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銛、 広大無辺の大地より  作者: あま
小判鮫と釣り人
39/42

連戦、連勝

 過去1長いですね…。

 安全階層での休憩によって体力と魔素、霊素も満タンまで回復した。ここで一気に地上まで出たい。薄暗い階段を登りながらそんなことを考える。


 迷宮はどの階層にも光源があるが階段は光源の間隔が長く、迷宮で最も暗い場所にあたるだろう。視界情報が少なくなるからか自然と考え事が増える。この短時間で安全階層を含めて4階層を駆け上ったが景色はあまり変わらないせいで上層に上がっているのか不安になってくる。


 新階層にきたのはいいが前方に敵を発見した。小鬼ゴブリンか、数は2体で得物は短剣と背丈に合っていない杖、いや棍か。前回殲滅したあの集団と違って恐らく武器は鹵獲したものだろう。棍の持ち手部分に装飾が入っている。戦力的には即殲滅できるが位置が悪い。階段前で屯っている。長い形態の銛では階段出入り口の狭い部分で振り回すことはできない。たった2体のために魔素を使うのも憚られる。ならば格闘だ。小鬼は背が低く、それに合わせて手足が短いので近接武器で威力と速度を出すのを苦手としている。そのため得物を持たない近接格闘でも恐らく勝てるであろうと踏んだのだ。


 銛の投擲は何回もやったからか精度、威力ともに十分。それで短剣の方を持っていき、残った棍の奴と一対一する。それでいこう。


 短剣持ちの脳天を狙って銛を構え、じっと観察する。一瞬、棍持ちの方の小鬼と目が合ったような気がした。目を逸らすように銛を投擲する。


 真っ直ぐ飛んでいって短剣持ちの首付近に突き刺さる。銛の勢いのまま吹き飛ぶように倒れた。刺さったことを確認することもなく、俺は棍持ちに接近する。


 棍持ちはこちらを確認して棍を振り回す。上から下に、兜を割るような挙動だ。あの体格から繰り出される最大の攻撃と言えるだろう。されど挙動が重すぎて避けるのは容易い。体を半身にして縦の攻撃を避け、棍を蹴り飛ばし小鬼の両腕をしびれさせる。蹴り飛ばした足を軸足にして、細い膝の裏めがけて反対の足でローキックをすると小鬼は足を折り跪く体勢になった。体勢を整えて小鬼の首を刈り取るように蹴ると、確かに骨を折る感触がした。


 嫌な感触だった。肉の柔らかさと骨の硬さが生き物を蹴ったという感触をさんざんと伝えてくる。棍持ちの小鬼の首があらぬ方向に曲がっている。何かがこみ上げてくる。


 落ち着け、自分。深呼吸だ。淡々と銛を短剣持ちの死体から回収して、即死した小鬼から短剣を剥ぎサブウェポンとすることにした。短剣の刃渡りは30センチに届かないくらいで小鬼程度の敵ならいいが大物相手では致命傷にはなり得ないだろう。ふと、この短剣で小鬼を刺し殺す想像をしてしまう。刺したところから滲む血、斬り裂いたところから露出する肉と臓物、今まで食べてきた動物型の魔物とは違う、特段の嫌悪感。そんなときに、

【しゃんとしなさい!】

「!!」

 体が跳ね上がるような反応をしてしまった。

「居たのか?」

 最近の神様はよく留守?にしているのか時々しか声を出さない。環境階層での生活の時も後半の脱出準備期間は大半を留守?にしていたし、脱出するために階層を登っている今現在でもリソースがギリギリだったり、俺の知識不足を補ってくれる場面以外では声を出さない。

【今帰ってきたところよ。】

「しゃんとしなさいとは?」

【そのまんまの意味よ。何に怯えてるのか、それとも悩んでるのか知らないけれどここは戦場(迷宮)。振り返るのは後で十分、でしょ?】

 俺は安全階層を出る時に決意したはずだった。でもこんなにも簡単に揺らいだ。思い出させてくれる存在はこんなにも偉大だった。

「──ありがとう。」

 そうして俺は前を向いて歩きはじめる。


───────────────────────


 

 前に進むのはいいがそう簡単には前へは進めない。進行を再開して30分ほどして接敵した。


 敵は3体、初めて見る奴だ。紫色の雲?ガス?の集合体にクラゲの触手が地面まで垂れ下がったような見た目で甘い匂いがする。これの見た目だけ見れば幻想的ともとれるが、問題は触手部分だ。俺が研究施設を抜け出す際に殺した、あのネズミや迷宮にいる巨大なカナブンのような魔物の虫が触手に絡め取られている。ネズミは捕らえられてそう立っていないのか痙攣しながら暴れているし、虫の方は甲虫類の特徴であるあの甲殻が半分ほどドロドロに溶けて、透明な粘液で内部が見える状態で固められており、虫の内部模型みたいになっている。


