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だめ貴族だもの。~だめダメ貴族の尻敷かれハーレム~  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第八章 アルドライドと世界を守れば公爵なんて当たり前なのです編
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第281話 とあるサザンヌの男爵親子(後編)

「起きるデュフ」


 巨大な人影で目を覚ますと、

 肉醜、いや醜肉とでも呼ぶような男が覗き込んでいた!


「だ、誰だっ?!」

「話は聞いているデュフ、娘さんを助けに行くデュフ」


 この顔は見覚えがある、

 ここへ来る途中の荷物、

 そのアイテム袋に描かれていた顔だ!


「ひょっとして貴殿は、サンネイズ商団の」

「そうデュフ、次期団長ボリネー=アビタラーナと申しデュフ、サザンヌのツアーでは世話になっているデュフ」

「そ、そうか、私は…」「話は馬車で聞くデュフ」


 アリアを抱え立派な商団の馬車へ、

 中には包帯だらけの獣人がひとり座っていた。


「痛々しいデュフね、先日しくじった新人奴隷デュフ、ラジア、今回だけデュフよ?」

「……申し訳ありません」

「男爵殿のお嬢様はまだ眠っているデュフね?」

「起こした方がよろしいのでしょうか」「寝かせておくデュフ」


 馬車は驚くほど揺れなかった、

 私はあらためての自己紹介とここへ来た経緯を話すと、

 熱心に聞いてくれて、見た目に反して実は良い人なのでは、と思い始めた頃、

 馬車は意外と早く止まった、坂の下りは感じていたがこんなに早くとは。


「降りるデュフ」


 まだ暗い中、下から見ると高くそびえ立つ教会に迫力を感じる。


「これでも四階建てらしいデュフよ」

「では一階が通常の二階か三階分あるのか」


 入口では早朝にもかかわらず、

 位の高そうな神官が門の前を掃いていた。


「すまないデュフ、急患が二件デュフ、今日の当番はどなたデュフ?」

「聖女ベルベット様でございます」

「取り次いで欲しいデュフ」


 中へ入って行く神官様、

 かなりのベテランと見えるその男性より上位となると、

 さぞかし立派な聖女様なのだろう、と想像しつつ胸に抱くアリアを撫でる。


「もうすぐだ、もう少しだ」

「んー……ねむいぃ……」

「運が良いデュフ、これが他の聖女様ならば少々面倒だったデュフ」


 どうやら当たりを引いたらしい、

 戻ってきた神官に私は自己紹介をしようとするも、


「お寒いでしょう、ささ、こちらへ」


 とさっさと奥へ迎え入れられる、

 そこで見た女神像に私は思わず見とれてしまった。


「き、きっ、綺麗だ、美しい……」


 女神のクリスタル像、

 あまりのその素晴らしさに宗教を重く感じていない私でも、

 つい両膝を着いて祈りたくなる、が娘を抱えていてそれは出来ない。


「説明を受けるデュフか? 急ぎたいデュフが」

「ベルベット様はいま寝間着から聖女服に着替えてらっしゃるので、まだ少し」

「わかったデュフ、では説明をしてあげて欲しいデュフ」


 包帯だらけの獣人も前に出て聞く。


「ではこの私、合同教会神官のクルケが御説明したします、

 こちらは『飾り女神』と申しまして、本体の女神像の姿形だけを映して作った像であります」

「つまり、これで本体ではないと」

「はい、もちろん光魔石で作ってありまして、

 詳細は秘密ですがこれを祈るだけでも幸せな気持ちになれるかと」


 アリアにも見せてやりたいが、

 寝顔を見ると無理して起こしたくもない。


「でも治癒能力は無いデュフ?」

「いえ、これでも僅かにはあるようです、本当に僅かですが」

「ラジア、どうデュフ?」

「……息が少し楽になったような気はしますが」


 確かにアリアの眠りも唸る事が無くなっている。


「通常、一般公開できるのはこの『飾り女神』だけですね、

 しかし季節に一度、つまり年四回のこの奥まで人を……」

「クルケー! 用意できましたー!」


 元気いっぱいな少女の声、

 こんな早朝に働かされているのか、

 そう思いながら女神像の後ろの、厳重な扉を開くと……


「おぉ……おおおぉぉ……」


 七色に輝く女神像、

 さっき見た『飾り女神』より遥かに大きい!

