表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファイエルベルクの祈祷師《2》  作者: 小野田リス
14/20

第六の書と花冠の乙女

大きな樫の木のテーブルを囲み、司祭長ミゲル、副司祭長、そしてサクとフェリスの4人は、まんじりともせず事の成り行きを待っていた。そこから少し離れたベンチには、神書ハイリゲを盗み出したヨルクと、彼を挟むように2人の司祭が腰かけている。


聖峰ホーエンベルク山が白く輝き始めた。まもなくこの部屋にも、朝の光が差し込んでくることだろう……



……昨夜、執務室を訪れたフェリスは、時を忘れて司祭長ミゲルと二人と話し込んでいたが、その部屋へ、夜半過ぎに副司祭長と2人の若い司祭に囲まれるようにして連れられてきたヨルクが入って来た。


そのことに驚く間もなく、直後にサクが長身の”司祭”を伴って現れた。


濃緑色の司祭服をまとっていたが、足早に近づいてくるその人が誰なのか、フェリスにはすぐ分かった。


『クリス!』


椅子から立ち上がると同時に、フェリスはその人の腕の中にいた。『ごめんなさい』と小さく謝りながら額を胸に当てると、それに応えるようにクリスも濃紺色の外套に回す腕にぎゅっと力を込めた。


暖かい……


自分の浅はかな振る舞いのせいで銀刃に貫かれるやも知なかったその人が、生きて目の前にいる……互いに身を案じていた二人は、それぞれ無事でいる事を確かめるように互いの温もりを確かめ合った。


『ほっほっほ!お熱いことだのう。見てるこっちまでドキドキしちゃうぞぃ!』


ミゲルの愉しげな笑い声で我に返ったフェリスは、頬を真っ赤にしてパッと顔を上げる。が、かりそめの”司祭”様は、両腕を背中に回したままだ。ふと、自分も濃緑色の胸元あたりをきゅっと掴んでいたことに気づき、慌ててその手を開いてぐいぐいと厚い胸板を押し返した。


『あの、クリス……大丈夫で本当に良かった……の、だけど、そろそろ……』


『まだ”大丈夫”じゃない。』


低い声でそう言うと、目を伏せたままベンチに腰掛けているヨルクへと鋭い眼光を向けた。


『司祭長、そいつは盗み出した神書ハイリゲを、ランチェスタの何某かに渡すつもりだ。』


クリスの突き刺さるような言葉と眼差しを受け、ヨルクの伏せていた瞼がわずかに震えた。


『ヨルク、このまま黙っていても意味がありませんよ。』


副司祭長ミーシャは口元の笑みを絶やすことなく、一言も発しない司祭を見つめる。


『第六の書が、この国だけではなく大陸中の人々の安寧を司るものだということを……おまえは知っているね?』


同じような穏やかな口調で、司祭長もヨルクの言葉を促した……



……どうやって神書ハイリゲを持ち出したのか、侵入者をいつ招き入れたのか、そしてどこに匿っているのかについては告白したが、彼は最も肝要な部分……第六の書を盗み出した理由や、遣いの者の手を通してランチェスタ王国の誰に渡そうとしているのかについては、一切、語らなかった。


それにしても……


ファイエルベルク神殿の司祭ともあろう人が、ランチェスタの隠密と繋がっていたなんて……フェリスは改めて、西の隣国ランチェスタがいかに不穏な状況にあるのかを思い知らされる。


しかもその隠密は、クリスやサクの話によると”兄”の婚約者であるパラサティナの側付きの侍女、ウルケだという。


そのウルケも、まもなくローレルとハナ、そしてクリスによって捉えられるだろう……


二人の養い親は、空が白み始めた頃、執務室に現れた。


フェリスもクリスも、そしてそこにサクがいることにも安堵する二人だったが……まだ神書ハイリゲが戻っていないことを司祭長から聞き、取り戻すために協力することになったのだ。


