表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
語られぬ者たちのサーガ  作者: 武田コウ
35/46

拳と刃 2

(・・・おかしい、視界は潰したはず・・・・・・何故まだ戦える?)


 闇色の男は訝しんだ。


 目の前の緋色の鬼は、確実に両目が潰れている。視界が塞がれたこの状況で、何故か男の攻撃が回避されはじめているのだ。


 攻撃が当たらないという事実に、男はわずかに苛立ちながら刃を振るう。高速で打ち込まれる剣撃の嵐。しかし致命傷には至らない。すべては躱しきれないまでも、その刃は皮膚を裂くにとどまっていた。


 男は苛立ち叫ぶ。


「ふざけるな!! 視界を奪われて何故先程より動きが良くなる!? そんな馬鹿げた事があってなるものか!」


 怒りの声をあげながら、男は全体重を込めた渾身の一撃を繰り出す。


 真っ直ぐに刃を前に押し出した、シンプルな突きの攻撃。必殺の威力を秘めたその一撃は、しかし怒りのため大ぶりになっており、回避するのは容易だった。


 漆黒の刃を躱し、一気に距離を詰める鬼。すっと前に伸ばした巨大な右手で、闇色の男の頭をむんずと掴んだ。


「・・・・・・やっと捕まえた」


 そしてゆっくりと開かれる両目。


 先程切り裂かれた筈のその両目はすでに再生しており、ギョロリと動いた目玉が男を視界に捉えた。


 鬼の怪力ならば、人の頭程度握りつぶす事は可能だ。これで勝負ありだと男の頭を捉えた手に力を込め・・・・・・そこで、男が嗤っていることに気がついた。


 次の瞬間、腹に激痛が走る。


 視線を下げると、男が纏っていた闇色のオーラが質量を持って、鬼の腹を突き破っているのが見えた。


「ふふ・・・勝ったと思ったか? 甘いな東の地の化け物よ」


 男を覆うオーラがゆらりと揺らぐ。


 再びの激痛。


 槍のように変形した、質量を持った闇色のオーラが鬼の体に穴を穿つ。口から大量に吹き出る鮮血。勝ちを確信した闇色の男。しかし一つだけ誤算があった。


 穴だらけになりながら、死の縁のギリギリの所でそれでも鬼は、男の顔を掴んだ手は離さなかった。


 彼の脳裏に浮かぶのは、目の前で惨殺された猫族の友の姿・・・・・・。


(どうせ死ぬのなら、目の前のコイツも道連れだ・・・)


 ギリギリと手に最後の力を込める。男は鬱陶しそうに手にした漆黒の刃で鬼の腹を斬り付けた。凄まじい切れ味の斬撃は、分厚い鬼の皮膚を容易に切り裂いた。


 それが致命傷である事は鬼自身にも分かっていた。だが、それが何の問題になるというのだろう。すでに先程、死ぬ覚悟など済ませている。


 ならばやることは変わらない。


 鬼は最後の力を振り絞り・・・・・・。













 男の頭蓋を砕き割った。










  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