遠い記憶は昼寝の中に
この短編物語は、本来、サイトに投稿しない予定でした。ですが、友人の後押しや自分の作品を他者に読んでもらいたい。そして、見聞を広めたい。という意志があり、エブリスタ、pixiv、そして、小説家になろうにも投稿させていただくことになりました。とても短い短編ですが、少しの時間でも私の作品を読んでいただけると光栄です。どうぞ、天使の物語を楽しんでいってください。
「私からするとむかしむかし、というほど昔ではないのだが、少しだけ宇宙の話をしよう。何百億年か前まではこの銀河に太陽などなかった。だが、今太陽があるのは、あの小さな星に住んでいる一人の天使のおかげなのだ」
と、薄い記憶の中で誰かが昔そう言っていた。その人の顔ももう覚えてない。言っていたことは確かだが、誰がどのタイミングで、とかは余計にわからない。あの銀河に特に思い入れはないし、その天使のことも、その他の人たちも、僕には関係ない。そう思っていた。だからといって忘れられる話でもなく、どことなく心残りがあった。誰が、いつ、どうして僕に話したのか。それは、何事にも疑念を抱く癖がある僕の思考の一つに過ぎなかった。
「イオフィエル、こんなところに居たのか」
「どうしたの?メタトロン。君は相変わらず忙しそうだねぇ」
「あぁ、今は八割お前のせいだな」
「やだなぁ、僕は何もしてないじゃない」
「何もしてないからだよ。いい加減仕事しろ、お前は」
「僕はいつも考えてるよ。いろんなことをね。ほら、例えばあの雲はソフトクリームみたいで美味しそうでしょ?」
「今はそんなことなしている暇はない。この書類に目を通せ。そして仕事しろ」
「はいはい、仕事ねぇ…」
「仮にも智天使指揮官だろうが、俺はお前のためにあっちこっち飛び回ってだな」
「あーはいはい、わかってるよ。じゃ、僕は仕事に行ってくるから。この書類方しといてねぇ」
「あっ!こら!どこへ行くんだ!?」
「ちょっとガブリエルのところまで〜」
「ねぇガブリエル、あの銀河知ってる?」
「おやイオフィエル様。えぇ、よく知っていますよ。どうしたんです?急に来て。せめて窓ではなく玄関から来てくださいよ」
「いやぁ、昼寝してたら昔の話を思い出してね。いや待てよ、それほど昔じゃないか…?」
「誰から聞いたんです?その話」
「さぁ、覚えてないんだよねぇ…もしかしたら神かもしれないけど」
「へぇ、イオフィエル様にわからないものがあるとは」
「おまえもメタトロンも、大口叩くようになったよねぇ、ま、いいけどさぁ」
「行ってみればいいじゃないですか、あの銀河に。気になるんでしょう?」
「うん、言われなくてもそうするよ。あの銀河の片隅にも天使がいるらしいからねぇ」
「えぇ、居ますよ。どこの誰かは知りませんがね。堕天使じゃないですか?」
「多分そうだろうねぇ、ま、調査っていう体で行ってくるよ」
「はい。行ってらっしゃいませ。調査書出し忘れないでくださいね」
「はーい、じゃ、僕のぶんの仕事も方しといてねってメタトロンに伝えてねぇ」
「承知しました。気をつけていってらっしゃいませ」
僕が住んでいる天使の星を出発して、数多の銀河を超えて、一番隅の銀河まで来た。太陽があって、その周りを8の惑星が公転している。「地球」という惑星には「ニンゲン」っていう種類の動物がいるとか、下級天使が最近入り浸っていて堕天使がふえているとか、いろんな噂が流れている。僕はあまり知らないけど。でもとても綺麗だった。でも用があるのはその惑星よりもっと先の銀河の隅っこの小さな星。小さくて今にも崩れそうだ。都市はなく一つだけ、シェルターみたいなものが置かれている。小さな庭に、随分昔に行方不明になったはずのハティとフェンリル。シェルターの中には気持ちよさそうに昼寝しているカラパイアが一匹。僕の羽は純白だけど、彼の羽は漆黒。ひと目で堕天使とわかった。あの堕天使はウァプラだ。元々は位の高いヤツだったのに。可愛そうなやつだと思った。獣も彼も。純白のままでいればこんな陳家な星に一人で住むこともなかったはずだろうに。そもそも、彼は太陽に触れられないはずだ。とにかく、調査書を書くためには直接聞くしかないな。
「やぁウァプラ」
「うわっ!?イオフィエルさん!?どうしてここに…」
「調査だよ。この銀河の隅にこの銀河の太陽を持ってきたやつがいると聞いてね。行方不明になったはずの獣がいたから見てたら君だっただけだよ。で、この獣たち連れ帰ってもいいかな?」
「で、でも…」
「言い訳は許されないよ。この獣たち、行方不明でずっと捜索願が出されてるんだ。そしてウァプラ、君は君で指名手配されているよ。許可なく天使の星を出たんだ。そして、知らない星で堕天使になっているんだからそりゃ出るよ、指名手配。獣つれてこの星出るから荷物全部まとめちゃってよ、出発は一時間後ね」
