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銛、 広大無辺の大地より  作者: あま
間幕
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間幕 帝国学園勤務教職員の自習


 はじめまして。私は中央帝国学園に教員として勤めている、ジェフリー・ベアという者です。主に教えているのは国際関係史で、帝国と神聖国の関係史が専攻です。一応、帝国学園の教職員は研究員も兼ねているので、研究者でもあるのですが、帝国と神聖国の関係史に関しては、最近は新発見の史料も無ければ、議論の対象になる話題も無いのでここ2年、3年は教員の業務をするだけになっています。ここでは自習の意味も込めて、帝国と神聖国の関係を大まかに振り返ってみます。


 帝国と神聖国の関係は他のどの国と比べても深いです。最も、深いとはいっても不仲の溝という形でですが。


 というのも、帝国の成り立ちが大きく関わってきます。簡潔に言えば、帝国は、元々この大陸に定住していた原住民と、神聖国から逃げてきた、または追放された人間が協力して立ち上げた国なのです。


 帝国史専攻ではないので詳しくは話せませんが、帝国成立前はもちろん原住民と元神聖国民の対立や、戦争などもあったようです。しかし、神聖国側から見て異端となる人々が帝国成立前の大陸に渡り、その考えが受け入れられ、現地の宗教に影響を受けて、一大勢力となったことに怒った当時の神聖国教皇は、大陸全土に対して異端鏖殺の宣言をしました。


 それに危機感を持った北部、中部、南部の有力者180人が協議し、当時最も勢力が強く、立場も中立だったウィンストン家を元首として帝国を建国しました。それが今から2300年近く前のことです。この協議した会場は現存していて、帝国の大地に、南部から深く食い込む内海───テッラネオ───の中央に位置する島、スラニ島にあります。


 帝国建国の理由からわかる通り、帝国と神聖国は初めから敵国でした。帝国が建国して間もなく、神聖国から「浄化軍」と称した軍隊が送られて来ました。この帝国成立初期の「浄化軍」を第一回浄化軍として、これ以降2300年の間に7回も大規模な衝突がありました。帝国成立初期は戦力も少なく、統率も取れていなかったので、第一回、第二回ともに浄化軍は南部を占領し、更に帝国中部に進軍しようとしました。


 しかし、第一回浄化軍では帝国中部の激しい温度差と中部と南部をわける山脈を無理に進軍したせいで疲労し、そこを刈り取って帝国は進軍を止めました。これが2250年前のことです。


 第二回では山脈内に要塞を築き、要塞で行軍を抑えている間に海路から補給路の港を強襲して制圧、南部に予備戦力を回して中部と南部で挟み込み、殲滅しました。約2000年前です。


 その後第三回、第四回、第五回と定期的に続いてはいましたが帝国は安定期に入っており、この3回の衝突を一切の危機なく乗り越えています。第五回ののち500年近くは関係が小康状態に突入し、交流は少ないものの火花が散るような熱戦は行われませんでした。


 しかし、時代が進み世界が海路で繋がるようになりました。一対一の国家間の関係とはならず、第六回は列強に名を連ねた帝国と神聖国の戦争は、良くも悪くも注目を集めました。今まで神聖国以外とまともに関係を持たなかったためか、記録によると幾つかの国による妨害、神聖国への支援なども行われたと記されています。結果として帝国はこれを退けたものの、帝国の孤立主義は浮き彫りになりました。現在は改善しているものの、当時の孤立主義的な考えは、他の列強と違って中央大陸に進出していないことから、未だ残っていると私は考えています。


 そして直近の第七回です。私は今29歳で、開戦が24年前、終戦が20年前だったので今生きる多くの大人が戦時を経験しています。中央大陸にある一部の国と神聖国が手を組み、進行してきたので過去一番の規模でした。


 この2回の特徴は浄化軍の目的が、恐らくすり替わっているということです。第六回は帝国と神聖国の間にある海峡の主導権を握るため、第七回は新大陸の開発独占のために引き起こしていると考えられています。

 

 このように帝国と神聖国は対立の歴史を歩んで来ました。ここで興味深いのは、帝国の文化には神聖国の文化が深く根付いるうえで、それが「敵国の文化」として排除されないことです。帝国民のルーツが神聖国であることから当然といえば当然ですが────。



 おっと、もうこんな時間ですか。次は授業が入っていますから、今日の自習はここまでにしましょう。





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