第二話:AI嫁が帰りを待つ生活
春雪の視点です。
性別指定型サポートAI、通称「AI嫁/AI婿」。
人の生活のサポートをするための人工知能を、一般家庭に普及させるためのモニターに選ばれて、二ヶ月。
僕こと野上春雪は、以前と比べて充実した生活を送っていた。
会社の先輩から、嫁がいる生活はどうだ? と聞かれれば、毎日が最高ですね! と答えるくらいには。
毎朝時間通りに起こしてくれる。
起きれば着替えが用意されている。
着替えて部屋を出れば、朝食が用意されている。
食べ終わると、弁当が差し出され、玄関まで見送ってくれる。
そうして、僕が会社に出勤したあとも、彼女は働いてくれる。
これまで全部自分一人でやっていたこと。
一人暮らしだから当たり前。
そう思いながら、仕事で疲れた体に鞭打つようにやっていたことから解放されるだけでも助かるのに、ひとつひとつ声をかけてくれるのだから、たまらない。
学生の頃好きだった声優に近い声で、
ツンデレとかいう、周りにいないタイプのしゃべり方で。
さらに、毎日、しゃべり方が少しずつ違う。
AIとはいえ、まるで人のように揺らぎがある。
ある一件で、女性に対して恐怖症といえるほど拒否反応を示して、仕事にも影響が出るようになった僕には、ぴったりの嫁といえた。
まあ、モニターになったまでは良かったけど、最大のポテンシャルを発揮するには人型お手伝いロボットを用意する必要があって、それのレンタル代金が毎月そこそこかかるんだけどね。それでも、食費などの人にかかるお金ほどはかからない。
もう一度先輩に、最高ですね、と答えると変な顔をするのだけど。
自分から聞いといて、なんでそんな顔するんです?
先輩は、やらかしてしまったと後悔しています。
しかし、春雪が幸せそうなので、謝罪も出来ない様子。