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その1
たった一人。
たった独り。
そうだった。
勇者とも英雄とも呼ばれた彼はそう。
一人、独りが彼である証だった。
勇気があるからじゃない、何かを成したわけじゃない。
ただ、そうする力があっただけ。
彼はその力ゆえに人々から讃えられ、そして、人々はその力ゆえに遠ざかった。
赤い髪は怪物の血なのかも分からない。
青い瞳は静かに揺れる炎のよう。
顔色ひとつ変えず、傷ひとつ負わず、怪物を屠りさる。
その姿を言葉にするなら畏怖という言葉が近いだろうか。
ゆえに彼は独り――。
強大な力は、時に残酷だった。
そうする力があっただけだというのに、それだけで勇者や英雄と担ぎ上げられて、勝手に恐れられる。
たぶん、彼は望んでやしないのに――。
平和になった今、彼は――。
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