思ったより惨い方法
「大きさが小さいってことは少しの傷で致命傷になるってことだ。なら、物量で避ける隙間無しにすれば少なからずダメージは入る。」
蟻のときは近くが岩だらけで石ころを利用するなんて考えはすっかりなかったが、あとから考えてみればこうすればよかったんだとなった。
大きくもなければ小さくもない小石を集める。手一杯位に集めて手に握りこみ。兎から5メートルほどのところで構えた。奴もこちらに気付いたが、すぐには襲ってこない。様子見のようだ。鼠の時もそうだったが。魔獣は自分よりも大きいが、勝てる見込みがある場合は様子見から入るようだ。それを俺は狙っていた。
今回選んだのは人類にとって最古の遠距離攻撃。投石だ。
しかし自分の投石では奴のスピードに追いつけず、かつ威力も足りない。だからこの魔導を使う。
「『加速』!!」
前回の『発射』よりも多くの魔素を導き、発動した魔導は石を剛速球にして兎に襲い掛かる。腕を上げた時点で兎は背を向けていたが、石の速度は兎の逃走速度を大きく上回り、襲いかかった。
結果的に兎の左後ろ脚に2個、右前脚、右耳に1個ずつ当たり。左後ろ脚の石が当たったところは穴が空き石が体内にのこり脚が動かず、右前脚と右耳は当たったところはから先は消し飛んでしまった。弾丸のように綺麗な流線型をしていないせいで着弾した部位の肉がぐちゃぐちゃになっている。
【あなた、えげつないこと考えるのね。】
「自分も想像したより惨いことになってていい気分じゃない。」
【その割にはしっかりと見てるじゃない。】 「自分のやったことだ。目を背けて良いことじゃない。」
「剥ぎとるか。」
全てをバラして可食部だけ取ることが自分には無理な以上、捌かずに食べれるところだけ剥ぐのがいいだろう。脚周辺の筋肉を切り取ることにした。
が、剥ぎ取るためのナイフがないことに今更気付く。…一応聞いておくか。
「銛ってなんか切り裂くタイプに変形できる?」
【変形自体は出来るわ。けど銛はそもそも貫き抉るもの、切り裂くものには出来ないわ。】
「そりゃそうだよな…」
結局銛を取りたい部分に刺し続けて接合部を脆くさせて、脚の部分を引きちぎってなんとか肉を得た。
「うぇ」
【あーらら】
肉を引きちぎる時に溢れ出た血が飛び散って服を汚す。
ベタベタして最悪の気分だ。
「結局水場に用事ができたか」
水場への道を行きながら話す。
【それ、どうやって食べる?】
「うーん確か背嚢の中に塩の小袋が入ってたから石の器に水、塩、肉突っ込んで煮込んだらまぁ食えないことはないんじゃないか?」
【中々酷いわね…】
「しゃあないだろ、そんなもんしか味付けも食材もないんだから。」
水場について、血のついた服を脱ぎ洗う。幸い肌着までしか染み込んでおらず肌着と服を洗う。血によるヌメリは水洗いすればすぐに落ちた。体全身を洗いたいが、銛の中にいる神に見られていると思うと遠慮が出てくる。
その葛藤を解決するひらめきができた。それは、服を着たまま洗えばいいのだ。
濡れた服はまだ余っている魔素で乾かせば良いだろう。
さっそく水に入り、服の上から体を洗う。
水は冷たいが洗えないよりましだ。
ビチャビチャになった服と体を陸に上げ魔素を導く。
「『脱水』」
「スッキリしたぁー」
服を着たまま体を洗うのは違和感がすごかったが体を少しでも清潔に出来たのはうれしいことだ。
「さて、岩場に戻るとするか。」
日はすでに傾き始めていた。




