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グレープフルーツの香りがした

作者: 怠鞍 輪廻


「私が他の人に抱かれても

 あなたは好きでいられる?」


君はいきなりそう言った


「それは好きではいられない」


僕は当たり前に答えた


「それならホントに好きではないんだよ」


君はうつむきつぶやいた…


恋愛っていうのは色んな形がある

それはきっと自由だけど

必ずモラルがあって、ルールがある


それを守られなければ人から悪く見られる

そしてきっと自分も不幸になる


人のモノをとってはいけません

人の幸せを壊してはいけません


そんな事小さい子供でもわかるのに

大人になって恋を理由に平気でする人もいる


一瞬の優越感は必ず永遠にはならないのに


どれだけ好きでも

相手も好きになってくれても、長くは続かないから

冷静に戻った時、ホントに未来を考えた時


その人との未来は見れなくなる

必ず離れる時がくる…


君に初めて会ったのは職場だった

髪がくるくるしてて綺麗で可愛くて

クールな感じだけど笑ったら女神みたいな顔をする


一瞬で僕の瞳は君に奪われた


人見知りなんて誰でもする

しない人なんていない


それなのに好きになると人は都合よく

その人と自分は似ているって思ってしまう


君は仲良くしてる風で笑顔を作るが

そうじゃない時は凄いクールな横顔を見せた


喫煙所で何回か会う

チラチラ君を見ながら僕の心は嬉しかった


その笑顔を僕に向けてくれたらどれだけ幸せか

けど話しかけられるわけもなく

時間は過ぎた


失った時、人は心が痛くなる


ただ仲良くいれた時は全然痛くなる

素振りなんて見せないのに

苦しくて苦しくてそれでも諦められなくて

頭ではわかっていても心がついていかなくなる


そうした時に僕は自分に心があるんだなって思える


会社のメールで回ってきた


「〇〇さんが今月結婚することになりました

みなさんお祝いしてあげましょう」


僕はショックで止まった

周りがみんなおめでとうと言う

僕はパソコンをずっと見つめ仕事をしてるフリをした


「そりゃあ そうだよな」


僕はタバコを吸いながら上を見た


人生ってやつは上手くいかなくて

いつもいつも残酷で


あまり人に興味を持たない僕は

人を好きにならない


「傷つくから?」


そうなのかな?

