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幕間・壱:袖振り合うも多生の縁

異世界旅:旅程小話編(オオナギの国まで) 開始

 シターリを旅立って二日目。由希とブリジッタの二人は、特に問題に直面することも無く、順調に旅を続けていた。


 その理由の一つとして、旅において大きな負担となる荷物の運搬について、途中で調達した荷車を体力に優れる由希が引き、その負担をブリジッタが法術で軽減できるという点があった。

 加えて、悪路に差し掛かっても、法術を活用した身体強化を由希に施すことで解決出来るという点も、特筆するべきものだった。

「本当にすみません。力仕事ばかりお任せして……」

「気にしないで。何より、私が肉体労働を担当する方が適しているからね。その代わり、法術支援を宜しく」

「それはお任せください。負担軽減に適した法術はバッチリ予習済みですので!いつでも、的確に、ユキを支えられます」

 そのような会話を交わしながら、互いに役割を分担している。


 もっとも、一つも問題が無かったわけではなく。その旅の道中では、時たまゴブリンワンダラーと遭遇し、戦闘になったこともある。

 ただいずれも、由希の躊躇なき一太刀によって撃退され、然したる障害にもならなかった。

 ある時。その事について疑問を持ったブリジッタが、何気ない話題の中で問いを投げたこともあった。

「それにしても。ユキは本当に戦い慣れされてますね。こう、躊躇わないと言いますか」

「そうだね。まあ、自分でも驚いてるよ。普通なら抵抗感の一つもあるんだろうけど」

「何故か、無い?」

「うん。何て言えば良いんだろう? この剣を抜くたびに、初めからそうだったような既視感があってね。経験なんてしたことないのに、不思議なものさ」

「ふむ……」

 このような具合に、決まって、由希本人も疑問を呈した状態で終わるという事を繰り返しながらも、目的地を目指して歩いていく。


 しかし、この二つの出来事よりも些細な、だが由希にとっては重大な事件があった。

 それは、法術効果の更新を忘れたことによって、約十分の間、言語不通状態に陥ったことだった。

「いやはや……。急に周りの言葉が分からなくなるって、あんなにも焦るもんなんだね」

「本当にすみません。うっかりしていました」

 互いに苦笑を浮かべ、直前の出来事について振り返る。

 この事件の原因は単純で、ブリジッタが由希の疲労軽減にと、法力を身体強化の法術に割き過ぎたことで法力そのものが、一時的に枯渇していたことを見逃していた為に、言語翻訳能力を付与する法術の重ね掛けが不発に終わったからだった。

 だが、その事件がもとで、由希は一つの確信を得ることが出来た。

(これ、もしもブリジッタが旅に同行していなかったら、今頃私は、間違いなく路頭に迷っていたよね……)

 謝罪の言葉を述べ続けているブリジッタを見ながら由希は、その一方で彼女に対して無上の感謝を述べるのだった。

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