表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
語られぬ者たちのサーガ  作者: 武田コウ
41/46

運命のイタズラ 3

 バースと名乗った巨人に連れられたのは、元は冬眠中のグレードベアが利用していたらしい、崖際の洞穴だった。


 中に入ると、寝床には乾燥した草が敷き詰められており、少し酸っぱいような臭いはともかく、居心地自体は悪く無さそうだった。


 巨人は、クルをそっと寝床に降ろすと、自分は先程歩きながら拾っていた乾燥した木の枝を組み上げ、どうやらたき火を起こそうとしているようだった。


 何やら黒い石を両手に持ち、互いに打ち付けて火花を起こしている。その粗雑な見た目とは違って、どうやらバース自身は器用な手先をしているようで、原始的な方法での火起こしはあっと言う間に成功する。


 パチパチを燃え上がるたき火。バースは先程のモンスターの肉片をたき火に放り込む。


「こっちに来いクル。たき火にあたって体を温めるんだ。春先とはいえ、その様子じゃ大分冷え切っているだろ?」


 バースの言葉に、恐る恐るたき火に近寄るクル。


 たき火の暖かさに、始めて自分が酷く冷え切っている事に気がついた。


 しばらくボウッと、たき火の側で座っていると、横からニュッと突き出たバースの腕。なんと素手で火の中から焼けた肉を取りだした。


「ほら、喰え。良く焼いてあるからお前でも喰える」


 目の前に放り投げられた肉の塊。


 バースの巨大な手が持っていたから小さな肉片に見えていたが、こうして目の前にあると結構な大きさの肉の塊だとわかる。


 肉の焼けた香ばしい香りを吸い込んで、お腹がキュルキュルとなった。


 空腹に、思わず肉に飛びつく。焼きたての肉の温度が手に伝わるが、そんな事など気にならないほど腹が空いていた。


 大口を空けて肉にかぶりつく。決して上等ではない、筋張った肉だが、肉は肉だ。そも、まともな食事を取ったのがいつ以来なのか思い出せない。


 クルは迫害されていた。


 親から与えられる食事といえば、家族が食べ残した残飯か、野菜の切れ端くらいのもの・・・・・・肉を食べたのも、人生で数回程度だった。


 ガツガツと肉を喰らうクルを、優しい目で眺めるバース。しばらく平和な時が流れ、やがてクルが全ての肉を食べ終わった頃を見計らって、バースは話し出した。


「クル、お前は自分の事についてどれくらい知っている?」


「自分のこと?」


 クルが首を傾げると、バースは真剣な様子で頷いた。


「ああ、自分の・・・・・・その額の ”闇の紋” についてだ」


 バースが指さした先は、クルの額。


 そこには、青黒い色の入れ墨のようなものが刻まれており、幾何学的なその文様は、何か悪魔の顔のようにも見えた。


「”闇の紋”? この額のアザは、闇の紋というの?」


「ああ、どうやら何も知らないらしいな・・・・・・何も知らずに、あそこに捨てられたのか?」


 小さく頷くクル。バースは、深くため息をついた。


「”闇の紋”、別名 ”悪魔の血脈の印” と呼ばれる紋章だ」


 ”悪魔の血脈”


 その響きに、クルは大人達から「悪魔」と罵られた事を思い出す。


「一般的に、この紋が刻まれたモノは悪魔の血を引くと言われ、忌み嫌われる。人として生まれ、”悪魔” として成熟し、災いをもたらすとな」


 その説明を聞いて得心がいった。


 今までクルが迫害されてきたその理由がわかったのだ。


「くだらん伝承だと思うか? だがこの伝承にはそれなりの”理由”があるのさ」


「理由?」


 バースは頷いた。


「その原因は未だに解明されていないが、”闇の紋”を持つヤツは、例外なく闇術に高い適性を持っている」


「闇術?」


「そうだ、人間が扱う魔術ではなく、魔族の扱う ”闇術” 。人の身でありながら魔族の術を扱えるんだ・・・・・・常人が恐れるのも無理はねえさ」


 そしてバースは正面からクルの目を見つめた。


「”闇の紋”を持つ者は、大概が子供の頃に殺されるが・・・まれに生き残った者は例外なく強力な力を持つ」


 力を持った ”闇の紋” の持ち主が、生まれ育った村を滅ぼしたなんて話もあり、それもまた ”闇の紋”が恐れられる理由にもなっているのだという。


「そこで取引をしないか? 俺はお前のその将来に賭けたい・・・・・・俺の願いを、聞いてはくれないか?」


 真剣なその様子に、クルは震える声で聞き返した。


「・・・願いって?」


 バースは瞬きを一つして、その ”願い” を口にした。



「騎士の中の騎士・・・・・・フスティシア王国の騎士長、アルフレートを殺して欲しい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