二度とない幸運
俺にとって最悪の結果が叩きつけられた。通ってきた道は枝分かれ含めて全て探索して、その悉くが行き止まりであることは確認済みだ。そう強くない敵と連戦し続け、リソースはほぼない。魔素は魔素切れ不調一步前で寸止めし、霊素は体を引き絞っても一滴すら出ないだろう。変形可能とはいえ鉄の塊の銛を扱い続けている腕は銛を杖替わりに使うことぐらいしか出来ない。
幸い足腰は探索の日々によってまだ動くが戦闘はできそうもない。環境階層の朝から相当な時間が経っているせいで眠気まで出てくる始末だ。ここで休むのも一つの手だがその場合偶然湧いた敵に奇襲されるかもしれない。
通常の迷宮は安全地帯を許さない。通路に石壁を作って封鎖してもそれなりの強度とそれなりの持続性しか持たない。魔素がどうたらこうたら、神はこの現象に対してこと細やかに説明してくれていたが、眠気と疲れでほぼ頭に入ってこなかった。
問題に戻ろう。ここは行き止まりだった。しかし諦めきれない俺は壁を触ってみたりする。その他のところとそうそう違う所はなく石が組み重なっており、その緻密な石組みは此処が『地球』だったら賞賛の嵐だろう。
何個か触ってみたり叩いてみたり押し込んでみたりしたがどうにもならない。壁は壁であった。
俺は座りこんだ。座った瞬間に足の裏から疲労が溶け出す。地面に接地した尻から石の冷たさが染みる。石壁に背を預けた。
カコン
軽快な、ボタンを押すような音がなる。一瞬で頭に浮かぶ罠の可能性。ここは行き止まりだ、圧死させるには都合が良すぎる。筋肉が突然やる気を出す。跳ねるように立ち上がった。
しかし生命の危機と言えるようなことは何も起き無かった。代わりに行き止まりのところに扉が現れた。木製で粗末な作り、蹴り飛ばしたら木っ端微塵になるだろう。正直に言ってしまえば、開けたい。ここまで探索しておいてなんの成果もない。眠いし、痛いし、怠い。ネガティブな思いが胸を満たす。
「開けてみてもいいか?」
一旦聞いてみよう。
【罠の可能性も十分にあるわ。でも多分これ、罠じゃないとも思うの。】
「─確かにな、罠だったら壁じゃなくて床に設置したほうがいい。──やってみるか。」
雀の涙ほどの希望が生まれたことでわずかに気力も生まれた。ドアを開けるために棒のようになった足を進める。
ドアの真ん前まできて少し怖くなった。奇襲されたら死、トラップでも死。俺は思ったよりも弱いことが良く分かる。ただここで立ち止まっていてはいけない。俺は迷宮を駆け上がって、この迷宮から脱出する。目的を捉えて、己を鼓舞する。
息を深く吸い、ドアを開く。
扉近くに敵がいないか見てみるがいない。構造は…部屋か、敵は見当たらないし、天井が高い。部屋の中央には水場があって、床も石だけでなく木製の所もある。
「なんだこの部屋?」
【貴方、いい運勢してるわね。ここ、安全階層よ。】