ローレルとハナ、さらにクリスも加わり、神殿内の誰も危険な目に遭わないように、安全に取り返すための策を立てていた。


……ハナも先生も……クリスも、無事だろうか。


そしてウルケは、どうしてパルを裏切るようなことをするのだろうか。


朝日を受けた山の稜線は、白く浮き立つように徐々に眩しさを増し、やがてその反射光が執務室にも届き始めた。窓からの明るみに片頬を照らされ、フェリスは外を見ずともついに朝を迎えたことを知る。


「フェリス……心配ないよ。あの3人が相手じゃ、剣を持っていようが呪詛を使おうが、到底敵わない。」


一睡もしなかったためか、目元を赤くしている女祈祷師に、サクが労わるように声をかけた。


「……ありがとう、サク。そうね、先生もハナもクリスも、とても強いのだもの。だけど……」


フェリスは小さく息を吐く。


「……神書ハイリゲを欲しているのは、きっとランチェスタの呪術師なのでしょうね。」


司祭長様は、盗まれた第六の書は大陸中の人々を守るものだとおっしゃった。そんな大切な書物を利用して、呪術師かれらが成し遂げようとしていることは何なのだろう。


昨年、東の隣国であるデーネルラント王国で遭遇した呪術師の、人を人とも思わない呪詛の数々を目の当たりにしたフェリスは、胸の内に黒々とした靄のようなものが広がっていくのを抑えることはできなかった。


それを払いたい……払えるような気がして、窓から差し込む光へと顔を向ける。


聖峰ホーエンベルクの裾野に連なる、あの山の向こう側にあるのはランチェスタ王国……わずかな記憶の端に残るのみではあるが、そこは間違いなくフェリスの故郷なのだ。


思いつめたように西向きの窓へと顔を向ける彼女を、司祭長と副司祭長は静かな眼差しで見守っていた。


「フェリス……おまえは神書ハイリゲ第六の書にどんなことが書かれているのか、知っているかね?」


穏やかで、心に寄り添うように響く低い声色は、まるで夏至のお祭で捧げられる祈りの始まりのようだ……ふいにそんな声で問われ、フェリスはゆっくりと司祭長ミゲルへと顔を向ける。


「いえ、詳しくは存じませんわ……たしか、”山の神様の奇跡”のことが書かれているとか。」


「では、山の神様の奇跡とは何だったのか、おまえにも少し伝えておかねばね……。」


ヒュッと息を飲む音は、それまで身じろぎひとつしなかったヨルクが発したものだ。


「……司祭長様、ここで話すべきことでは……」


そう言って、捕らえられている司祭は伏せていた目を見開き、サク、そしてフェリスへと狼狽えるように交互に視線を投げた。


副司祭長が、ゆっくりと口を開く。


「ヨルク、ここにいるサクはエメロンの血筋の者です。フェリスについても、彼女はランチェスタに深い関わりのある人なのですよ。」


ますます怪訝な表情になる司祭に向かって『あなたが今さら案ずることではありません』と、司祭長の話を静かに聞くようにたしなめた。


司祭長ミゲルは、遠くに響く低い鐘の音を思わせるような声で語り始めた。


神書ハイリゲは全部で6つの書からなる、この国の聖典とも言える書物であること。


そして第六の書は、特に”山の神の奇跡”について、具体的に何が起こったのかが詳細に描かれているものだと説明した。


「400年ほど前に、大陸全土を巻き込んだ大きな戦については知っているね?」


「ええ、大陸統一戦争と呼ばれているもののことですわね。」


古代エメロニアによる諸国制圧が発端となり、その戦で暗躍した呪術師たちの呪詛により争いは激化し、また病が広がり、収束するまで10年もかかったのだ。その間、膨大な数の命が犠牲になったと聞く。グロースフェルトでも多くの領民がエメロニアの侵攻に巻き込まれ、その骸はお城を取り囲む二重城壁リングの中に埋葬されているとクリスが話していた。


