった。
『土壁!』
壁が出現する。それも分厚いのが。熊が腕を引っ込める。完全に土壁に覆われたが、向こう側から爪で引っ掻くような音が聞こえる。引っ掻いては居るが壊れる気配は全くない。
しかし、安心したのもつかの間、魔素が全て「土壁」に持ってかれ、感覚が鈍り始めた。指先や足先から段々と体から熱が抜けていくような感覚だ。それは睡魔によく似ていてしまいには意識を手放してしまった。
ありがとうございました