 視覚、嗅覚、聴覚がないのか近くに石を投げてみても、堂々と立ってみても、塩漬けが甘すぎて腐りかけている肉を投げてみても反応がなかった。触手部分に石を投げてみると当たった触手とその周りの触手が石を覆うように集まった。石と分かった瞬間に粘液でグチョグチョの石が吐き出されたが…。気体に見える部分に投げてみると貫通して効果が見受けられなかった。



 狙い目は触手と気体の接合部だろう。石を投げてみると上に行けば行くほど反応が鈍く、当たった部分の触手がちぎれたりしていた。


 銛を変形させ、霊素を送り込み刃とその周囲を赤熱化させる。赤熱化した部分で接合部を焼き切っていくのだが痛みもないのか簡単に焼き切れた。そうすると上の気体も霧散した。これを3回繰り返していって時間がかかったが突破することができた。


───────────────────────


 今度の敵は幼虫(ワーム)系だ。弱いし、なぜか魔素を多めに持っているのでうれしい。


 というわけで何も苦戦することなく、ワームの死角から近づいて頭の部分を一刺しして完勝した。



───────────────────────

 異様に敵の密度が多い気がする。こんなにも短期間で4回目の接敵だ。敵は見たまんまゾンビだ。しっかりと全身腐っているのか匂いが強烈だ。数は3体、全員なぜか痩せ細っており腐り落ちた部位から覗く骨は鉛筆のように細い。

「なぁ、あれ系はどうすれば死ぬんだ?」

【魔法とか魔導だったら浄化系で消し飛ばせるけど物理でやるなら体の何処かにある魔石のコアを砕かないと完全には消えないわね。】

「四肢の骨を折ったらどうなる?」

【体内の魔素を消費して再生するから時間稼ぎくらいにしかならないわね。】

「コアって完全にランダム生成なのか?」

【いいえ、心臓や脳のような生物にとって重要な部分にできることが多いわ。】

 そういうことなら試したいことがある。


 ゾンビは前衛に二人後衛に一人の陣形で当たりを巡回しており、この一本道を行ったり来たりを繰り返している。そのため必ずこちらに背を向ける瞬間がある。その瞬間を狙って後ろの一人を攫うように壁裏に引っ張りこむ。細い腕から察せるように異様に軽く、かつ弱々しい。まるで女性と秘密の逢い引きをしているような描写だか、相手は性別すら分からない腐乱死体だ。


 チラッと壁むこうをみて悟られたか見てみるが、残りの2体は1体消えたことにすら気づいていない。


 さてさらわれた1体はこちらをみて逃げようとする。しかし俺がそれを許すわけが無い。足を払うように蹴るとゾンビは簡単に転び、そして転んだあしの太ももに地面と縫い合わせるように銛を突き刺し動けなくする。反対の足に短剣を突き刺し、銛を引き抜く。そして銛を片手で俺の体に垂直になるようにもち、コアのありそうな脳、首、心臓に銛を打ち込む。そうすると心臓を穿ったときに硬いものに当たった気がしてゾンビは灰のようになって消えた。


 残りの2体はどうやら穿ったときの振動で勘付いたらしくこちらに1列になって向かってくる。ゾンビ(これ)を2体同時に近接処理するのは骨が折れる。残量が気になるが魔導を使おう。

『氷弾』『加速』「そうt…」

 一瞬、『装填』にして制圧射撃しようと考えたが1列に並んでいるなら威力を高めて胴体を消し飛ばして貫通したほうが簡単だろう。

『重撃』

 放たれた弾丸のような氷はビームのように素早く飛んでいき、2体の胴を貫通して消し飛ばした。やはり『重撃』は偉大だ。2体の残った頭と四肢は灰のようになって消えた。どうやら胴体にコアがあったみたいだ。


 しかし、魔素をこの一戦で4分の1ほど消費してしまった。先を急ごう。


──────────────────────

 そうして歩いて行くと扉とそれを守るような配置をした小鬼がいた。まぁ恐らくボス部屋だろう。


 …俺は階層を上がってきたのだが、道を間違えたのだろうか?


 


 


 


 

 リアクション等してもらえたら非常に嬉しいです。

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