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第5話

「異世界のお兄さ〜ん!」

床を直して部屋を出た俺にクリアが抱きついてきた。

「ホントにありがとうございました!」

「人を部屋に投げといてよく言うぜ……。」

ギクリとなるが笑って誤魔化そうとするクリアの頰をつまむ。

「い、痛いです……痛いです……。」

「床に頭から突っ込んだ俺はもっと痛かったんだが?」

「あれは不可効力じゃないですか!」

こいつ、不可効力の意味わかってんのか?

ジタバタする彼女を見て、もう少しやってみたい気もしたが、周りからの視線が痛かったので離した。

「とりあえず、シェネルには旅のこと言うなよ?宴で言うみたいだから。」

「私に何か用ですか?」

後ろからの突然の声に俺たちはビクッッとなった。

なんでこいつはこんなアニメ的な感じで現れるんだ……。

「あーいや……別に何も……。」

「何隠してるんですか?行ってくださいよぉ〜。」

ズイズイと顔を寄せてくる彼女に俺は焦り始める。クリアの方に目をやるが、いつのまにか逃げていた。

とりあえず後で処刑決定だ。

「あれ?汗かいてますけど大丈夫ですかぁ?」

シェネルの顔がニヤニヤし始める。

(こいつ……)

「あぁ、もしかして私に惚れちゃったんですかぁ?」

「…………あぁ、そうだよ。」

俺の発言が予想外だったのか、シェネルはキョトンとなった。

「なんかお前のこと考えると胸が痛くて……クリアに相談してたんだよ…………。」

「はぃ!?え……?」

状況を理解できないのかあたふたするシェネル。さっきまで逆の立場だった気がするのだが……。

俺はシェネルの両肩をガシッと掴んだ。その瞬間ビクッッと飛び上がるシェネルは顔が真っ赤だ。

さて、今から何を言えばオチになるだろうか。

さすがに本当に好きという設定になるのはまずいだろう。

「お前の胸を触った時から、お前のことを考えると興奮が……」

そこまで言うと顔を真っ赤にしたシェネルが俺に飛びかかる。何故涙目なのかはわからないが。

「はっはーーー!!甘いな小娘!」

「死ね死ね死ね死ね死ねぇぇぇぇぇええぇぇえぇぇ!!!!!」

ヤケクソになって襲いかかってくるシェネルの攻撃を俺はひらりひらりとかわしていく。それにイラついてかいっそうヤケクソになる彼女。

俺は彼女の蹴り上げた足を掴むとぶら下げた。

「ちょ!何すんの!離しなさい!!」

「いやいやこっちの方がお似合いですよ?」

俺は笑いながら宙づり状態の彼女に目をやる。

「そういやシェネル、さっきからパンツ見えてるけどいいのか?」

俺の言葉に反応してパンツを隠そうとするが……隠せてない……。

真っ赤な顔のシェネルは今にも泣き出しそうだった。

「…………。」

少々罪悪感を感じた俺は彼女を頭から落とした。

「…………もう、お嫁に行けない……………。」

「胸揉まれて、パンツ間近で見られたくらいで何言ってんだよ。」

まだ飛びかかってくるかと思ったがその元気ももうないようだ。ただ「グスン」と涙ぐむだけだった。

「はぁ……悪かったよ。ちょっとからかいすぎた。」

コクリと頷くと、シェネルはよろよろとその場を去っていった。

俺が完全に悪役みたいになってる気もするがまぁこの際気にしないでおこう。問題はまだ残っているのだから。

「なぁ、クリア……」

本人は物陰に隠れていたつもりらしいが、青色の髪が丸見えだ。

俺は片手で彼女の頭を掴むと、ヒョイと持ち上げた。

「いーーーたい!痛い痛い!!!頭割れる!死ぬ死ぬ死ぬ!!!」

「この際もう楽になっちゃえよ。」

俺はニコニコしながらさらに手に力を加えた。

「きやぁうぁぁわぁああぁぁ!!!………………」

あまりの恐怖に硬直……いや気絶したみたいだ。俺はそのままの状態で近くにいた女性にクリアを渡した。

………………………………


日がだいぶ落ちてきて外がだんだんうるさくなってきた。いよいよ宴が始まるみたいだ。

……あれだけ宴を楽しみにしていたシェネルはまだ部屋から出てきていないみたいだ。いや、まぁあっちも悪いところはあったと思うが……。

「仕方ないか。」

俺はとりあえず外の様子を見に行った。

「おぉー!なんか昼間とは全く違うなっっ!!」

「上から見てみるか夏?」

突如俺の横に現れたレッドドラゴンにまた俺は腰を抜かす。こいつ、テレポートでもできるのか……。

「あ……あぁ。乗せてくれ。」

俺がそう言うとドラゴンはヒョイと俺を背中に乗せ、ゆっくり飛び始めた。

「お前、シェネル泣かせたろ?」

ギクリとなる俺にドラゴンは大きくため息をついた。

「やっぱりな。あいつ、ああ見えて繊細な子だからな……。」

「……そんな話するために俺を乗せたのかよ?」

「いや……俺もお前のことちょっと虐めたくてな。」

そう言うとドラゴンは身体を一回転して俺を落とそうとする。

「ちょちょちょちょちょいまてーい!!!俺が死んだらどうする気だ!」

「心配しなくても空中でキャッチしてやるから安心しろ!」

ドラゴンは俺の顔を見るとニヤリと笑う。

「やーーめーーろーー!!!俺はそんなやられ役になった覚えはねぇぇぇぇええぇぇ!!!!」

「じゃあ今からそうなればよくねーか?」

多分このドラゴンは俺以上にドSだ。頭にファイヤーボールでもやってやろうかと思ったが、それは自滅行為になる。

そういうわけで、俺はドSドラゴンによる空中遊泳をとことん受けたのであった。

「……もう無理。」

「すまん、やりすぎた。」

俺の今にも吐きそうな顔を見ながら、ドラゴンがそう言う。かなり楽しそうだが……。

「ほらよ、下に着いたぜ。」

俺はヨロヨロとドラゴンから降り、その場に倒れこんだ。

「お……覚えとけよ、この…………。」

これ以上顔を上げるのが困難だった俺はその場にうつ伏せになった。

「おやおや、レッドドラゴンに遊ばれたのかい?」

そう近寄ってきたのは村長だった。

俺は顔を上げることができなかったので、親指でサインを出した。

「そうかそうか、よくやったねレッドドラゴン。」

村長はドラゴンの頭を撫でた。俺は多分この村でかなり嫌われているのかもしれない……。


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