普通に興味を持てないんだと思うけど

興味のない人と上手くやっていく意味が

僕にはわからないだけ


去る者は追わないし、追っても仕方がないと思う

興味がなくなったのなら

何をしても、もう無理だと思う

興味のない人が死のうが何をしようが

僕にはもう知ったこっちゃない


けど傷つくのが怖いってのは間違いじゃないかもね


君と喫煙所で一緒になった

その時は初めて何故か2人きりになった


無言でお互いタバコを吸う


「結婚したんですね?」


今までまともに話した事もないのに

僕はそう話しかけていた


「そうなんです もう長く付き合ってたから

 さすがにって」


君も少し驚いて答える


「そうなんですね 嬉しいですか?」


君はまた驚く


「まぁ ずっと同棲してたからあまり実感は

 ないんですけどね 

 てか初めて言われました

 普通おめでとうとかだから」


君は女神のように笑った


「ごめんなさい」


「いいですいいです そっちの方がホントっぽい」


「ご飯食べに行きませんか?」


「えっ?」


「結婚したばかりだから無理ですよね」


「… … いいですよ」


なんであーやって言ったのかは僕もわからない


奪いたかったわけじゃない

何かを君としたいというやましい考えでもない


ずっと君を見ていたかった

話していたかった

多分きっとそれだけだった


連絡先を交換して今度ご飯行く約束をした


こんな可愛くて綺麗な人と

ホントにご飯2人で行けるはずはないと思ってた


「社交辞令なんだろうな〜」


それから少しやりとりをして、連絡をとらなくなった


お互い仕事をする日々が続いた

喫煙所でもあまり会わなくなり話しもしなかった


僕はその日、早く仕事が終わって

君にメールをした


「今日 ご飯行けますか?」


ダメもとで送ったメール

返ってこないか

気を遣って無理という言葉を遠回しに伝えてくるか

と思いながら僕は駅でずっと答えを待っていた


ブブブブッ


僕は恐る恐る携帯を見た


「いいですよ」


始まる恋も 始まらなかった恋も

きっとタイミングで

そんなに好きじゃなくてもタイミングが合えば

上手くいったりして

凄い好きでもタイミングが合わなければ

ダメになったりして


恋で自分を責める事はきっと間違い

相手のせいにするのもおかしい


片思いで変な行動で好きを伝えようとする人もいる

恥ずかしくて直接伝えられないから

そして伝えられなかったって思うだろうけど


きっと相手には伝わってて

伝わってるけど別になんでもないから

それに答えないだけで


思わせぶりって思うだろうけど

それはその人の勘違いで

結局言葉で伝えても

行動で伝えても 答えは同じだよ

恋にならない好意はなんにもならない


ドキドキ感、好きって気持ちを感じさせてくれた

ありがとう…って

自己完結の勝手な妄想なんて わからない


君は少し息を切らして来てくれた


「ここは人目が多いから違う所で

 ご飯行きましょうか」


「そうですね」


職場で見る以外の君もとても綺麗で

ドキドキしていた


「お刺身好きですか?」


「私北海道生まれなのでお魚好きです」


「北海道なんですね 美味しい所あるんで

 そこにしますか?」


「はい」


あまり人目のない駅が2人の

今後の待ち合わせ場所になる


お酒も僕のペースと同じくらい飲む子で

お話しが好きでたくさん話してくれる


職場のクールなイメージとは違って

ニコニコしててとても楽しい


もっと早く出会えていたら

隣にいるのは僕だったのにって

考えた時もあったけど


冷静に考えれば、彼氏がいても結婚しても

こうやって僕と一緒にいる以上

もっと早く出会えて僕が隣にいても

タイミングと好きなタイプだったら

きっと君は裏でこういうことをするんだろうな


「あっ終電がなくなるから帰らなきゃ」


「そうですね 楽しかったです」


「私も楽しかったです また今度」


「今度家に来ますか?」


僕はふざけて言った

君はびっくりした表情を見せた


「それはやばいです 以外に危険な人ですね」


君は恥ずかしそうに笑った


その日から色んな事をメールするようになった

メールだと連絡しづらいからLINEを教えてもらって


職場ではいつも通り話さなかった

たまに目が合うとお互いニコッと笑った


また飲みに行くのに時間はそんなにかからない


LINEで会話をする


「次はどこに飲みに行きましょうか?」


「あまり人に会わないところですかね」


「ん〜前の駅の近くにしますか?」


「〇〇さんの駅の近くでいいですよ?」


「あっわかりました 探しておきます」


「はい」


内心ドキドキしながらそんなわけはないと思った

日にちを決めて、その日になって

僕の家の近くの居酒屋で飲んだ


「どんなタイプが好きですか?」


君はこっちを向かず僕に話しかける


「ん?〇〇さんのようなタイプが好きです」


君は笑う


「そうじゃなくて」


そんな話しをたくさんして

君はお酒を飲んでいる


なんとも言えない距離感とたまに当たる肩と

目が合うと笑って

後で考えても思い出せないような

楽しい会話を自然にできた


「なんで年上なのに敬語なんですか?」


「仕事では〇〇さんの方が先輩なんで」


「いいですよ 仕事じゃないんだから

 敬語じゃなくても」


「ん〜なんか〇〇さんには敬語になっちゃいますね」


「なんでですか」


君は笑う


「じゃあ〇〇さんも敬語使わないでください」


「ん〜そうですね 確かに 

 敬語いきなりやめるの難しいですね」


「ですね」


僕も笑う


何を話してるのか?何を飲んでるのか?

