服と日記
この部屋への不快さに後ろ髪を引かれながら扉を開こうとする。金属製の重厚な扉は私の細腕で開くことが出来るか不安で仕方がなかったが、思ったほど力を込めずに開くことが出来た。セキュリティもないのだろうか。
空いた扉からチラリと外を覗き見る。外はとりあえず危険は少ないようだ。外…廊下と思わしき通路を歩く。全裸で。足裏に冷たい金属の感触がまじまじと伝わってくる。あと服がないことで若干寒い。
羞恥心と違和感とで涙目になったころに扉を見つけた。さっきの扉より遥かに物々しい扉だった。恐る恐る扉を開くとそこは『洗浄室』があった。全裸の全身をくまなく洗浄されて前に進むと、荒らされた部屋に出た。
そこには『研究者』の遺体と剣や杖で武装した人間の遺体が転がっていた。とりあえず着れそうな服を複数人から頂戴して、なんとか羞恥から逃れた私は物色を始めた。遺体からものを抜き取るのは気が引けるが生きるためだから、しょうがない。と自分を納得させる。
「おっ、これはまだ使えそうだ」
武装した方の人間から使えそうな物を抜き取る。小さめのナイフや食料と思われるカッチカチのパン、後は、食料が入っていた背嚢を手に入れた。
水筒と思われる物もあったが異臭がしたので蓋だけして放っておいた。
『研究者』と思われる遺体を物色しようとして私は本を踏みつけた。それなりの年季が入っている。気になったので開いてみた。
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6530年5月4日
やっとこの研究に手を付けることができた。英雄にも寿命はあるというのにそれが悠久のものだと勘違いするものがなんと多いことか……。嘆かわしいことだ。しかし!だからこそこの研究を成し遂げなければならない。「英雄供給研究」を………。国は倫理観だの技術力だの。距離的に近い帝国、裏切らないとも限らない連邦。外的脅威がああもいるのにいつまで楽観視をしているのか。
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同年10月14日
どうしたものか。魂のほうに目星は付けることはできた。しかし───(ぐしゃぐしゃになっていて読めない)
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6531年3月27日
やっと、やっと見つけることができた。
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同年9月21日
クソ、クソ、なんでバレたんだ!あと少しあと少しで完全な英雄の誕生を、私の研究のすべての結晶が生まれ落ちるというのに!なぜだ!どうしてここまで邪魔をする。もうここは捨てるしかない、『75』は死んでしまうが、しょうがない
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同年9月24日
もう、終わりだ、どうやら逃げ道すら無いようだ、すまない同志たちよ。
ここで途切れている
『日本語』でも、『英語』でもない見たこともない言語で書かれているがなぜか分かってしまう、どういうことだろうか。
またどうやら俺は『75』らしい。研究者を漁っても何もでてこなかった。部屋を漁るとごちゃごちゃした資料が出てきたが専門用語がおおすぎて理解できなかった。
これ以上分かることは少ないだろうし進むとしよう。
ありがとうございました