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凶星七将記  作者: 神谷錬
一、放浪
5/7

その④

次の町にたどり着いたのは、日が暮れる寸前だった。

「暗くなる前でよかった。とりあえず、宿をとらないと」

目についた宿に飛び込む。

この国の宿は一階が食事処で、二階が客室になっているようだ。

一階では大勢の客が飲み食いをしている。

忙しそうに働く店主のそばまで行った。

声をかける。

「泊まれるか?」

「銀貨五枚」

一泊の値段は、トウエイと変わらないらしい。

「ついでだから、食事もしたい」

「別料金。その辺のテーブルに座りな」

店主が奥のテーブルを指さす。

素直に、そこに座った。

しばらく待つと給仕がやって来る。

「え?」

目を疑った。

透き通った青い瞳と流れるようなきれいな金髪。

それは、昼間に会ったあの美しい給仕にそっくりだった。

「別の食堂にもいなかったか?」

間違いない、と思ったが。

「なんのことでしょう?」

こんなことを言う。

「ひょっとして、あっちの町に姉か妹でもいる?」

「わたしはひとりっこ」

小さな声でぼそりと言う。

この話し方は、昼に会った給仕そのものだ。

「おすすめを聞きたい」

「貝類のオイル焼きがおいしいです」

「昼に食った魚もよかった。なんて名前の魚だっけ?」

「ブルーサーディンで、す……」

給仕は、ハッとして口をつぐんだ。

「おい」

「なんでしょう」

「下手か!」

「失礼な」

「なぜ、正体を隠す」

「なんのことやら」

じっと、目を見つめる。

さっと、そらされる。

この女!

「もういい。その、オイル焼きを持ってきてくれ」

「かしこまり」

焦っていたのか。

変な返事をして、そそくさと逃げてった。


あの給仕が料理を持ってきたので、さっそく食事を開始する。

怪しい人間が持ってきたので、警戒する。

ひょっとして毒でも入っているかもしれない。

時間を空けてちょっとずつ口に運んだ。

結論から言えば、大丈夫だった。

なにか盛られてはないようだ。

ちなみに貝のオイル焼きは、あんまり美味くなかった。

食べ終わった後、テーブルでのんびりする。

ふいに店の外から「お兄ぃぃぃ」と犬の遠吠えのような声が聞こえてきた。

「あいつ! しつこすぎる!」

慌てて、借りた部屋に入って、寝台に潜り込んだ。

「今日はいろいろあったな」

頼まれ仕事で、魔物と戦った。

うっすらと血のにじむ手のひらを見て、今日のことを思い返した。


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