わからなくなる

君といることが嬉しくて楽しくて

別にそこはどうでもよかった


「そろそろ終電ですね 出ますか」


「あっ はい」


僕と君は夜風にあたり駅に向かって歩く


「今日はプレミアムフライデーなんですって」


「ん?なんですかそれは」


「特別な金曜日なんです」


「そんなのあるんですね」


「もう少しお話ししてたいです」


「えっおうちでお話ししますか?」

僕はまたふざけて言った

彼女は黙って頷いた


嘘なのか、夢なのか

飛び上がりたいほどの嬉しい気持ちが

沸き上がってきたと同時に

僕は自分の頭を疑った


こんなに綺麗で可愛い人が

僕の家に来てくれるというんだから


コンビニで飲み物とお菓子を買って

タクシーに乗る

そこでもまだ疑っていた


タクシーを降りて家に着いた

緊張と酔いで鍵がなかなか開かなかった


「いつも開けてるんじゃないんですか?」


君はからかう


家に入った

自分の部屋が君がいることによって

全然違う世界みたいに見えた

いつもの汚い僕の部屋が華やかに見えた


「飲み直しますか」

君は座らずに立っている


僕の部屋は狭いから座る所はベットしかなくて


「ここしか座るとこなくて よかったらどうぞ」


「はい」


ベットに2人座ってお酒を飲みながら

さっきと違って静かに会話をした


僕は夢のようなこの時間がとてもいやらしく感じた

君の匂い、感じる事のなかった距離感と

柔らかい肌と髪

僕は唇を重ねた


今まで壁があった

それを壊して先に進んだその世界は

とても柔らかくてアルコールの残るその香りは

甘酸っぱくて爽やかで柑橘系の香りがした

絡み付くようななんともいえないものに

僕の心は飲み込まれた


優しくて暖かい

想像以上に滑らかで柔らかい肌と香りに

僕は包まれ 許されない恋は加速した


事が終わり 2人笑顔で抱き合い眠る


君はその日休みだった

仕事だった僕は可愛く女神のように寝てる君を

起こさないように腕枕をそーと取ろうとした


君は取ろうとしたのに気づいたのか

取ろうとした腕を戻して抱っこしてまた眠る


それがあまりに可愛くて僕は仕事を休む事にした


真っ暗な部屋で携帯を探し会社に電話をする


「すいません 体調が悪く本日休みにして

 もらっていいですか?」


「あー〇〇くん ん〜困るけど仕方ないね

 今日ゆっくり休んで早く治してね」


「すいません はい」


電話が終わる


君はこっちを寝ぼけてる顔で見て笑った


「ズル休みだ」


「だって 離してくれないから」


「嬉しい」


君は小悪魔だ 

僕はそう思った

嬉しいと言った笑顔がとても可愛くて綺麗で

裸でタオルに包まれてる女神が隣にいて

仕事に行こうって思う男がどこにいるんだ


その日はゆっくり2人で過ごした

愛し合い お話しをして 

愛し合って ご飯を買いに行く


「うどん好きなの」


コンビニでうどんとおにぎりとおかずを買って

おうちに戻る


君はうどんを食べる時ふーふーをしない

箸でうどんを持ったまま黙っている


「ん?ふーふーして食べないの?」


「ふーふーしたら汚いじゃん 

 こうやって冷ましてるの」


「うっそ〜 何時間かかるの?」


僕はあまりにおかしい光景に思わず笑う


君は話しをしてると話しに集中しすぎて

ご飯を食べれなくなる

そして冷ますのに時間がかかるから

必ず伸びてしまう

その光景を何度見ることになることか


けど変な所、人と違う所がまた好きにさせた


僕と君が結ばれてから

職場ではいつも通り仕事以外の事は話さず

たまに目が合うくらい


僕はけどなんか恥ずかしくなって

彼女の目を職場で見れなくなった


「目をそらされた」


君からのLINE


「なんか恥ずかしくて見れなくなった笑」


僕のLINE


その日の夜

人目のつかない駅で待ち合わせ


「可愛いな〜〇〇さんは」


君は笑って待ち合わせ場所に来る

からかうような笑顔


恋というのは勝ち負けではない

ただ好きの度合いが強くなればなるほど

その度合いが高い人の方が劣勢である


度合いが低い人の方が優位に立てる

勝ち負けではなくとも

上下関係は存在してしまう


彼女は結婚していて帰れば相手がいる

そうであればより彼女の方に余裕が生まれるのだ


いくらそこにリスクが彼女の方にあったとしても

恋だけで考えると彼女には勝てない


「〇〇さんは職場で誰ともあまり話さないね」


「うん あまり関わって面倒くさくなるの嫌だから」


「いつも1人なイメージ 黙々と仕事してる感じ

 お昼になるとどこかに1人で消えるし」


君はなんか嬉しそうに話す


「〇〇ちゃんはニコニコしてて 仕事してる時は

 クールな感じ」


「女の人はそうしなきゃ裏ですぐ言われるからね

 けどここまで話さない人もなかなかいないよ?」


彼女は笑う


「ん〜興味がないというか」


僕は少し困る


「傷つくから?」


僕はその言葉に意表をつかれる

そういうわけではないけど

自分の知らない心の中を突かれた気がした


そうなのかもしれない

無意識に

そういう言葉がなんかけど好きだった

素直で正直で自分の思う所に芯があって

ブレブレで弱い僕にはきっと憧れだった


「可哀想だから一緒にいてあげる」


君は笑う


「ありがとう」


きっと君の優越感

あなたには私しかいない

そういう人ばかり僕の周りには多かった気がする

よく言えば母性本能がある女性


そういう人はきっと僕を見ていない

きっと自分を見てる

自己肯定感が低い人

あざとい自己中心的な人


僕が騙されてあげれば、

その人はそれで幸せなんだから

自分を保てるんだからそれでいい

いつからかそんな考えを持つようになった


君とはいつもの駅の近くに

飲みに行っておうちにきて

泊まってずっと一緒にいて帰る


その関係を続けた


代わり映えもしなく、いつも一緒で

2人でどこかに出かけたことなんてなかったけど

幸せだった


けど、好きになっていくほどに罪悪感は増していった


「こんなに泊まっても大丈夫なの?」


「いつも仕事で帰り遅いから 休みの時以外あまり

 家にはいないの」


「そっか けど怪しまれない?」


「いいの そこは心配しなくて

 私が好きだからここにいるんだから」


嬉しいような 今更 悪い事をしてる気持ち

ぐるぐる僕の頭も心も乱れた

僕がこうされてたら僕は絶対許せないだろうな

その気持ちだけが強くなった


5年同棲して結婚したばかりで

職場の人とこうなったら僕なら耐えられないな

って考えるようになった


人は後悔と違う罪悪感が出た時に

好きな人と距離を置く

もしくは好きな人を忘れる為に

好きな人を好きでいる


その考えが出てから僕は彼女の言う事を

あまり聞かなくなった

君は思い通りにならなくなった僕に

頭を抱えた


「私の言う事は絶対なの」


僕はビックリした

若い時に言ってた僕の言葉を

今、他の人から聞くなんて思わなかったから


「すごい ホントに言う人いるんだ」


僕はそんな言葉をとっさに言った


「ちがう その言葉が欲しいんじゃない」


彼女は苦笑い


「なんでも はいって答えてね」


「うん」


「いや もう違う」


ふてくされる君


「わかったわかった」


いいこいいこする僕


「私のこと好き?」


「はい」


「余計な事心配しない?」


「はい」


「このまま一緒にいてくれる?」


「はい」


「なんでも言うこと聞いてくれる?」


「はい」


「私の言う事は絶対?」


「はい」


「大好き」


彼女は満面の笑顔になり

抱きついてきた

その笑顔で抱きついてきたら

それでいいかってなってしまった


人は見た目じゃないとか性格だとか

言う人もいるけれど

結局、男は女性の見た目で


可愛くて綺麗で自分のタイプの女性には

やっぱり勝てないんだと思う

性格が悪くてもわがままでも

見た目がよければ全て許せる対象になる


理由なんて簡単

だって喜ぶ姿が可愛すぎる


けどたまに意地悪もしたくなる

泣いてる顔もふてくされてる顔も

ぼーっとしてる顔もあくびしてる顔も

怒ってる顔も歪んだ顔も

可愛い


バカなのはわかるけど

男なんてそんなもの


普段一緒にいる時は君は子犬みたいだった

いつも僕のタオルにくるまってて

いつも少し眠そうで 

頭を撫でてあげるとすぐに寝てしまう

起きたら目をキラキラさせて甘えてくる


ぼーっとしてる時は何をしても

ぼーっとしてる

赤ちゃんみたいで可愛くていつも抱っこしてた


抱っこしないと何度も振り返ってきて

抱っこしてくれないの?

