7話:バレてるってマジすか
「まぁ、お前らも知っての通りそのアビリティリングはこの学校ないし、アビリティフィールドの貼られた場所でその効果を発揮する。他の用途は身分証明書だな。」
先生が説明を始めた。今やこのリングでの身分証明はさほど珍しいものではないので、抵抗感もないであろう。
「この学校には生徒会戦挙、もしくは演習などでアビリティフィールドを発生させる装置がある。それを発動させたら、それぞれの適正された能力をそのアビリティリングが発生させる。そして、戦挙で勝ち残った5人が会長、副会長、書記、庶務、会計というように生徒会役員となる。これに学年は関係などない。勝てばいい。昨年では、5人組のパーティを組んだ奴が優勝していた。」
…百合姉さんのことか。
確かにこの戦挙とやらは5人が生徒会役員として選出されるならば信頼することのできる5人で組むというのが得策であろう。
となると現段階では、ソフィーや紅葉当たりであろうか?俺が気楽に声をかけられるのは。
まぁ彼女達が組んでくれるかというのはまた別の話なのだが…
「あ、大事なこと言い忘れてた。」
その発言に教室の生徒達が再び先生の元へと意識を向ける。
「能力の発動するか否かは本人の頑張り次第だから。まぁ頑張れ。でも、Aクラスの奴らは1週間もあれば能力を発動させるレベルにはなるだろうな。今日から毎日放課後能力を発動させるための演習があるから頑張れや。」
その発言に一同が緊張感を覚えた。能力を発動出来ない可能性がある。それはこの戦挙という場において完全な不利であることを示しているからである。
しかし、それよりも俺が危惧していたのは俺が能力を発動させる事が出来るかである。俺には元々Aクラスに見合った能力などはない。そんな俺が満足にやれるのであろうか?不安である。
「あと、能力によるダメージだけどアビリティフィールド外に出ればそのダメージとか傷とかは一切無くなるから安心していいぞ。でも、戦挙中の場合はフィールド外に出ることは棄権するということを意味しているから注意な。」
なるほど…
しかし、それを逆に考えてみるとフィールド内ではダメージを負うということであろう。なんとも恐ろしい。
しかし、生徒会役員という立場は優遇されてしかるべきなのであろう。なんせ、学校を潰すことすら出来るのだから…
「あと、生徒会戦挙は1ヶ月後だ。時間は正直全くねえから無理して出ようとか考えなくていいぞ〜。2年生からでも遅くはないしな。以上だ。何か質問はあるか?」
先生が一通り説明を終えたらしい。質問する人はいないらしく、挨拶を済ませて朝礼が終わる。俺は先生に呼び出されていたのを思い出して生徒指導室へと向かう。
しかし、この学校にはとても驚かされる。校舎がとてつもなく広い。ザ、お嬢様校って感じである。
生徒指導室と書かれた教室の前まで辿り着き、一呼吸おいてノックをする。
「朝顔先生いらっしゃいますか?」
それを聞いて先生は、
「おう。入れ。」
との事なので部屋に入る。
中に入って驚愕した。なんというか、生徒指導室のイメージとかけ離れた部屋だからだ。
椅子はパイプ椅子とかではなくソファになっており、高そうな絵画やティーセットなども置いてある。しかし、机などは無かった。ソファが対面になっているだけである。
本当にこんなところで指導なんぞ出来るのであろうか?と疑問に感じてしまう。
先生に先生の座っているソファの前まで来るように促されて前まで行く。先生の身長だと何故か子供が座っているようにしか見えなく、おかしくなって笑そうになるが多分笑えば殺されるので耐える。
先生の前まで来た。その直後である。
「ふぇっ」
変な声が俺の口から漏れた。とても驚いた。
変な声が漏れたことにではない。そんなことどうでもいい。いや、どうでも良くないが今はどうでも良い。
何故なら…先生の前に立った直後に先生に股間を鷲掴みにされたからである。
一瞬何が起こっているのかわからなくなり、時が止まったような気がした。
しかし、すぐさま思考回路を取り戻した。
「ぎゃあああああ!!変態!!へ、変態!!」
俺は、思いっきり叫び後方のソファへと飛び移った。
もう、お嫁に行けない…
俺がシクシクと泣いていると…
「あははは!!」
この鬼教師は爆笑していた。
「鬼!悪魔!朝顔!!」
「おいおい、そのラインナップに私入れたら鬼と悪魔に失礼だろ。」
「お前は一体どこの次元の存在だよ!!」
「え?3次元だけど?」
「んなもんわかっとるは!!このセクハラ教師!」
「セクハラ??女子校に男のくせに入学して可愛い子達とハァハァしようとしていた何処かさんとどっちがセクハラなのかしら。」
「ハァハァなどしようとしとらんは!!」
「あ、今の発言アウト〜!ぶぶー!自分が男と認めちゃいました〜通報しまーす。」
「ごめんなさい。本当ごめんなさい。マジで許してください。」
必死に土下座をして謝った。混乱していたとはいえ、浅はかな発言をしてしまったと反省をする。
しかし、この人は最初から気付いていたであろう。
「にしても、面白い奴が入ったなぁ今年は。」
先生は今だに爆笑をしていた。俺も流石に疲れてきたので本題へと持っていく。
「百合姉さんから聞いたんですか?」
「うん。そうだよ。」
間髪入れずに答えた。しかし、百合姉さんも百合姉さんである。俺が男とバラしていいのか…
それとも百合姉さんの事である、この人は余程信用出来る人なのであろうか。
「でも、良いんですか?教師のあなたがこんな事知っていて。」
「ん?別にいいんじゃね?」
即答されてしまった。なるほど。分かった。この人は適当なのである。この短期間でここまでの印象を持たれる人は中々いないのではなかろうか。
「多分私が生徒会顧問ってのは知ってるよな?まぁ言ってしまえば私は百合の頼みでお前の裏口入学の手伝いしたってわけよ。」
裏口入学って…まぁ確かにそうではあるが…
「まぁ、私は誰にも言う気も無いし出来る限りお前をサポートしていくつもりではある。学校が無くなるのも嫌だしな。じゃあ授業あるから戻るな。頑張ろうぜ。」
あぁ…この先生はとてもいい人なのかもしれない。百合姉さんがこの先生に協力を仰いだのも納得してしまった。
適当に見えて実は生徒や学校の事を考えて動いてくれているのであろう。
「あ、それとお前これをいい事に生徒にセクハラすんなよ。」
「しねえよ!!」
しないよ…しないって…たぶん…
「あと、お前の股間…なかなかのものだったぜ!!」
「そんなことキラキラした目で言うんじゃねえよ!!」
ニシシと先生は笑い教室から出て行った。
「先生…あんたやっぱ最低だ…」
俺の力のない呟きがこの広い生徒指導室に吸い込まれて行った。