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銛、 広大無辺の大地より  作者: 雫蜘蛛
大海知らず
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短剣と牙

 資料室から出たが、どうしたものだろう。出口を探さなくてはここで餓死または水分不足によって、ぽっくり逝ってしまうだろう。考えながら歩いているうちに私は気付いた。この先に何かがいると。


 私はそれをじっと観察した。どうやらそれは鼠のようだ。しかし……おかしい。体の割に爪や牙が発達しすぎている。爪は長く厚くなっており根本から引っ掻かれたら骨まで届きそうだ。『鼠』にそんな攻撃的な姿を持つ種がいただろうか。

 観察しているとだんだんとこちらに近づいてくる。急いでその場を離れようとするが隠密なんて行動をしたことがない私は足音が大きい。


 奴は此方に気付いた。牙をかちかち鳴らしながら近づいてくる。しかし私が逃げることは得策では無い。生物を見つけたと言うことは奴が外部から入ってきた可能性がある。此方の食べ物飲み物は少なく、ここで耐久してもジリ貧になるだけだろう。そのためここで戦うべきだと理性が体を捉える。


 自身から大股8歩程度のところで止まった鼠に対して私は、短剣を構えた。少し切っ先が震えてしまうが仕方がない。

 鼠は飛びかかってきた。鋭い牙を私の首筋に突き立てんとして。私は素早さに驚き後ろに飛び退いた。その際奴の爪により切傷を脚に受けた。飛び退いたお陰で深くはないが血が薄く流れる感覚が腕をつたう。

 もう一度奴は飛びかかってきた。腕を前に構え短剣で斬りつけようとするが距離感を見誤って短剣は空を切る。その隙に鼠は長い牙で噛みいてきた。

「ぐぅぅ」

 急所を庇った腕に牙がぬっと入って肉を抉る。戦いの興奮で痛覚は鈍感になっているが痛いもんは痛い。しかし噛みつた鼠は地に脚がついていないことで力が入らず牙が抜けないようだ。

 鼠を下にするように腕ごと地面に叩きつけ人間の体という体格差を活かし体重をかける。さらに鼠の頭に短剣を突っ込み、ねじ込む。暴れる鼠、その頭からどくどくと酸化した血色の液体が溢れる。自分の体重と暴れる鼠により短剣は変形し始めていたが致命傷だったのか、直ぐに動かなくなった。

 

 生き物を手に持っている刃物で相手して殺すのは始めてだったはずだが、何故か慣れているような、何度も見てきたような感覚になった。




ありがとうございました


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