と言う風にしてきた


「落ち着く 寝心地がいい」


君は寝るのが好きで僕に抱っこされると

子供のような顔で眠る


僕はいつも頭を撫でてほっぺをぷにぷにしてた


「言う事聞いて」


と言う癖に抱いてる時は僕の言う事を

自然に聞いてくれた


愛情深くて優しい所

自然に気遣いができる所があったから

君のわがままもわがままとは思わなかった


「もう少しで誕生日だね」


「うん」


「何が欲しい」


「…指輪が欲しい」


「??? 結婚指輪してるのに?」


「この指輪ブカブカだからその上からつける

 指輪が欲しい」


「う〜ん…」


僕の指輪でその指輪が

外れないようにするのが嫌だった…

大好きになってもホントに愛しちゃダメだ

だって誰も幸せにならないから

そう言い聞かせていた


「恋は盲目」


恋に落ちると理性や常識を見失ってしまう事


お酒を飲んでいないのに理性が働かない

常識が君に関してはなくなっていく


けど、君の願いを聞く事はしなかった


僕の方が悪いのにバカなのはわかってるのに

会った事もない人に嫉妬していた


常識的に見れば相当おかしい事


結婚してる人の結婚相手に

その人を奪った僕が

何も悪い事してない人に

嫉妬してるんだから


頭のおかしい事

誰が見たって僕が悪くて

なんでもない僕が、ホントの相手でもない僕が

嫉妬なんて


恋は盲目の意味なんてわからなかったけど

この言葉がその時は凄いしっくりきた


週に、2、3回飲みに行って泊まって

愛し合う偽りの恋

欲望だけの恋


幸せだったけど幸せじゃなくて

君といる時はいいのに

1人になると孤独と罪悪感と虚しさが襲う


なるほど これが不倫ってやつか…


僕は会社を辞めた


「環境が変われば君は変わってしまう」


君はそう言って止めたけど僕は何故か辞めた


不倫した人は気づく

不倫した人をホントに好きになったら気づく


「この先に何もないんだ」


不倫する人は結婚しても

他の人を愛する事ができる


世間の常識なんて関係ない

当たり前なんて関係ない


この人は違う 僕だったら違う


そんなわけはない


不倫する人は思考がズレてる

まともに戻る事はない


生まれ持った価値観を変えろって

言うのは無理でしょ?


昔ながらこうやって、こういう環境で

こういう食べ物で、こういう親に育てられて

それが当たり前で


その当たり前を180度変えろって

言われても無理でしょ?

性格を全否定されてるのと同じ

そんなの自分じゃないでしょ?