「そんな…」
「ところでさ、ウァプラ。さっきの天使、知らない?この銀河の一番端ってここでしょ?」
「はい、この星が銀河の一番端です。この星の前の主がそうだと聞きましたよ」
「ふぅん、誰?それ」
「ミ、ミカエルさんです…」
「はぁ〜〜????ミカエル〜〜〜?????」
「まだ喧嘩してるんですか?」
「終わるわけ無いじゃん。僕は大天使じゃないもんね。そもそも、アダムとイブが悪いんだ」
「いい加減仲直りしてくださいよ、」
「嫌だね。そもそもあいつが悪いし。アダムもイブもすぐ死んじゃったし。ちゃっかり僕に押し付けちゃってさぁ、めんどくさくなったのもアイツのせいなのに。メタトロンもついてあげただけなのに僕の仕事も増えちゃってさぁ」
「イライラしてても始まりませんよ、ミカエルさんに会って話せばいいのに」
「そんなことしたらあいつが死んじゃうでしょ、だってあいつ俺より下級天使だもん」
「それはそうですが…そんなこと言ったらメタトロンさんだってイオフィエルさんより下級でしょ?」
「うん、階級は僕のほうが上だよ。でもさ、あのときはあいつのやりたいことについてあげただけだよ。情けとかじゃなくて」
「…イオフィエルさんにもそんな心はあったんですね」
「みんなして僕のことなんだと思ってんの??バカにしてんの?」
「いえ!そういうつもりはなかったんですが…」
「はぁ、もういいよ、早く荷物まとめちゃって」
「はい!」
ウァプラをメタトロンに引き渡した後、僕はガブリエルのところに行くことにした。特にすることもなかったし、調査書を持っていくついでに寄り道してお茶したい気分だったから。手ぶらで押しかけるのもなんだし、手土産にエデンの園のいちごのタルトを差し入れに持っていった。ちゃんとガブリエルのところの天使たちのぶんまで。アダムとイヴの追放以来のエデンの園だったけど、生き物もちゃんと生きていてよかった。ちゃんと世話もしているようだし、ハティもフェンリルもカラパイアも、しばらくあそこに置くことにした。他の仲間たちとの交流も大事だしね。できれば僕のところで働いてもらいたかったんだけど。そこら辺のことは神がアリエルに任せてるからなんとも言えないんだよねぇ、交渉するほどでもないし。カラパイアは飼いたかったなぁ…
「やぁガブリエル」
「おや、おかえりなさいませ、イオフィエル様。どうでしたか?あの銀河は。あと窓からじゃなくてちゃんと扉から来てくださいね」
「はい、ガブリエル。エデンの園のいちごのタルトだよ。ゆっくりお茶でもしながら話そうよ」
「いいですよ、メタトロン様はどこへ?」
「今さっき僕がウァプラを引き渡したとこ。だからすぐには来れないと思うよ。一応呼んだけど。あとからラファエルとアリエルも来るんだって」
「珍しいですね、ラファエルとアリエルが来るなんて」
「エデンの園で偶然あってさ。アリエルがいるのはわかってたけどラファエルは計算外だったなぁ。まぁタルトはいっぱいあるし。大天使呼んじゃう?ミカエルは呼ぶ気ないけど」
「ミカエル?今は居ませんよ。地球に行ってます。呼んでも来ないでしょう」
「マジ?!ナイスタイミング!ガブリエル呼べる?大天使」
「えぇ、わかりました」
「じゃ、僕はちょっと報告書渡しに神のところ行ってくるね」
「はい。お待ちしております」
「ねぇ神様、昔僕にミカエルの話したことあるでしょ」
「…ほう、覚えていたのか、偉い子だな、お前は」
「でしょ、もっと褒めてよ。それでね、お昼寝してたらその時の夢を見たんだよ。誰かわかんなかったんだけど多分神様だろうなって」
「お前は頭がいいからな。流石だな。たくさん褒めてやろう」
「あの太陽の天使って誰かも覚えてなかったから行ったんだ、あの銀河に。誰だろうって気になってね。でね、行ってみたらウァプラとハティとフェンリルとカラパイアがいたから僕すっごいびっくりしちゃって」
「そうか、長い旅をしてきたんだな。楽しかったか?」
「うん!そりゃあもう楽しかったよ。神様今度またお話聞いてね!僕はこれから大天使とお茶するんだぁ。神様にはこれあげるね」
「エデンの園のいちごのタルトでらっくすサイズとは、驚いたな」
「ふふ、いっぱい食べてね!じゃあまた!」
神様に報告書を出しに行った後、僕はすぐガブリエルのところに戻った。そこにはアリエルもラファエルもアズライールもみんないた。メタトロンはまだもうちょっと遅れそう。でもこれで。僕の頭の中の謎が一つ溶けた。ちょっとスッキリしたかも。紅茶のんでタルトもたべて、お腹もいっぱいになったしガブリエルのベットを借りてお昼寝でもしようかなぁ。