「その古代エメロニアの宰相が取り立てた呪術師は、妖の力や呪詛を使い、いつしかその魂に入り込んだのだよ……いうなれば、古代エメロニアを率いたのはその宰相ではなく、呪術師だったということだ。」


「呪術師が……?」


見開いた目の中にある瑠璃色の虹彩をしっかり捉え、ミゲルは大きく頷いた。


突出した妖の力と知恵を持っていたその呪術師は、次々と新しい呪詛を生み出し、人々を妖と欺瞞、そして病にかけていき……ついには、他人の魂と同化する術までも身につけたのだ。


「その呪術師は、神にでもなった気分だったのだろうねぇ……彼はここ、ホーエンベルク神殿にまでその手を伸ばしてきたのだよ。」


かつて、ホーエンベルク山を聖峰として崇め、そこに神が住まうと信じていたのはファイエルベルクの人々だけではなかった。その信仰は古くから大陸に根付いていた土着の宗教だったと言える。というのも、人々の暮らしを潤す川のほとんどが、ここ、ホーエンベルク山を中心とした山岳地帯を水源とするものだったからと考えられる。水は、命に関わる大切なものだ。人は誰に教わるでもなく、その水の源への敬意を覚えたのであろう。


そんな自然な敬畏の念すらも、人心を惑わし我が身に集めんとしていた呪術師にとっては邪魔なものに感じたのかも知れない。その矛先は、ついに山の神へと向けられた。


「しかし同じ頃……その呪術師と里を同じくする者たちが、イールズ・エメロニア帝国からこの国に入っていたんだ。彼の暴走を止めるために……」


宰相と同化した呪術師は、自身の血を用いて呪詛を生み出していた。


その血を浄化できるのは、同じ里、同じ血筋に生まれた、同じように特別な血を持つ者……


「つまり、”花冠の乙女”だ。」


司祭長の口から出た思わぬ言葉に、フェリスは目を丸くする。


「同じ里ということは……花冠の乙女って……」


それまで黙って耳を傾けていたサクも、驚きを隠せないといった様子で思わず心の中に浮かんだことを口にした。


それを肯定するように、ミゲルとミーシャはゆっくりと目を伏せ、再び開いた。


「宰相と成り変わった呪術師の力を抑えたのは、同じ里に生まれた呪術師の娘だったのだよ。」


「そして、ここは大陸の水源です。」


副司祭長ミーシャが話の続きを受け、彼女の特徴でもあるゆっくりとした口調で語り始めた。


ファイエルベルク国に入った呪術師たちは、大陸を裏切りと死の恐怖で支配しつつあった同郷の男の力を削ぐために、彼の血を浄化する力を持つ娘と共にホーエンベルク神殿を訪れた。


その娘の血を大陸すべての水の源とも言えるホーエンベルク山に捧げるため、彼女は、共に来た呪術師と神殿の司祭たち、合わせて6名の仲間を伴って山の頂を目指したのだった……。


「……捧げられた彼女の血により、大陸全土の人々が癒されたのです。彼女の浄めの力により、やがてエメロニアの宰相となった呪術師が作り出す呪詛は、人々に効かなくなりました……その力は、意味のないものになっていったのです。」


フェリスは、言葉のひとつひとつを、ミーシャの口調に合わせてゆっくりと胸に収めていく……目を伏せると、礼拝堂の正面にかけられているタペストリーが思い出される。あれは、神書ハイリゲ第六の書を題材にして作られたものだったのだ。