それくらい無理な話し


浮気する人は大分歳をとって

性欲が無くならない限り無理だし

不倫する人も同じ


恋なんて実際

性欲なんだから


性欲なく恋なんて生まれない

恋なく愛なんて生まれない


結果 

人を愛するという事はただの性欲だけ


どれだけ綺麗事を並べても

性欲なければ恋なんて生まれない


会社を辞めて僕は新しい仕事についた

変わった世界が見たくて

気分を変えたかった


けど、変わらず君と一緒にいた


「仕事はどう?」


「うん 別に普通だよ」


「可愛い子いる?」


「いないよ」


「そっか ならよかった」


君ほど可愛くて綺麗な子なんて僕にとってはいない

なんでそんな綺麗な見た目なのに

そう言うのかわからなかった


見た目が悪いならその心配をする人はよくいる

トラウマとか、好きな人に好きになられた

記憶がないとかならわかる


だって女の人は基本見た目だから


まぁ自分を知らないで

自分より明らかに上の人を

好きになる人は例外


まず身の程をわかってない人は勘違い

そういう自分の程度をわかってない人は

大抵好きな人に陰口を言われてる


君は新婚旅行に行く事になった

ハワイに行くらしい


「お土産買ってくるからね」


君と別れて大分経つけど

そのお土産を今も部屋に飾っている


君はハワイの写真とか

ハワイでもLINEをちゃんとしてくれた


大丈夫だよ?君の首輪に繋がれた犬は

ちゃんと飼い主の帰りを待ってるから


僕は君の帰りを、仕事をしてテレビを見て

お酒を1人で飲んで待っていた


僕は植物を育てる事にする

君がいなくなっても君といた時間を忘れないように


旅行から帰ってきた君は

女神のような笑顔で会いに来てくれた


新婚旅行に行って僕の愛が薄れるのを

恐れてはいたけど君はちゃんと

お土産を買ってきてくれた


「ん?バラを買ったの?」


「うん 育ててみたくて」


「赤いバラ 綺麗だね」


「うん」


赤い薔薇の花言葉

「愛情」

「あなたを愛しています」

「無垢で愛らしい」

色んな言葉はあるけど

君には無垢で愛らしいが似合ってる


本数の花言葉

1本「ひとめぼれ」「あなたしかいない」

2本「この世界は2人だけのもの」


僕は2本育てる事にした

「この世界は2人だけのもの」

どんなに間違いでも儚くても

この世界だけは2人だけのもの


僕はハワイ旅行のハワイの事は聞いたけど

相手の事は聞かなかった


「はい お土産 海亀のアロマキャンドル

 幸せを運んできてくれるんだよ」


「ありがとう」


「後お菓子とこれとこれとこれ」


「ふふふ 多いな さすがにバレるだろ」


「大丈夫 みんなにって言ってるから」


「なるほど」


君の笑顔はズルくて優しくて


久しぶりに君に会って嬉しくて

たくさん愛し合った


僕はきっと幸せになれないだろうな

モラルもルールも全部なくなった


自由に生きるってのはしっかり生きる事と違う

誰の目も気にしないで色んな経験だけして

生きるってのはちゃんと生きてるのと違う


全てを無視して気づかないフリして

孤独に生きるって事なんだ

尊敬されるものでも憧られるものでもない

ただのクズだ


けど好きで好きで好きになって

愛おしい 

ダメだと気づいていても離れたくなくて

会えなくなるのは嫌で

どうしようもなかった

だって君はこの世に1人しかいないんだから


ハワイに行った彼女は日焼けをして

裸になったらビキニの跡がくっきり残ってた


「お尻だけ白い」


僕は笑った


「パンツはいてるの」


君は変な事を言って笑った


胸の所はそうでもなく


「上は日焼け止めちゃんと塗れたんだけどなぁ」


「その爪の甘さがココに響かなきゃいいよ」


僕はからかった


「どういうこと?」


君は苦笑い


その日 タオルの中に2人で入って

ベットでテントのようにした


「見て ここの中ではホントに2人きり

 この世界は2人だけのもの」


「ふふふ そうだね なんか安心する」


花言葉を知らない君は

僕のバラの意味なんてわからない


昼の日差しが、タオルの隙間をすり抜けて

オレンジ色の柔らかな世界を作った


君の笑顔をその隣で見るだけで

僕もなんか安心した


ホントにここだけの世界でも

ここだけの時間でも

この一瞬が一生になればいいのに


嫉妬も周りも全部無くなって

このまま時間が止ってしまえばいいのに


その世界で何度も愛し合って

何度も好きと言っても


時間が来て君を駅まで送る時には

現実に戻る


僕は手を繋ぐのが好きだから

人目のつかない家から駅までの夜の道では

手を繋いで一緒に歩く


君と手を繋いで歩けるのは夜のこの道だけ

ゆっくりゆっくり歩いて君を駅まで送る


「またね」


駅で見送る時 いつも心が締めつけられる


僕の知らない君は

きっと家に帰って普通に「ただいま」って

言って普通に過ごしてるんだろうな


「今家についたよ〜」


君からのLINE


「無事に着いてなにより」


僕のLINE


「今日はたくさん一緒にいて疲れただろうから

 ゆっくり休んでね おやすみ」


「〇〇ちゃんもね おやすみ」


そんな感じでいつもLINEは終わる


大好きだけど愛したくはない

一緒にいたいけど結婚はしたくない


そんな複雑な感情がずっと渦巻いていた


もし君と結婚したら幸せだろうけど

こうやって始まった恋だから

きっと君をずっと疑ってしまうのが嫌だし


疑いばかりの恋は絶対疲れる

信じられないなら恋をするべきではない


好きだけじゃどうもならないのは

こういう事だと思う


大抵飲みに行く所は決まってきた


隣の駅の中華 海鮮居酒屋 

僕の家の近くの駅の焼肉 焼き鳥


この4種類


飲み終わったらコンビニでお菓子と飲み物と

タバコと朝ごはんを買って僕の家に帰る


君は僕より大分若いのに昔ながらのお菓子を好む


おっとっと、かっぱえびせん、パンダのチョコ

コアラのマーチ


その中でもおっとっとが1番のお気に入り


いつも買い物カゴに入れてきた


君といつも行ってたコンビニに行っておっとっとを

見るたび僕はついおっとっとをカゴに入れてしまう


君と偶然同じタバコだった

マルボロのブラックメンソール


君を忘れたくてもずっと吸ってたものだから

