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語られぬ者たちのサーガ  作者: 武田コウ
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受け継がれるモノ 2

 突如として無の空間から聞こえた外界の刺激。無我夢中で声を発するが、その音はやはり闇に吸い込まれてしまう。



――― ああ、声なら出さなくてもいい。想うだけでこちらにも伝わる。此処はそういう場所だからな。



 想うだけで伝わる・・・。


 おかしな話だ。


 しかし、闇の中で聞こえるその声には、不思議な説得力があった。



(君は・・・誰なんだ?)



 その問いに、声は静かな笑い声を上げた。



――― おかしな事を聞くな、自分が誰かすらわからないのに、俺の正体を知ってどうするというんだ?



 確かにその通り。


 例え声が自分の事を語ったとして、記憶の一切が無いこの自分にとって、それが何になるというのだろうか。


 だから考えた。


 今一番知るべき質問を。



(・・・・・・この場所は一体なんだい?)



 何も見えない筈のこの場所で、何故だか声の主人が薄らと微笑んだように感じられた。




――― ああ、それは良い質問だ。さっきの質問より大分マシさ。



 喜色を含んだ弾むような声音。


 そして声は語り出した。



――― この場所は生と死の狭間にある虚無。現実と夢の間にある空間さ。まあ、つまりは何でもない・・・この空間は本当につまらない場所だ。・・・・・・だが、今の俺とお前にとってはとても重要な意味を持っている。




(重要な意味?)




 話についていけず、言葉をオウム返しにすることしかできない。



――― ああ、少し提案があるんだ。お前にとっても悪い話じゃない筈だ・・・・・・聞くかい?




 聞かないという選択肢は無かった。どんな提案にせよ、この闇でずっと一人でいるよりはマシだと感じた。



(・・・聞くよ)




――― ああ、それは賢い選択だ。




 そして、声はその提案とやらについて語りだした。




――― お前は今、死にかけている。



――― 放っておけばそのまま死んでしまうだろう。



――― 死にたくないか? お前は・・・・・・生きたいか?






 死





 記憶の無い自分にとって、それは恐ろしいものなのだろうか?


 生きていた実感すら無い。


 生きていないモノにとって、死は拒否すべきものなのだろうか?






(・・・・・・生きたい)





 生きたいと、そう思った。


 何故だか、ここで死んではいけないと、そう思えたのだ。




――― そうか、俺ならばお前を生かす事ができる。




(その見返りとして、一体ボクは何を差し出せばいい?)



 命の代償が安い訳が無い。


 きっとコレは悪魔との取引。だが、それでも、何を差し出しても生きなければと、そう思えたのだった。




――― 話が早いな。・・・実は情けない事に、この俺も死にかけでな・・・・・・俺とお前、互いに死なない為には方法は一つしかない。




(それは・・・?)




――― 簡単な話だ。



――― お前の体を・・・・・・俺に寄越せ。




(いいだろう)



――― やけに素直だな。即答じゃないか。



(迷っている暇なんて無い・・・記憶は無いけど、ボクはここで死んではいけない気がするんだ)



 体なんて、いくらでもくれてやる。




――― 良い覚悟だ。では、早速儀式に移ろうか。




(・・・・・・結局、お前は誰なんだ?)




 その問いかけに、声が静かに嗤った気がした。






――― ”光ヲ喰ラウ者” そう呼ばれている。












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