また、毎年夏至のお祭で行われるお芝居も、このことを描いたものだったということだ。


呪術師の娘の血によって救われた人々が、後々まで伝えたかった感謝と喜びは、こうやって今に残っている……。


さらに、副司祭長の話は続く。


「そして、ファイエルベルクに来た呪術師たちは、この国の祈祷師の始まりでもあるのです。」


浄めの血の力は、水源地であるファイエルベルクの水に強く顕れた。そして、この国の中でも最も高い場所にあるこの神殿に湧き出る水には、特に強い力が宿っている。


「ここの水で洗礼を受けた呪術師や司祭たちにも、娘の浄めの力が宿るようになりました。」


その力を得た司祭や呪術師たちは、山を降り、ホーエンベルク山を水源とする水が届かぬ地に赴いた。そうやって大陸中をくまなく巡り、呪詛を解き、エメロニアの偽の”宰相”に与していた他の呪術師たちの力を封じていったという。


ミーシャの話はそこで終えられた。


《 悪しきもの宿りし魂に寄りて さだめて光の血 生まれ落つる 》


ふいに聞こえてきたのは、司祭長の声。


これまで聞いたことのない音の連なり……異国の言葉だろうか。ミゲルとミーシャを交互に見るが、彼らはただ、にっこりと笑みを深めている。


どういう意味なのか尋ねようとした、その時。


コンコンという短いノックに続いて扉が大きく開かれた。


そこにはハナとローレル、そして、二人に前後を挟まれるようにしてもう一人……



……憔悴しきった表情のウルケが立ちつくしていた。


**


ローレルとハナに連れられて執務室に現れたウルケには、初めて会った時のような溌剌とした印象はもはやどこにも感じられなかった。


「司祭長、こいつがランチェスタからの隠密だ。」


ローレルに腕を取られ、部屋の中へと入ってきた彼女の服は土で汚れ、こめかみから後頭部へと撫でつけるように結っていたであろう髪はところどころ乱れ、灰色の目は伏せがちになっている……。


「クリスはどうしたの?」


一緒に行動していたはずのその人が戻っていないことを不審に思い、サクが訊ねた。


「あー、いろいろあって……先に帰ってもらった。」


ウーフェル荘で待つサイラスやラドルにも、いち早く皆の無事と事の次第を伝えてもらわねばならない。また、リヴァージュ荘にも伝えるべきことがある。


「ウルケ……怪我をしているのね……」


彼女の青白い右頬を赤く伝うものに気づき、フェリスはポケットからハンカチを取り出して立ち上がった。


それを押し留めるようにすっと片手を伸ばし、サクが代わりに手当てを始める。


「……これ、矢傷だよね。」


訝しむように訊ねる助手に、『まぁそれについては後で詳しく……』と濁すように返した後、ローレルは手にしていた物を司祭長の前にそっと置いた。


包まれていた布を解くと、一見しただけで時を重ねていることが分かるほど、古色蒼然とした書物がそこにあった。


これが、神書ハイリゲ第六の書……


黒い堅表紙には、表となる部分と背表紙のところに、金色の文字で何か書かれている。フェリスが見たこともない文字だ。


それを大事そうに両手に取り、ゆっくりとページをめくる……ミゲルは、しばらくそうやって数頁ほど黙読した後、目を細めて大柄の祈祷師を見上げ『ありがとう』と礼を述べた。


司祭長の手に戻った第六の書は、その後、ヨルクの両側に腰掛けていた二人の若い司祭に手渡された。彼らは、それを再び書庫に戻すべく執務室を出て行った。


傷口を丁寧に拭われたウルケに、司祭長はヨルクの隣へ座るようにと促す。


「さて、いろいろと訊ねたいこともあるけど……きっと何も答えてはくれないだろうねぇ。」


司祭長ミゲルは、柔和な笑みを崩さず二人の”罪人”に向き合った。


「そちらのお嬢さんには、すぐにでもファイエルベルク自警団と一緒に国許に帰っていただこう。間もなくここに到着すると思うんだが……」


ウルケは、思ってもみなかった”処分”に驚き、目を見開いた。


「私は……このまま国に戻されるのですか?」


「うむ、”決まり”だからね。ここに残すわけにはいかないし……かといって、ピエル=バートルの家には戻せないしねぇ。いま帰ったら、きみ、えらいことになるよ。」


ミゲルは眉尻を少し下げ、『あの”払い石”の家にはとんでもないじゃじゃ馬がおるようだねぇ』と嘆息気味に呟いた。


「それと、ここからが肝心なことなんだが……関所までは自警団が一緒について行くのだけど、そこから先は自分で何とかしなくちゃならないよ。きみは”あの”バートル家を裏切ったうえ、持ち帰ろうとしていた神書ハイリゲだってもう手元にないのだから……私が言っていることの意味、分かるね?」