今更変えられない 一緒に吸ってた頃を思い出す


いつもの焼肉屋


「〇〇ちゃんはいいお母さんになる気がする」


「なんで?」


「心配性でけど理由がちゃんとしてて

 ブレない感じが子供にはいい感じ?」


「子供か〜子供は欲しいな」


「なんか母性な感じを一緒にいると感じるから」


「そっか それは嬉しいな」


僕と君の子供が欲しい そう思った

絶対可愛い 男の子でも女の子でも

君を愛した証が欲しい

なんて言えるわけもなく言葉を飲み込んだ


「きっと可愛いよ 女神の子は

 きっと天使が生まれる」


「いつも言ってくれるけど女神なんてガラじゃない」


君は照れながら笑った


人の見た目と心は反比例してると思う

光が水に差し込む時、屈折するように


方向は全然違う所に向かってると思う


綺麗な見た目な人は心が強い

可愛い見た目の人は心が弱い


綺麗な見た目の人は自信があって

カッコいい人が多く

可愛い見た目の人は自信がなくて

あざとい人が多い


綺麗は作れないけど可愛いは作れるから


可愛いは偽りでも作れる 

綺麗は作れない


可愛い感じの人の方がモテる

男の人はいきやすい感じの方を

自信がない人の方を選ぶから

ある意味自己防衛


綺麗な女性は違うと思ったら

すっぱり別れる

可愛い女性は違うと思っても

情で別れられない

決定打な何かの理由を作らないと別れられない


結局人は見た目と自信

君は綺麗で可愛いからきっと余裕があって

自身もホントはあって謙虚にしてみせるだけ


余裕のない人はずっと不安なはずなんだ

偏見


よく行くようになった中華屋

君も僕も中華が好きでここは結構行った

いつも空いていて行きやすかった


「結婚したらどんな夫婦になりたい?」


「ん〜面白い感じ?」


「漠然としすぎ」


君は大笑い


「私は一緒にいる時間を大切にして

 なるべく一緒に過ごしたい」


「いや あなたは結婚してますけど?」


「そうだけど」


「居心地って大事だと思うんだよ

 マンネリってなんでするんだろうね?」


「確かにフィーリングとか一緒にいて

 気が合う感じだと居心地いいね

 マンネリはね〜」


「こればかりは仕方ないのか」


君は寂しいんだと思った

きっとちゃんと相手の事を好きで

ずっと一緒にいる人としっかり理解してる


今きっと君は僕の名前なんか、もう忘れているだろう

君は一緒にいる時

僕の名前を呼んだ事なんてなかったから

会社にいる時は〇〇さんって呼んでたけど


「前の彼女とかになんて呼ばれてた?」


色々僕は答える


「もう呼ぶ名前ないじゃん」


「いやいやいや あるじゃん」


「いや 同じ呼び方になるのは嫌だ」


「じゃあヒューマン」


「おい」


「人じゃん」


「人を英語にしただけ」


君は不機嫌になった

聞かれた事に素直に答えると不機嫌になるから

考えて言うようにした


「じゃあ君ね 私は君って呼ぶ」


「あー名前じゃない〜」


「みんなが呼んできた名前なんて呼びたくない」


「仕方ないじゃない 僕の名前なんだから」


「君は君だ」


「もっともらしく言うな」


ヤキモチ妬いてくれる君を笑った


僕の家の近くの焼き鳥屋

今は無くなっちゃったけど


1人で焼き鳥を食べてるおばあちゃんがいた

店員さんと仲良く話して酔っ払って

焼きニンニクを食べてる


「あんなおばあちゃんになりたいな」


「ニンニク食べたいの?」


「ちがう おばあちゃんになれば恋とか愛とか

 じゃなくて人と仲良くなれるでしょ?」


「なるほど 確かに」


「私は八方美人に見えるかもだけど

 別に仲良くしたいわけじゃない人とも話してる

 疲れるでしょ?」


「うん」


「男の人は大抵下心があるから話しかけてくる

 そうじゃなくて 見た目じゃなくて

 あーやって仲良く話しできたら楽しいのになって」


「確かにね」


「だから君を職場で見て 凄いな〜って思ったの

 あれだけ人に気を遣わないで 

 好かれようともしないで 

 別に仲良くしたくない人とは上司関係なく

 しないで無愛想な感じ」


「それは褒めているのか?」


「なかなかできる事じゃないからさ

 みんな上辺だけはいい顔するじゃん

 好きな人としか話さない人はいないじゃん

 合わせて合わせて裏で陰口言うじゃん

 君から陰口聞いた事ないからさ」


「う〜ん 僕は自己中なだけだよ

 人にそこまで興味もないから陰口も思いつかない」


「そういう所がいいなって思ったんだ

 誰にでもあんな急な誘い受けて行かないよ?」


「確かに あれは僕も急だったなって思った」


君は笑ってずっと酔っ払って話してる

お腹空いたって言って注文した

おにぎりはカピカピになってた


君は集中しちゃうと周りが見れなくなるから

忘れてるなと思うと気づくように

そっと目の前に食べ物を置いておく


「あっおにぎりが」


「もうカピカピですやん」


「カピカピになってますやん」


「いやいやいや あなただから」


こんなに綺麗で可愛いのに愛嬌まであったら

可愛くて仕方ないじゃないか?


「だから将来の夢はおばあちゃん」


「いや 黙っててもなるから」


1番最初に行った海鮮居酒屋にもよく行った


「食べ物は残しちゃいけません」


「うん 美味しいうちに食べようね」


「ふーふーしちゃいけません」


「いや 海鮮だから」


「食べれる分だけ頼むんだよ」


「うん お寿司とここの豚の角煮うまいから

 豚の角煮とシーザーサラダと煮付けと…」


「だ〜か〜ら〜いつも頼み過ぎなんだよ」


「食べれなければ残せばいい」


「おい だから最初に言ったでしょ?」


「はい」


「いいこだね」


たまに逆転する事もあったけど

君との恋はとても楽しかった

たまに僕の真似をして

いいこいいこしてくれて


燃え尽きるまで全力で好きと伝えた恋

いつか終わると思っていたからこそ

この時間を大切に…大切に…

元に戻ってこれがいい思い出になれるように


君は相手の所に戻って新婚生活に

僕は1人に


束の間の命

激しいまでに燃え続けて灰になって

風で吹き飛ばされてきっと過去に消えていく


頭が悪いくせに忘れる事ができない頭だから困る

何年経てば忘れてくれるのか?


