愚鈍な正義 2
「おはようございます副団長さん! 今日も良い天気ですね」
出勤すると、朗らかな表情で部下に朝の挨拶をするジョージ。
しかし、その挨拶を受けた衛兵団の副団長は、チラリとジョージの方を見ると明らかに不機嫌そうな顔をして、無言で顔をそむけた。
仕方の無い事だ。彼らの信頼すべき上司であるアリシア・カタフィギオ嬢を追放したのは、ジョージの父であるエドワードなのだから。
しかしジョージは意に介さないとばかりに、ニコニコと笑いながら席についた。
団長専用の机の上には、本来であればジョージが処理すべき書類が山のように積まれている筈なのだが、どうやら彼が出勤する前に、副団長の彼がすでに書類業務を終わらせてしまったようで、机の上には何一つ無かった。
「おや、書類を片付けて下さったのですね。ありがとうございます。しかしお気遣いなく。これは私の仕事なのですから、今度からは私がやりますよ」
ジョージの言葉に、副団長は不機嫌そうな顔を隠そうともせずに、ぶっきらぼうな口調で面倒くさそうに返答する。
「いえ、貴族の御曹司であるアナタにそんな雑務任せられませんよ」
少し馬鹿にしたような副団長のセリフに、しかしジョージは穏やかな表情で返答した。
「ありがとうございます。しかし、不要な気遣いです。私は確かに大貴族ミラー家の長子ですが、それ以前に衛兵団の長です。衛兵団の仕事は私の仕事・・・アナタの負担を、少しでもこの愚物に背負わせてはくれませんか?」
ジョージの言葉に、毒気を抜かれたようにあんぐりと口を開ける副団長。
「・・・新団長、前から思ってましたけど、自分の事愚物とか言うの止めませんか? 仮にも貴族でしょうアナタ?」
「事実ですから。私は偉大なる父を見て育ちました。だから誰よりも理解できてしまう。私は父のようにはなれません、そして、前任の団長であるカタフィギオ嬢にも遠く及ばないでしょう。ですが私は衛兵団の団長です・・・誰が何と言おうと私はアナタ方の命を預かる立場にいる・・・・・・だから背負わせて下さい。こんな情けない団長で大変申し訳ございませんが・・・それでもアナタと供に背負いたいのです、何もかもを」
呆れたような顔で聞いていた副団長は、やがて何か堪えきれないとばかりに吹き出した。
笑いすぎて目に涙すら浮かべながら、先ほどとは違って砕けた口調になった副団長が語り掛ける。
「ハハッ、思ったよりおもしれぇじゃねえか騎士ジョージ・リッシュ・ミラー! 気に入った。良いぜ、今更だがアンタを団長と認めてやるよ!」
そして副団長はスッとその右手を差し出す。
「カナル・アイスナー。アナタとか副団長さんとか呼ばれると気持ちわりいんでな、カナルと呼んでくれ。衛兵団のみんなはそう呼んでる」
その申し出に、ニコリと微笑んだジョージは、カナルの差し出された右手をガッシリと掴む。
「ありがとうカナル。これから一緒に国のために頑張りましょう」
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