少し低い声色でそう告げられたウルケは、さらに顔を青白くして顎を小さく引いた。


「自分の身は、自分で守りなさい。それが、きみの受けるべき戒めです。」


それと……と、ミゲルは次に、ウルケの隣で相変わらず目を伏せたまま腰掛けている司祭ヨルクの方へと顔を向ける。


「ヨルク、おまえには”名”を返そう。」


その言葉に弾かれるように顔を上げ、ヨルクは思わずといったふうに立ち上がった。


「そ……そんな……っ」


動揺を隠せない長身の司祭に『座りなさい』と小さく声をかけ、ミーシャは、丁寧に重ねられ綴じられた手元の紙の束の中から、1枚だけ引き抜くようにして取り出した。


「ヨルク=ファン=ポイング……これまでご苦労様でした。」


副司祭長はその黄ばんだ紙に記されている名を読み上げた後、”元”司祭の前へとそっと差し出した。


ヨルクは言葉もなくその紙を受け取ったが、やがて持つ手が小刻みに震え始める……。


「私を……私をここで罰してください!拘留されても構いません!そうだ、すべてを……すべてをお話しします!ですから、それだけはご容赦を!!」


ミーシャは相変わらず穏やかに微笑みながら、その首を横に振った。


「何を告白しようが、あなたの”名”は、もうあなたのものですよ。」


司祭長ミゲルへも縋るような目を向けるが、同じように頭を左右に振るだけだ。


司祭が名を返される……フェリスが知る限り、そのような話は聞いたことがない。しかしそれがどういうことなのか、あらかた察しはつく。聖職を解かれた人を、周りはどういう目で見るのだろう。そんな人が、これから外の世界で生きて行くのはどれほど大変か……


「ヨルク……これから世の中がどうなるのか、しっかりとその目で見ていなさい。」


力なく項垂れていた元司祭は、遠くに響く鐘の音を思わせる司祭長の厳かな声に促されるように、再びゆっくりと顔を上げる。


「それがおまえの願いだったね?」


世界に巻き起こる動乱をこの目で見、歴史の証言者となる……そんな、胸の奥に隠していた願望が見透かされているような言葉をかけられ、ヨルクは小さく息を飲む。


「おまえや……そちらのお嬢さんが手を貸そうとしていた者は、神書ハイリゲを手に入れようが入れまいが、自らのはかりごとに関わった者をそのままにしておくような人間ではない。」


ウルケは、伏せ気味だった目をハッと見開いた。その視線もしっかりと受け止め、司祭長は続ける。


「そんな者がさらに強大な力を手にしたらどうなるのか。おまえたちは、意を通すためなら人の命をも躊躇わず奪うような者のために神書ハイリゲを持ち出したのだ。それがどういうことなのか、己の良心に問いかけながら生きていきなさい。」


これまで聞いたこともないような厳しい口調だ……


フェリスは、改めて司祭長ミゲルへと瑠璃色の瞳を向けた。決して怖い顔をしているわけではないのに、その表情を見ただけで身の引き締まる思いがする。


やがて、扉の向こうに大勢の人が近づく足音が聞こえ、自警団の面々が執務室に現れた。その中には、数ヶ月前にフェリスが挙式を執り行ったペテルの姿もある。


ウルケは自警団に連れ出され、ヨルクも神殿を出る用意のため、副司祭長とサクに付き添われて部屋を出て行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