最近、君は家族の話しをよくする

お兄ちゃんが嫌いとか

お父さんとお母さんが公務員で忙しくて

あまり家にいてくれなかったとか

おばあちゃんの家に預けられてたとか


相手のお母さんの話しとか

相手の兄弟の話しとか


昔好きだった人とか

こんな人と付き合ってきたとか


僕の家族とか

今までどんな人と付き合ってきたとか

どうせ不機嫌になるくせに

全部聞いてくる


何でだろうね?

君は何を求めていたんだろうね?

仕事もフラフラしてる僕より確実に

今の相手の方が幸せになれる


それを知れば知るほど

僕は劣等感が強くなっていく


相手は話しを聞く限り

僕なんかより全然いい人で

仕事もできて人を幸せにできる要素を

持ち合わせてる優しくて明るい人


「今度ウェディングフォト撮ってくる

 結婚式やらないから写真撮ってくるんだ」


「そうなんだ きっとウェディングドレスの

 〇〇ちゃんは凄い綺麗だろうね」


「私は和装の方をメインで撮りたい」


「撮ってきたら見せてね 

 ウェディングドレス姿 見たい」


「やだ 恥ずかしい」


「いや 見せてよ」


写真を撮るのは昔から好きだったけど

本格的なカメラはその時持ってなかったから

憧れはあった


「写真撮ってきたよ」


「見せて」


幸せそうに写るウェディングドレスの君と

タキシード姿の相手はとてもお似合いで


僕に見せてる笑顔がそこにもあって

複雑に胸が痛くとても痛く

けど凄い綺麗な写真だった


和装の君もとても美しくて

ゼクシィのモデルさんみたいだった


いつも僕の家にいる君とは、違う表情の君は

悔しいくらい綺麗でショックを隠せなかった


「何で止まってるの?」


ハッと我に返った


「綺麗過ぎて」


とっさに嘘をついた

君は何か感じたのか


「もう見せない」


それから見せてくれなかった


無様でカッコ悪くて

何をしてるんだろう

僕は君のなんなんだろう?


最初からわかってたはずなのに  

自分がショックを受けるのは間違いなのに


僕が嫉妬するのはお門違いなのに

このバカな心は痛みを感じた

張り裂けそうな胸の痛みは苦しさに変わった


偽りの僕でこんなに苦しくなるなら

ホントの相手が知ったら死んでしまうんじゃないかと

思うくらいの事をしてるんだって気づいた


仲は良くないと聞いてた

まぁ大抵不倫する人は言う

それを言わない不倫する人を

聞いた事がないくらいの言葉


けど、目の前に現実を見たら

希望が絶望に変わる


これは不倫相手ならわかる感情なんだろうか?

そんなの知らなかったけど

これは苦しい


「さぁ帰ろっか?」


君は話しを切り替えて僕の家に帰る準備をした

僕も笑顔を作って頷いた


違う日、もんじゃを食べたいと言うから

初めて違う店に行った


「もんじゃ作った事ない」


「作ってあげるよ」


「作れるの?料理できるの?」


僕はビックリした


「作れるわ これくらい」


君は笑った

手際良くもんじゃを作る君に

僕は尊敬の眼差しを向けた


「すごい」


「いやいやいや 作った事ない方がおかしいよ」


「いい奥さんになれるね」


「家庭料理じゃないでしょ」


初めて作業を行う姿を見た僕はまた好きになった


言葉じゃない方法で愛し合うのは

難しくて簡単で

それが1番愛を感じて感じられなくて

自由だけど自由じゃなくて


抱きしめるたび怖くなって

抱きしめられる強さで不安になって


唇を重ねるたび気持ちがわかって

体を重ねるたび気持ちがわからなくなった


君の温もりで想いを測れたら

どれだけ楽なのか


冷めた目をしてる君が愛しくて

流した目がとても魅力的で


どれだけ会話をしても消えていって

どれだけ笑い合っても、もうそこにはなくて


ふざけ合った事も

楽しかった事も

色んな事があっても

一瞬で関係はなくなってしまう

たった1つの間違いで


積み上げた信頼は一瞬で失う


時と場合は考えなければなりません

いい時と悪い時があるのです

失ってから気づいても遅いのです

どんな事も答えてくれるからって

甘えていてはならないのです


いつもの焼き鳥屋で君と飲んでいる


君は酔っ払いはじめた


「いつも好きって言ってくれる

 私は君が好き」


「後悔がないように」


「どんな時でもふとした時でも何回も

 言葉をくれるから」


「どうかした?」


君は何か考えてる感じ


「私が他の人に抱かれても

 あなたは好きでいられる?」


君はいきなりそう言った


「それは好きではいられない」


僕は当たり前に答えた


「それならホントに好きではないんだよ」


君はうつむきつぶやいた…


「それは無理でしょ?当たり前に」


「私達は当たり前の事をしてないじゃない?」


「じゃあ僕が他の人を抱いても

 君は好きでいられる?」


「私には耐えられない」


「それと同じ」


「私とあなたは違う もともと始まりから」


「確かに」


「もともと相手がいる私は

 君以外に抱かれるのは仕方のない事」


「確かに」


「だってあっちが君以外の他の人が

 メインなんだから」


「………」


君はきっと僕が前に陥った所に落ちた

今更、罪悪感が出てきたんだろう


「最近機嫌悪いって言われるの

 ずっと避けてるから」


「うん」


「あのね 

 最近だから早く帰ってくるようになってね 

 料理を作ってくれる」


「そっか…」


「好きでいられない…?」


「……わからない」


「私達の関係は何かな?

