第278話 後日談を色々と(追加)
年が明けて五日目、
余計な情報で言うとボリ肉ネー先輩の生誕祭?
その翌日である。
「あのーすみません」
御前立の公開が終わっても、
さらにその前の女神像を目的に並ぶ人々で忙しい合同教会に、
聖女服を着たおばさんがやってきた、とはいっても三十代前半くらいか。
(これは聖教会の、とはいえ少し古い感じ、しかもパッツンパッツンだぁ)
特にお胸が。
「はい、なんでしょう」
「領主様がこちらにいらっしゃると」
「僕です、こう見えてミスト=ポークレット侯爵です」
その侯爵が自ら列の整理である。
「あの、私、こちらへ来るように言われて」
「あ、助っ人ですね、ベルルちゃんは魔法研究所なので、中に聖教会の神官が」
「いえ違うんです、ミスト=ポークレット様に御用が」
このはちきれんばかりのおばさん、
間違いなく初めて会う人なんだけれども。
「えっと、どんな御用でしょう」
「それが、私は貴方の物になったらしいのです」
「あっ、はいはいはい、あれですね」
僕とお近づきになりたい貴族の娘を嫁に出したいっていう、
それにしても年齢行き過ぎだろう、
と思ったが愛人(と準愛人)のメンバーを見るとそうも言い切れない。
「それで私は今後、どうすれば」
「ええっと、帰って下さい」
「はぁ」
あ、名前だけは聞いておかないと。
「ちなみに、どちらからいらっしゃったのですか?」
「はい、冒険者A級パーティー、ジェニュインストーンからです」
「ぼうけ、ん……あれ?」
どっかで聞いたぞ、その名前。
「そのパーティーの、リーダーさんは」
「ガルボナ=チャイムズベリー様ですが」
「んー、ガルボナ……あっっ!!」
リア先生争奪トーナメントで、
一回戦で負けてキンキンキンキンやらされていた、あの!
(インチキストーンの!!)
「確か、アメリア先生と賭けて戦って負けた」
「はい、リーダーが勝てばこちらの、ポークレットファミリーのリア騎士団長を、
負ければジェニュインストーンの私が、それぞれ賭けの対象に」
すっっっかり忘れていたよ!
あ、それで聖女服がパッツパツなのか、
胸でかっ、おばさんだけれども。
「確か元、聖教会の聖女なんだっけ」
「はい、それで昔の服を着て」
「じゃあ、冒険者はもうやらないの?」
考え込んでいる。
「申し上げにくいのですが、私はもう年齢的に冒険者を辞めようと思って」
「あーそれで、聖教会の聖女として使ってくれと」
「はい、もちろんあくまで私の希望ですが、お願いしたいと思っております」
うーん、マジカルリスタートに入れようかと思ったが、
あそこはあそこで魔法使い2、僧侶2、前衛2、しかも全員男だしなあ。
(あ、大事な事を聞くの忘れてた)
「それでお名前は」
「はい、プリメラと申します」
「プリメラさん、最初てっきり、僕の嫁入り希望かと、ごめんなさい」
どっかの貴族か聖教会から送り込まれた、
一方的な自称嫁候補かと思い込んでしまった、反省。
「いえ、もちろんその気もあってきましたが」
「えっ」
「えっ」
「えええっっ?!?!」
結局、合同教会のお手伝いに納まった。
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「ふう、終わった、ベルベットちゃんは?」
「おわりましたー、お風呂はいってきまー!」
「はい、行ってらっしゃい」
本日の合同教会業務が終わって掃除を済ませた所だ、
一番奥の聖域は僕らしか入れないからね、雑巾がけも念入りだった。
(あれ?御前立の前、通称飾り女神像の所に居るふたりは……)
メイド姿だ、しかも僕の、公爵邸の、しかも階級が高い奴。
(すなわちそれは副メイド長の、と、いうことは)
「御主人様」「お待ちしておりました」
「キリィさん、モリィさん、わざわざ迎えに来てくれたの?!」
今日に限って帰路の警備かな?
「いえ、実はご相談がありまして」
「大切な、重要なご相談があります」
なんだろう?