 室内が吹き抜けになっていて顔を見上げると眩しい。


(か、感じる、治癒魔法の、強い温もりを……)


 驚いていると上から声が響く。


「いらっしゃいまーーー!!」


 空中をゆるやかに降りてくる物凄く豪華な聖女服、の少女?!


(娘と同じかひとつ上か、年齢二桁は行っていないだろう)


 さらにとんでもなく高価そうな長杖を持った少女が目の前に降り立った、

 まさに降臨だ。


「おはようございまー、ミストシティ合同教会の総司教、ベルベットでーーー!!」


 元気いっぱいだ、

 それはそうと上から降りてくるとは。


(聞いた事がある、ナスタの女帝配下には、空飛ぶ魔女が居るらしいと)


「これはこれは、ごきげんようデュフ」

「肉はお黙りっ!」

「デュフ?!」


 そして生意気だ。


「と、いうのは冗談でぇー」

「ベルル様に言いつけるデュフ」

「やめてえええええ! モーニングジョークだからあ!!」


 騒がしさにアリアが目を覚ましたようだ。


「ん……パパー?」

「ああ、これからアリアの身体が治るよ」

「ほん……とう?」


 ボリネー=アビタラーナ卿が私に話しかける。


「見ているデュフ、吾輩が本当の『懇願』というものを見せるデュフ」


 隣の包帯獣人も膝を着いたまま、一緒に両手を床に着いて頭を下げる。


「合同教会総司教ベルベット=ポークレット様、吾輩、本日はお願いがあって……」

「もういいよー」

「し、しかしっ」

「治します! その獣人を完全治療します! 肉はりょーしゅー様のマブダチだもんねー?」

「しゅの後を伸ばす意味がわからないデュフが、ありがたき御慈悲、感謝いたしまするデュフ」


 おそらく知り合いのノリなのだろう、

 しかしこのような少女、ごっこ遊びではないのか?

 獣人女性も真面目につきあっているようだが。


「……次はそちらの番デュフ」

「は、はいっ」


 アリアを横に寝かせ、

 私も両膝と両手を着いて頭を下げる。


「サザンヌ国サゴンヘ領主、チャコノ=ヴァリアットル男爵と申します、

 我が娘アリア=ヴァリアットルは身体が弱く、ここ数年はまともに起き上がる事も出来ず、

 何とかポーションで生かせ続けてきたのですが、もう限界が近づいておりまして……」


 眩しい女神像の前でいつのまにかふわふわ浮いているベルベット総司教、

 真面目に聞いてくれているのだろう、こちらも真面目に話を続ける。


「……我が貧乏男爵家には支払えるような白金貨も、コネになるような後ろ支えもありません、

 しかし、しかし将来必ず、こちらの教会の力になれる貴族となりますゆえに、どうか、

 どうか我が娘アリアの治療をお願いしたく、荷馬車に乗ってやって参りましたっ!」


 娘も起き上がって座っている、

 それに気付いたと同時に上から声が。


「んー、なみだとか足りないかなぁー」


 遊ばれているのか?

 しかし、私はやるしかない。


「は、はははっ、お願いします、娘を、亡き妻のたったひとりの子を、その命をっ!」

「そこの肉、ほしょーにんになれるー?」

「わ、吾輩デュフか?! 保証人というか、連れてきたのは我が商団デュフが」


 やはり知らぬ国の男爵では駄目なのだろうか?