 恋人?セフレ?私の不倫相手か」


「……恋人」


君はニコッと女神のような顔を見せる


「君を失いたくないけど彼を失うわけにもいかない」


「うん 最初からそうなんだもんね

 それは僕が悪い」


「彼の家族で姪っ子がいるんだけど

 その子が私にお姉ちゃんができたって

 喜んでくれるの」


「うん」


「離婚は私はできない この先もずっと」


「今日は真面目な話しだね」


「わがままなのは知ってるけど

 君も大好きだからそばにいてほしい」


確かに最初からわかってる事

これは元々のもの

否定をするのはおかしい

僕が基本悪いんだから


話さなくてもいいのに だったら話さないで

上手く嘘をついてくれたらいいのに

相手にもずっと嘘をついてるんだから

それは僕のわがままか


悪魔で不倫はあっちがメイン

それは当然で当たり前


「わかった」


君は安心した顔を見せる


「ありがとう」


抱きしめる強さで気持ちを測れたら

快楽の中に沈んだ心なんかでも

きっと僕らは恋人以上なのに


唇を重ねるたび

体を重ねるたび

誰にも取られたくないという感情に

矛盾が生まれて

僕は心を殺し続けた


傷つけあいながら熱いものを確かめて

微笑みを交わして

歪んだ心の距離を感じ合う


他の人が見えない2人だけの景色

守りたい時間を求め合う


声も、息づかいも、指も、唇も

瞳も、濡れる体全ても


今だけは

2人だけの誰にも知らない空間にあるんだから

何度も何度も愛し合った

僕らの世界 いずれ終わる行方知らずの恋


しばらくして君はいなくなった

LINEをしても返って来なくなった


きっとあの時のわがままは最後のわがままで

愛されていたかったのだろうか?


僕はいつ終わりが来たとしても

後悔ないように好きと言い続けたから諦めた


涙も枯れ、抜け殻のようになったけど


僕は君のウェディングドレスの綺麗な写真を

思い出して写真の勉強するようになる


一瞬が一生で、一生が一瞬と思った写真


凄い綺麗と思った感動はあの頃は

辛かったけど間違いはないから


君のいつも飲んでたお酒とおっとっとを買って

僕はパソコンに向かって写真を編集する


お酒をぐっと傾けて一気に飲んで

鼻から息を通した


あっ…君の香りがした…

アルコールの残るその香りは

甘酸っぱくて爽やかで柑橘系の香り


香りと記憶は繋がってるらしい


2年後


僕は電車に乗り、帰ろうとしてた

そんな時、君を見かけた

見間違いではなく 確実に君だった


ドキドキが止まらなく苦しくなった

電車の中、同じ空間にいた

君は気づいてなかったかもだけど

声はかけられなかった


君のお腹は大きくてなっていて

カバンにマタニティーマーク


顔を背けて駅に着くのを待った

まだこの電車に乗ってたんだ


よく行ってた人目のない駅の近く

居酒屋達も通り過ぎ 駅に着く

彼女を横目で見て 早歩きをして慌てて去った

覚えてくれているんだろうか?


それが最後に会った君の姿だった

きっと元気な子供が産まれて

今頃、女神の笑顔を天使に贈っているんだろうか?


恋愛っていうのは色んな形があって

それはきっと自由だけど

必ずモラルがあって、ルールがある


それを守られなければ自分を壊して

ずっと秘密を抱え込まなきゃいけなくなる

そして絶対自分も不幸になる


人の大切な人をとってはいけません

人の幸せを盗んではいけません


そんな事小さい子供でもわかるのに

大人になって恋を理由に平気でする人がいる

恋は理由になりません


一瞬の優越感は必ず永遠にはならないから


そうした人は必ず幸せにはなれません


人の幸せを壊そうとして

自分のモノにしようと奪ったところで


きっと自分が幸せを手に入れようとした時に

他の人に同じ事をされる


そうして人は初めてその痛みがわかる


どれだけ好きでも

相手も好きになってくれても長くは続かない


冷静に戻った時、ホントに未来を考える時


その人との未来は見れない

だから必ず離れる時がくる


けどね 全部が全部悪いわけではない


その時の幸せは

きっと儚いからこそ輝いて

儚いからこそ 

2人しか知る事のできない愛の形を作る事ができた


あの時の幸せは今の幸せになる事はないけれど

今、君が笑って幸せでいれるならそれでいい


今になって

君と一緒にいた時の事を思い出したら


僕が君にとって何になりたかったのかわかったよ


君を守れる人になりたかったんじゃない


君とずっと一緒にいれる人になりたかったんじゃない


君の寂しさを埋めてあげられる人に

なりたかったんじゃない


僕は…




「君の笑顔の【理由】になりたかった」







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