12話 悪霊vs悪霊②
すみません投稿遅れましたー!
悪霊の要求を飲み、キョウヤは窮状の中へと舞い戻った。黒煙の先にいた人狼はいまだ悠然として、まるで彼の決断を見届けているようだった。
「あいつ余裕そうだな」
キョウヤの悪態に悪霊は敵の態度の理由を答えた。
『何せもう時間はあいつの味方だからな』
「どういう意味だ?」
『符号能力っていってな、オレ達は条件を満たした空間をそのまま自分の一部にできる。で、その条件、つまり「符号」がオレ達なら「鏡」であいつの場合は「黒煙」ってわけだ』
突然現れたタイムリミットに課題の期限が明日だと前日に突き付けられた小学生のような気分になったが、キョウヤは続きを促す。
「それをやるとどうなる?」
『何でもありだよ。オレが急に動けなくなったり、かすり傷が大きくなったのもそれの影響だ。そして支配した空間がでかくなるほど出力が上がる。で、もうじきそれがやばい領域になってしまう』
「するとどうなるんだ?」
『こっちがいくら回復できようが問答無用で死ぬ。一巻の終わりって奴だ』
キョウヤは周囲を見渡す。黒煙はもうかなりの広範囲に広がっており、その濃度も日光を遮ってしまうほど上がっていることが見て取れた。キョウヤは自身の置かれた危機的状況をついに理解した。このまま時間を使い続ければ人狼は労せずして勝利を収められるのだ。
「あとどのくらいでそうなる?」
すこし考えて、悪霊はゆっくりと言葉を続ける。
『作戦会議も含めたらあと1回動くのが限度だろうな』
その言葉にキョウヤは急速に打開策の思考を始めた。
「じゃあ、さっき植木鉢にやったみたいにあいつを押し飛ばせないのか?そのまま爆発させちまえば関係ないだろ」
先の戦闘において祓士は人狼の周りに爆弾を張り巡らしている。それを誘爆させてしまえばいいという発想であった。
しかしその発想にも悪霊は難色を示した。
『無理だ、オレ達はこの空間に一切の支配圏がない。あくまでもオレ達ができるのはオレ達自身への干渉と、この小太刀を介したことだけだ』
絶望的な返答であった。つまりキョウヤ達に残されたのは突撃か、自爆かの二択のみということである。
しかし、キョウヤはその回答に一筋の希望を見出した。
「お前自身に攻撃できはするんだな?」
悪霊は、戸惑いながらもそれに同意を示した。
「なら行くぞ、動き方は合わせてくれ」
キョウヤは後ろ手に小太刀を構えると、もう見えなくなりつつある人狼に向かって最後の突撃を仕掛けた。
突撃を感知した人狼は、その最後のあがきに360°の刀剣射出で対応する。精製された無数の刃が二人へと襲い掛かる。しかし二人はそれらを、身体を強化するとひょいひょいと針に糸を通すようにかわし始めた。
『クッソが、結局人力じゃねえか!』
先に悪霊に身の内に沈められた経験からある程度悪霊との息の合わせ方をつかんでいたキョウヤは、互いに情報を共有しあってすべての刀剣に対して回避を続けるという、ある種やけくそじみた手法で人狼へと近づき続けた。
しかし回避され背後の地面に突き刺さるはずの刀剣はひとりでに動き出し、背後で巨大な竜を模した集合体を形成しつつあった。
二人は再び人狼のもとに肉薄する。するとまた、さっきのように人狼の後ろの空間が揺れた。
「待ってました!」
そう叫ぶと、その身は襲い来る槌を踏み台にして人狼の真上へと飛びあがった。
飛び上がったキョウヤは持っていた小太刀を思いっきり振りかぶる。悪霊が小太刀を今度は太刀へと再構成すると、キョウヤはそれを人狼めがけて全力で投げ込んだ。
突然の事態だったが人狼はとっさに腕を十字に組んで迫りくる刀から身を守ろうとする。しかし、太刀は命中することなくその背後に刺さった。その刀身はかろうじて二つの悪霊を写している
時を同じくして、遂にその形を成した剣の竜は空に放り出された丸腰の二人に肉薄する。しかし、その瞬間人狼の後ろに刺さった太刀と宙の浮くキョウヤの体がノイズに包まれた。
悪霊は刀を支点とするようにしてキョウヤの体を一気に引っ張る。引かれたその体は竜の隣を通りすぎていき、襲い掛かる刀をよけて人狼へと再度の接近をした。
人狼は爪で応戦するが、それも脇の間を抜けられ、背後に取りつかれた。しかし目の前からは竜が迫っていた。この竜は人狼の概念支配によってできたものであり、よって本来この中に巻き込まれたところで人狼は無傷であり、背後に組み付いた二人だけがその攻撃のすべてを食らうだけである。
しかし、その背後に組み付いた怪物は語る。
「お前、「俺たちの力」使ってるんだったよな?」
そう言うとその体からは赤黒い雷がほとばしる。すると、人狼の胸にあった結晶からも同じように雷が走り始めた。
正面からは竜の口が迫りくる。
『お前やっぱり頭打ってイカれてたのか!』
「もう遅い、やっちまえ!」
一段と大きな雷が轟き、二体の悪霊を刺し貫く。そして竜はその大口にその雷を飲み込んでゆっくりと消滅していった。
キョウヤは弾き飛ばされ、地面にたたきつけられる。彼は全身から出血していたが、何とか傷の再生が追い付いていた。
黒煙はすでに晴れ上がっており、彼の後ろの方では祓士が未だ仰向けになって伸びていた。そして目の前には人狼に奪われた結晶が転がっていた。鏡像には、もう人狼の気配は感じられなかった。
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今後も二人の物語をぽつぽつと上げていきたいと思いますのでよろしければこの物語の感想・評価の方をぜひともよろしくお願いします。




