女帝の策略 2
案内されたのは白を基調とした、シンプルな調度品で飾られた小部屋。それはよく見れば質の良いものだとわかるが、王城の一室というには些か装飾が質素過ぎるような気もした。
パウルは二人をこの部屋に案内すると、少し待つように指示して退室してしまった。アリシアは物珍しげに部屋を見回す。
「私は王国から出たのはこれが初めてですので、故郷以外の城内を見るのはこれが初めてなのですが・・・」
なんと言ったものかと言葉を詰まらせるアリシアに、ローズは同意するように短く頷いた。
「言いたいことはわかるよレディ。確かに質は良いようだが、王城の調度品というにはあまりにも質素過ぎる・・・少し病的と感じるほどにね」
いくら王族が華美を嫌う人物であったとしても、王城を飾る調度品には相応の威厳というものが求められる。好む好まざるに関わらず、周辺貴族に舐められないための最低限の装飾というものがあるからだ。
「それほど現皇帝が力を持っている・・・という事でしょうか? 調度品をシンプルにしても周辺の貴族に馬鹿にされないような・・・圧倒的な」
真剣な顔で考察をするアリシア。そんな彼女に、ローズが何か答えようとしたその時、背後から聞き慣れない女性の声が響いた。
「面白い考察じゃな、是非続きをきかせてくれんかぇ」
声を掛けられるまで、部屋に誰かが侵入してきたことに気がつかなかった。その事実がローズを一瞬で臨戦態勢にさせた。
素早く振り返ったローズは迅速の動きで腰のレイピアに手を伸ばし・・・。
「無礼者!! 陛下の御前であるぞ!!」
いつの間にか至近距離にいた老兵が、ローズの首元に刃をあてて動きを制する。顔に深く刻まれたシワに、まばらに白くなった短髪が彼の年齢を感じさせるが、ローズを睨め付けるその双眸は、歴戦の兵士のソレであった。
「よい、刃を下げよレイ将軍。その無礼は妾が許そう」
その言葉に、将軍と呼ばれた老兵は無言で刃を納めた。
自由になったローズがそっと視線を上げると、そこにあったのは黒髪金目の妖艶な女の姿だった。
「血気盛んな配下が失礼したな客人。妾こそがグランツ帝国現皇帝、クラーラ・モーントシャイン・グランツである」




