湧水、凍結
戦闘を終えてから進んでまたゴブリンと出会った。今回は二人だったので曲がり角で出待ちして殺した。奇襲は片付けが楽でいい。
少し先に進んで見えてきたのは小部屋だ。そしてそこには小鬼のキャンプがあった。今のところ10もいるかいないかくらいだ。しかし自分にとってここまで人数差があるのは始めてだ。
何個かの通路が合流しておりそれなりの空間になっている。外回りに出ているのも何体かいるだろう。
接近戦はリスクが高いが、かといって魔導で一気に制圧しきれるほどでもない。そのため神法を使おうと思う。穴ぐらを出るまでの生活、毎日祈りを捧げたことにより霊素と使える神法が増えた。そして何より、まだスルスルとは動かせないし範囲も少ないが水を操作することができるようになった。神殿のあった空間から出るために神が放ったあれほど高威力ではないが似たようなことはできる。
これも自分の信心深さのお陰だ。…そうだよな?
前回の霊素リセットから時間が経っているので問題ないだろう。
神法『伏流水』
地中に水源を作り流れを部屋のいたるところに分かつ。小鬼どもは全く気づかない。地の下で何が起きているか。音も無しに分かるほうがどうかしているが。流れて留まった水は高圧になっており抑えるのも結構「力」を食う。
『伏流水』とセットで得た神法を発動させる。
神法『湧憤水』
高圧の状態から解放された水は迷宮の石造りの床を破壊して噴水のように湧き出る。
「っ!」
破壊されて吹き飛んできた石の破片が肌を掠め、少量の血が垂れる。今のでそれなりの数を減らせただろう。
しかし、次の一手こそが本当の決め手だ。今使える神法の中で最も消耗の激しい、最も攻撃的なもの。範囲が「自分や神器を中心とした周辺」なので小部屋の中心へ銛を突き立て、部屋全体を射程範囲に収める。
神曰く。決して魔導魔法程度の炎では溶けず、瞬きするより早く凍る氷。薄氷で鉄を砕き、砥げば刃となる強靭な氷。そんな氷を辺りの水を凍らせて生成するものだ。
神法『永眠凍床』
先程の『湧噴水』で部屋全体が濡れていたため部屋が丸ごと凍る。そうして同じように頭から水を被っていた生き残りどもも大半は体を覆う薄氷によって氷像のようになっている。運良く全身が凍結しなかった個体も体の所々に氷が這っていてその部位を引きずるように逃げている。
まぁ逃がす義理も利益もない。石畳の石に突き立った銛を回収して、逃げる小鬼に突き刺す。敵とはいえ哀れな死に方だな。加害者にも関わらずそう思う。いきなり床が爆発して体が濡れたら、濡れたところが突如凍って逃げるも背中を刺されて苦痛を感じながら死んでいく。体が張り詰めたような感覚を覚えた。
部屋は4方向に離れているがどうしたものか。できるだけ早く受けの階層に上がりたいものだ。水は簡単に入手できるが食料はそうはいかない。環境階層以外では植物はほぼ無いし、小鬼みたな人型は食いたくないからな。
この部屋は5本の通路が合流する地点で1本は自分が通った通路だから残り4本が選択肢に入るわけだ。
実は4本のうち二本は選択肢から外れている。なぜなら先程の『永眠凍床』の範囲外に流れていった水が部屋の行き止まりにたどりついていたからだ。
さぁ残り2本どうしたものか。




