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プリズン・ワールド  作者: 鵜図求磨理
1/1

~第一章~

習作として書き始めた掌編的なモノの一つを、連載で掲載します…。まだ最終的なラストがどういう展開になるのかは、決めていません…。ただ、ちょっと不適切な部分もあるので、近日中にそこは修正して再UPなども予定しています…。

 大戦歴15年。文明は崩壊し、世界は混沌の中にあった。人々は砂漠の中に点在する村々に城砦を築いて立て籠もって暮らしていた。城砦の外には恐ろしい拳法を使い、巨大なバイク・ダンクに乗った野盗団がうろつき、とても一人で出歩けるような場所では無かった。


 そんな世界の中の日本、かつて東京と呼ばれたエリアには、その皇居の森の中に、巨大に聳え立つ監獄が築かれ、恐ろしい治安警察がその警備を行っていた。治安警察、と名乗っているが、その実態は、この付近で最大勢力だった野党団が勝手に治安警察を名乗っているだけのものであり、彼らはパトライトを付けた白塗りのダンクに跨って棍棒やショットガンで武装し、近辺の村々から所用で出てくる村人を襲っては強盗殺人を繰り返していた。


 この監獄には先の大戦での戦犯と、彼ら治安警察が目した「罪人」達が収監されていたが、実のところ彼らの収監目的となる囚人は、その中で一人だけである。ハイエルフの幼女、シリカちゃんである。幼女というには少々年長だが、人間にして12~13歳ぐらい、だがエルフなのでその実年齢が実際に何年になるのかは誰も知らない。彼女はドラゴンを飼っていて、そのドラゴンは封印解除の呪文を行うと巨大化することもできるが、今は巨大化封じの呪いを掛けられてシリカちゃんと一緒にされて監獄に収監されていた。監獄の治安警察には、彼らに雇われた魔法使いもいたのである。


 しかし大戦、とは何だろうか? それはおいおい語ることにするが、とにかく今はこのかわいらしい囚人についてもう少し述べてみる。彼女は収監されたときに着ていた着の身着のままで収監されていた、いや、着の身着のまま、というのは正しくない。

 収監時に、穿いていたキュロットパンツを一週間ほど召し上げられ、代用の衣服を宛がわれていたが、返却されたときには、それはきれいにミシン掛けされてスカートに縫い直されていたのである。これは、監獄内での生活で彼女の行動を制限・抑制する目的であった。腰の高さのフェンスであっても、スカートとなった今のシリカちゃんには、脚を揚げられないので越えることが出来ない。そのため、彼女が日常行き来する囚人の食堂や読書室への廊下も、必ずしも鉄格子で全面を覆っておく必要はなく、腰の高さのフェンスを設けるだけで彼女は外へ出られないのである。


 この措置は、警備する治安警察にとっては、天井までの鉄格子と違い見晴らしが効くので、シリカちゃんがどこにいるか常に見張るのが容易であり、労力の省力化につながった。基本的に治安警察は野盗上がりのごろつき、怠けられるものなら怠けたい者が大半で、その為にこういう破廉恥な措置も考え出したのである。


 治安警察の署員の中にはロリコンもいたようで、彼女のトイレは寝起きする独房内に、仕切りも何もなく洋式便器だけが設置されていた。当直の看守は彼女が我慢できなくなって用を足す様を見て愉悦に浸っていたのである…!


 独房の前面は腰までの高さの鉄格子のフェンスで仕切られていた。鉄格子が天井までではないのは、脚を揚げられなくされている今のシリカちゃんを閉じ込めておくにはそれで充分だからだ。むろん、人目を絶やせばその隙にシリカちゃんは人目をはばかってフェンスを乗り越えてしまうかもしれないが、そこはそれ、24時間体制で交代で看守は見張りに就いており、隙を見せない。夜勤は大変だろうとも思われるが、彼女を愛でたいという治安警察署員は多く、交代勤務の人員充当は、むしろいつも抽選になるほど人気だった。


 シリカちゃんはなぜそんな監獄に収監されているのだろう。それはおいおい語るが、今は、ここでの彼女の生活をもう少し見てみよう。朝、食堂で食事、そのあと読書、昼食、また読書、夕食、日没には独房に戻って粗末な毛布にくるまって寝る。単調な毎日である。行動の間は常に看守に監視されており、自由はない。


 だが、彼女は看守に背を向けて読書すると見せかけて、外部への助けを求める手紙を書いていた。シャツのポケットに、召し上げられなかったペンが一本残っており、それを使っていたのである。紙は、トイレットペーパーをこっそり一枚二枚とくすねてポケットに詰め込み持ち込んでいた。

 実は、看守の多くは彼女がそんなことをしていることに気付いていたのだが、全てのものが見て見ぬふりをしていた、看守の中には、もう一歩進んで彼女に密かに内通している者もおり、シリカちゃんは、そうした数少ない看守にその手紙を託して外部へと運び出させていた。むろん、内通している看守にとってもこれは命がけである。そんな運び屋行為を看守仲間に発見されれば、気の荒い野盗上がりのこと、処刑されてしまうだろう。

 そうした内通者が誰に手紙を渡しているのか、シリカちゃんには知る由もなかったが、時々そうした内通看守が手紙に無記名やイニシャルだけ記名した返信を運び込んでくることもたまにあり、シリカちゃんは、外部に、そうした、彼女がそこに収監されていることを知る者が居るという事実に励まされて手紙を書き続けていた。


 だが、一体シリカちゃんに返信をよこす外部の人々とは誰だろう。それはおいおい語るが、今は、また夜が明けて朝日が東の空を紅に染め、シリカちゃんの独房にも光が差し込み、彼女が目を覚ます時間になったということだけが分かっている。…起き出した彼女は小用が足したかった。すると、当直の二人の看守が期待に目を輝かせてフェンスから乗り出して覗き込んでくる。これも毎朝のことであり、既に儀式のようなものだ。シリカちゃんは着衣の下を降ろし、頬を赤くしながら便器に腰を下ろした。ふう…、毎朝のことながら、これは、いつまで経っても慣れるということが無い…。

 用を足し終わったシリカちゃんは、着衣を戻すと、看守に、朝食の準備は出来ているのかと話しかけた。できてるぜ、と看守は答え、独房のフェンスのドアが開き、シリカちゃんは食堂へ向かって、二人の看守に警護されながら食道に向けて廊下をゆっくりと歩いて行った…。

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