「立ったままも何だから、あそこの休憩室に」
宿直も入ってこないように内側から鍵をかけて、と。
「気を使っていただいて」「申し訳ありません」
「いいよいいよ、それでどんな話? すごく真面目な顔しているけれど」
そういえば最初に会った時は徹底して無表情だったなと思い出す、
今はそこそこ普通というか、クールは下地にあるが表情はちゃんと変わる。
「……御主人様、私達はメイドであると同時に愛人です」
「そんな私達との間に、子を儲けたいという希望は、御座いますでしょうか」
「ああ、そういう確認? まあ、そのあたりは、授かりものだから」
うん、できたらできたで、それはおめでたい事だ。
「実は私達、子を生せない身体なのです」
「ですのでそういった事はあきらめていました」
「えっ、そ、そうなの?!」
元々は国の暗部だ、
そういった事もあるのだろう。
「しかしながら、おそらく、女神像で治ります」
「そこで、ミスト様のご希望を、お聞きしたいのです」
あー、そういう事か。
「そんなの決まってるよ、キリィさんモリィさんの意志次第だよ」
「いえ、私達はもう決めております」「ミスト様の希望通りにしようと」
「つまり、僕が二人との子供を欲しがるかどうか、と」
頷くふたり。
そう言われても、なぁ。
「やっぱりそこはキリィさんモリィさんが、僕なんかの子供を産みたいかどうかで」
「産む行為自体は何も問題はありません」「ただ、ミスト様の意志次第なのです」
(あっ、これ無限ループになる)
お互い結論の擦り付け合いに。
「ええっと整理しよう、メリットデメリットは、ってそんなのないか」
「いえ、メリットは男児が、男の跡取りが出来る可能性が増えるということ」
「デメリットは他の奥様方全員が妊娠してしまうと、抱ける相手が居なくなる事です」
そのあたり、僕はまだ若すぎて『妊婦でも構わないよ!』とは言えない所だ。
(うーーーん、これはソフィーさんベルルちゃん、
リア先生エスリンちゃんに聞いちゃいけない気がする)
「……よしわかった、子を生せないってようは『病気』みたいなものでしょ? じゃ、治そう」
「本当に、よろしいのですか?」「よろしいのですか、本当に」
さすがの暗部出身完璧メイドもちょっと感情が漏れている。
「じゃ、行こうか」
「はいっ」「かしこまりました」
なぜか左右に手を繋いで、ふたりを奥へ。
(眩しいから目を瞑ってね、って僕も防御魔法切れかかってるや)
領主特権で七色に光る女神像本体の前へ、
ふたりにひとしきり、治癒魔法を浴びせさせ外へ。
「……これで大丈夫かな、ソフィーさんベルルちゃんに確認してもらって」
「その、ミスト様、ありがとうございます」「ありがとうございます、ミスト様」
「じゃ、じゃあ、子作りは、する方向で」
……なんだかふたり、喜んでいるような気がする。
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さらにその翌朝、
寒い領主謁見の間へ連れられてきた少女、
僕の学友メイソンの妹、カルモなのだが……
「えへ、えへえへえへ、あへへへへへへ……」
「あー、さすがにあれから三泊だっけ、おかしくなっちゃってるね」
目が完全にイッちゃってヨダレも止まらない。
「俺の、俺の自慢の妹がぁぁ……」
「メイソンそ、その、これじゃあ謝らせられないね」
「ううぅ、カルモ……カルモぉ……」
あーあ、メイソン泣いちゃった。
(僕、悪くないよね? ねっ?!)
逃げるように僕の目はソフィーさんへ。
「はいミストくん、何でしょうか?」
「えっと、このカルモって子、いつ正気に戻るの」
「さあ、早ければ明日朝にでも、遅くとも三年後には意識が正常になるかと」
どんだけ幅があるんだよっ!!
「ええっと、カルモちゃん」
「あひあひあひっ、ひ、ひいいいいいっっ! ……あへあへあへ」
「いやこれ、お仕置し過ぎだよ……」
おそらく僕の出した条件は守ってくれていたはず、
痛い事しないのと食事と睡眠はきちんと与えるっていう。
(……逆に言えばそれ以外は徹底的にやったって事か、恐ろしい)
気付けば後ろの方にアレグも居る、友人思いだなあ。
「メイソン、そんな訳だから、こんな状態で悪いけど、持って帰って」
「はいっ、ミスト=ポークレット侯爵様」
「う、恨まないでね」
無言で頷くメイソン、なぜかアレグまで。
「うーん、謝りたいけれど」「駄目です」「相手は不敬ですわ?」
やはりきびしい、
僕の被害に対して本当に容赦ないなこの奥さんたち。
「キリィさんモリィさん、手伝ってあげて」
「はい」「かしこまりました」
「……いいよ、俺が自分で連れて帰る」
すっかりアレな、とんじゃっている妹を運ぶメイソン、
アレグも慌てて協力する、これはソフィーさんベルルちゃんも文句は言わないのね。
(僕も手伝う、は駄目だろうなぁ)
友情より奥さんを取ってしまう
だめ貴族だもの。 ミスト
――ちなみにカルモは学校再開の朝に正気に戻りましたとさ。
そして次回、第八章開始!
物語はいよいよ、終盤へ向かうのだーー!!