「ではそこの肉、何か芸をしなさーい、おもしろかったらそちらの少女をなおしまー」


 見ると私の後ろに居る神官クルケが苦笑いしている。


「仕方ないデュフねえ、実は吾輩、普通はふたつに割れている尻をみっつに割ることが出来るデュフ」

「えっほんとにいいいいいーーーーー?!」

「見ているデュフ……はいデュフ!」


 く、くだらなさすぎる……


「あはははーー、この肉おもしろーーー」

「さらにとっておき、よっつに割るデュフ、はいっデュフー!!」

「ごーーーかーーーーーーーく!!」


 我が娘も笑っている、

 後ろのクルケが思わず声を出す。


「下ネタじゃねえか!」


 ここはそういう教会なんだろうか?


「じゃあ、じゅーじんさん、おなまえはー」

「ラジアです」

「そっちのおんなのこはー?」

「……アリア、です」


 おお、娘が自ら言葉で!


「ではついてきてくださー、あ、肉は汗くさくなるからだーめ」

「わかったデュフ」


 酷い事を言うなと思いつつ娘を抱きあげてついていくと、

 総司教の少女が獣人と私の肩に手を乗せたまま女神像横の白い壁へ進む。


「ぶ、ぶつかりますが」

「ぶつかりませーん、そのまま入ってー」


 言われた通り入ると、壁をすり抜けた!


(ま、ま、眩しいっっ!!)


 入った先に一瞬、

 さっき横を通ったのと同じ女神像が見えた!

 しかしあまりの眩しさに、もう目を開けられないっ!


「おふたりともー、かなりじゅーしょーとじゅーびょーです、

 なので手をのばしてくださーーい」


 前が見えないまま誘導される、

 私は抱きかかえながらアリアの目を手で覆い隠す、

 うん、手は伸ばしているようだ、ゆっくり、ゆっくりと前へ……


「はーいふたりとも、めがみぞーほんたいに触れましたー、はい、しんこきゅー」


 私もつられて深呼吸、

 わかる、ここの空気、とんでもない治癒魔法を感じる!


(一度、なけなしの金貨で呼んだ賢者が娘にかけてくれた、その何百倍、何千倍もの魔力だ!)


「……はい、しゅーりょーーー、もどりまーーー」


 壁を抜けて戻ると思わず崩れ落ちる私、

 それを心配そうに見つめるアリア、って立っている?!


「パパ、大丈夫?」

「アリア、お前、アリア!」

「パパ、私、苦しくない! 元気になった!」


 飛跳ねるアリア!

 それを思わず抱きしめる!!


「アリア! アリアーーー!!」


 隣では獣人女性が包帯を外している。


「あいかわらず凄いデュフ、傷も腐乱も石化も、全部綺麗さっぱり元通りデュフ!」

「御主人様、ありがたい、ありがたい奇跡です、ああ、ボリネー様……ベルベット様……」


 噂は本当だったんだ!

 まだ浮いているベルベット様も微笑んでいる。


「少女の方はまだ、まりょくがきんりょくになってるのでー、お水とおしょくじいっぱいで休んでー」

「吾輩のラジアは」

「こっちもお肉いっぱい、あー、フォレチトンの高級オーク肉とかいいかもー」


 クルケ神官に促されて出る前に、

 七色に光る手前の女神像に深々と頭を下げる。


(そうか、これが『御前立』とかいうものか)


 飾り女神の部屋へ戻った後、

 娘のアリアをまじまじと見る。


「パパどうしたの? お腹空いたねー」

「あ、ああそうだな、ただ、これから支払いが」

「支払いは二種類あります、まずはこちらへ」


 案内されたのは二階への階段だ。


「先に行くデュフ、吾輩は時間がかかるデュフ」

「は、はいアビタラーナ様」


 後ろから完治したばかりの獣人に支えてもらっている恩人を置いて、

 娘と手を繋いで階段を上がった先にあった物は……!!


「ベルベットショッピングセンターへようこそー!」


 なんと、お土産売り場だった!


「ベルベット様、いつのまに?!」

「キーワードは、ベルべ!!」

「は、はあ」


 キーワード???


 ※サザンヌの男爵編、あと1話だけ続きます※

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