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6話 情報収集

 武器屋に寄った後、日が暮れだしたので急いで《熊の手亭》にやってきた。

 外観は無骨な感じでどこか入りづらい印象があったが、扉を開けて中に入るととても綺麗で清潔感に溢れている。

 とりあえず五日分の宿泊費を払い、部屋を借りた。

 部屋の中はベッドなど必要最低限の物しかないが、現代日本のホテルと遜色ないぐらい清潔で住みやすそうだ。

 ここをおすすめしてくれたニーナさんに感謝だな。

 ちなみにこの宿の主人は大柄な人で、まさに熊のような人だった。

 絶対宿の名前の由来は主人に関係していると思う。



「はあ……疲れた……」



 ベッドにゴロンと寝転がる。

 どっと疲れが押し寄せてきた。

 身体的にはともかく、精神的には相当疲れていたらしい。

 真っ白な天井をボーッと見つめながら、今日一日を振り返る。

 転生して、魔法を使って、魔物を倒して、ゾンゲと戦った。

 今日だけで色々あったな。

 でも、今思えば反省すべき点も色々ある。

 特にゾンゲを倒した後、ギャラリーへの対応が良くなかった。

 あの中に実力者がいてもおかしくなかったのに、安易に挑発したりするのはだめだったな。

 もしそれで勝負になって負けていたら、僕は今頃寒空の下で夜を過ごすことになっていただろう。

 ……次から考えなしに行動するのは止めよう。


 それから一人反省会を終えた僕は新たな魔法を小さな規模でいくつか試し、魔力制御の訓練をしてから眠りについた。



 そして次の日。

 体感でいつもよりグッスリ眠った僕は、宿の主人お手製のホットドッグを食べてから冒険者ギルドにやってきた。

 ホットドッグ、超うまかったです。

 それで冒険者ギルドにやってきた理由なのだが、今日は資料室で魔物の情報を仕入れることにする。

 敵を知り、己を知れば百戦危うからずと言うからね。

 というわけで朝から早速資料室に籠もり、置いてある資料を次から次へと読んでいく。

 幸いにして資料室には誰もおらず、途中で人の出入りも無かったため、集中して読むことができた。

 それに魔物の資料は絵と説明、そして特徴などがざっくりと乗っているだけで、一種類の魔物につき読書時間がそれほどかからない。

 さらに言えば、なんだか小さい頃に読んだ架空のモンスター図鑑を読んでいるような気分になり、楽しく読むことができた。

 そのおかげで一回読んだだけなのに、殆どの魔物について覚えることができた。


 そうして約半日で魔物の資料について読み終えた僕は一旦ギルドを出て屋台で適当に昼ご飯を済ませてから少し買い物をし、もう一度資料室にやってきた。

 この資料室には魔物の資料だけでなく、剣士や槍士、魔法士について書かれている資料があったためだ。

 魔法士について書かれた資料を手にとって見てみる。



「殆ど神様から教えてもらったことばかりだな……」



 魔法は火、水、風、土の最も習得しやすいと言われている基本4属性と氷や雷、音などその他を全ての属性を混ぜ合わせた混属性の五つに分類されている。

 そして魔力はどんな生物でも持っているため、魔法を使えない生物はいない。


 これを見て、本当に神様はこの世界で一般的に知られていることしか教えてくれなかったんだなぁとつくづく思う。

 神様しか知り得ない真理とかを教えてほしかった……!

 だけど魔法士に関して新しく知ったこともある。

 どうやらこの世界で一般的な魔法士は詠唱を行うのが普通らしい。

 それに加え発現する魔法の威力も低いので、よっぽど魔法士として修練を積んだ者しか戦闘では役に立たないらしい。

 そのため不遇職と呼ばれているのだとか。

 だけど伝説では魔法で海を割ったり雨を降らせたりした人がいるそうだ。

 まあ、それらの人が実在したかどうかは疑われているみたいだが。

 しかし例外で、治癒を専門とする魔法士は逆に重宝されており、それ専用の治癒士ギルドがあるらしい。

 前の世界で言う医者の代わりのようなものだな。


 その他にも剣士や槍士、弓士など他の武器を扱う人達の資料も読み込んだ。

 ゾンゲと戦ったときのようなことはもう二度と無いかも知れないが、この世界には盗賊がいるのだ。

 そのため他の武器を扱う人達の情報はできる限り持っておきたい。


 そうして資料を全て読み終えた頃には日が半分も沈んでいたため、それらを元の場所に戻して《熊の手亭》に帰った。



 次の日。

 朝から冒険者ギルドにやってきた僕は依頼書が貼られている依頼板を眺めて、稼ぎが良さそうな依頼を探す。

 とは言っても今の僕は一番下のHランクなので実入りが良さそうな依頼は殆ど無い。

 なので少しでも稼げる、今のランクより一つ上のGランクの依頼を受けることにする。

 受ける依頼を決め、依頼板からその依頼書を剥がしてニーナさんの下に持って行く。



「ニーナさん、これお願いします」



「フォレストウルフの討伐依頼ですね。カズトさんはゾンゲさんに勝てる程の実力があるみたいなので問題ないとは思いますが、気をつけてくださいね」



「はい。ありがとうございます」



「それではがんばってください」



 ニーナさんにそう背中を押され、冒険者ギルドを出る。

 フォレストウルフはこの街の東にある僕が転移してきた草原のさらに先にあるベスシル山脈に住んでいる魔物だ。

 山に住んでいるんだからフォレストじゃないと思うのだが、種類はフォレストウルフなのだからしょうがない。

 ともかく僕は街を出て、転移してきた草原を突っ切る。

 そこでスライム相手に昨日思いついた魔法を何度か試して実験をして、ベスシル山脈の麓にやってきた。



「ここからは気を引き締めないとな」



 目の前に広がるのは先ほどまで見通しのいい草原ではなく、木々が乱立している山だ。

 当然草原より見通しが悪く、死角となる場所が一気に増える。

 そのため不意打ちを受けないように、これまでより緊張感を持って行動しなければならない。



「よし、行くか!」



 今一度気合いを入れ直して山に足を踏み入れる。

 このとき、足音がしないように歩き、同時に木の上にも注意を向けることが大事だと冒険者ギルドの資料室で読んだ。

 足音は当然魔物にバレるのを避けるためだが、木の上に注意を向けるのはそこから攻撃してくる魔物がいるかららしい。

 なのでその通りに歩いていく。


 そうしてあちらこちらに視線を向けて気を引き締めながら歩いていると、冒険者ギルドが買ってくれる素材がそこら中に生えていることに気がついた。

 主に薬草や毒草の類が多い。

 木の根本辺りにたくさん生えているのだ。

 これを大量に採集して売り払えば、宿代の足しになりそうだ。

 ちなみに毒草は解毒薬を作る上で必須となる材料のため、冒険者ギルドが買い取ってくれる。

 決して人を殺すような目的で使われるわけではない。



「たしか次生えてくるように、根本を残して切るんだったよな」



 そしてこれらの素材の取り方にも注意すべき点がある。

 これらの点を守らなければ買取値段が下がってしまうので要注意だ。

 ちなみにこれもまた資料室で仕入れた知識である。

 

 そうして周りを警戒しながらも丁寧に素材を採集していると、魔物の姿を発見した。

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