女帝の策略 3
クラーラ・モーントシャイン・グランツ。
グランツ帝国の最高権力者、麗しき女帝の出現に二人は絶句する。先に動いたのはローズ、騎士として王国の政に関わってきた彼は、反射的にその場で膝をつく。それに続いてアリシアも慌ててそれにならった。
傅く二人を見て、クラーラは少し愉快そうに目を細める。
「よい、二人とも面を上げよ」
なおも頭を下げたままの二人を見て、女帝はニヤリとその唇をめくれ上がらせた。
「ふふ・・・古びた風習だな。良い、先代の皇帝ならばその姿勢は美徳とされただろうが・・・・・・生憎と妾は古くさいだけで何の役にも立たないものは大嫌いだ。面を上げよ二人とも、もう一度は言わんぞ?」
女帝の言葉に静かに顔を上げる二人。緊張した面持ちの二人を見て、女帝は愉快そうに高笑いすると、小部屋に備え付けられた簡素な椅子に、しだれかかるようにして行儀悪く腰掛けた。
「陛下、お行儀が悪うございますぞ」
クラーラのだらしのない姿に、隣で控えていた老兵、レイ・ヴァハフント将軍は、その眉間にしわを寄せてたしなめる。
「うるさいぞ将軍、お前は妾の爺やか?」
面倒くさそうにそう言って将軍を黙らせる。クラーラはその姿勢のまま、未だに固まっている二人に話しかけた。
「さて、何であったか・・・・・・そうそう、先程アリシア嬢が面白い考察をしていたようじゃな? 申してみよ」
「・・・・・・城の調度品を質素にしても舐められないほど、貴族をコントロールできているのかと考えました」
「なるほど、そう考えるのは道理じゃの。だが答えは否だ。そも、この国の貴族制度は貴様らフスティシア王国とは根本から異なる」
その答えというよりも、二人がフスティシア王国からやってきたという事がすでに知られていることに驚愕するローズ。
確かに入国審査時にそれを伝えはした、調べようと思えば調べられはするだろう。
問題はそのスピード。
ローズたちがこの城にやってきたのは本当に偶然だ。そしてこの城にやってきてからまだ時はそんなにたっていない・・・。まるで入国時から二人の動向がずっと追われていたかのような、そんな感覚に陥る。
そんなローズを見て、麗しき女帝はその顔に意地の悪い笑みを浮かべた。
「甘いな騎士ローズ・テンタツォーネ。この国に来たときからではない、それよりもずぅっと前からお前達の事はよく知っている」
驚く二人を眺めて、女帝は愉快そうに大きく両手を広げた。まるで旧友との再開を喜ぶかのように。
「ようこそグランツ帝国へ。我々はお前達を歓迎する」
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