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凶星七将記  作者: 神谷錬
一、放浪
3/7

その②

「ふぅー」と大きく息を吐く。

こんなやり取りを続けながら、国境を越えてしまった。

ふと、われに返った時、思う。

おれは一体何をしているのだろう。

「それにしても腹が減った」

ちょうど昼だが、この辺りにはいくつも飯屋がある。

「どこが美味いんだろう」

 情報がない時は直感に頼る。

ぱっと目についた食堂に入った。

店内を見回して、空いていたテーブルに座る。

「この国は、何がおいしいのかな?」

初めて来る国。

ワクワクが止まらない。

給仕がいたので呼ぶ。

「すいませーん」

「はい」

「このお店のおすすめは?」

給仕はじっとおれを見た。

「おかしなこと聞いたかな」

こちらも相手を見返す。

背中を流れるきれいな金髪。

透き通った青い瞳。

視線がぶつかってどきりとする。

トウエイにはいない人種だ。

思わず見とれた。

他の客も彼女をチラチラ見ているのが、気配でわかった。

「魚介がおいしいです」

ぼそりと言ったので、「どうも」と返した。


焼き魚を注文した。

しばらく待つと、料理がテーブルにやって来た。

塩を振って焼いてあるだけだが美味かった。

食べ終わって顔をあげると、さっきの給仕がこちらを盗み見しているのがわかった。

ぎょっとした。ちょっと気味が悪かったが、気を取り直して聞くことにする。

「あの」

声をかけるとそばまで来た。

「はい?」

「この辺に組合ってあるのかな?」

「それなら」と、場所を教えてもらった。

食事を終えて店を出る。

きびすを返そうとした時、視線を感じた。

そちらを見る。

店の窓から、さっきの給仕がこちらをじっと見ていた。

彼女はおれの視線に気づくと、窓からすっと離れ、店の奥に消えた。

「とりあえず、組合に行くか」

路銀が尽きそうなのだ。


「トウエイのコウウン」

組合に行って仕事が無いか聞いてみた。

受付のおっさんが「ある」と言うのですぐに紹介してもらう。

書類を作るので名前を教えろと言われたから名乗ったのだ。

おっさんが聞いた名前を復唱しながら、書類に書き込む。

「トウエイのウンk……」

「言わせねぇよ!」

「おお?」

「名前! 間違っている! コウウン!」

おっさんは、「ああ」と言いながら訂正する。

「あ、危ないところだった」

とんでもないものと一緒にされるところだった。


ともあれ。

依頼票を発行してもらうことができた。

組合は国境をまたいでいるので、仕事を受ける仕組みはトウエイと一緒だ。

迷うことはなかった。

時間は昼を少し過ぎたばかり。

「すぐ行ってくれ」と受付のおっさんが言うので、指定された場所に向かう。

着いてみると、そこは大きな商家だ。

庭にいた使用人に声をかけて紹介状を見せる。

さっそく家に入れてくれて、そのまま応接間に通された。

とびらを開けると身なりのいい爺さんがいた。

「若いな」とつぶやき、おれの体をじろじろと見る。

「年は?」

「十六」

「やれるか?」

「たぶん」

「得物は?」

答えるように、一本の刀を掲げて見せた。

『千羽鴉』である。

「危険だぞ?」

「だめなら逃げる」

「仕事はわかっているな?」

「街道の魔物退治」

「通行者が何度も襲われている。放って置けん」

「手はずは?」

「巣だけは見つけてある」

「なるほど」

「あとは討ち取るだけだ」

「ちなみにおれで何人目?」

「なにがだ」

「おれの前にも人を送っているはず」

「聞きたいか?」

「参考までに」

「六人」

「そんなに?」

「七人目にならないでくれよ」


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