2話:お願いってマジすか
百合姉さんの話しによると、白百合花園女学院では生徒会長が全ての権限を握っているらしい。だから、男の俺を女と偽り入学させることも困難ではないんだとか。
「それにほら!幹って名前女の子っぽいし!それに、幹くん小さい頃から女装好きだったじゃない。可愛いし。」
いや、あのそれって…
「それって…百合姉さんが小さい時に無理矢理着せていただけじゃん…」
そうなのである。無理矢理着せてきたのである。その他、百合姉さんには色々無茶ぶりをされてきた。この人のドSっぷりには頭が上がらない。
「まぁ、とりあえず。入学してくれるよね?」
「嫌です。百合姉さんの頼みでもそれは嫌です。」
俺は即答した。
流石に女子校に男の俺が入る勇気も無ければそんな権限もない。百合姉さん曰くその辺は大丈夫なんだろうが…
「ねぇ…幹くん?」
百合姉さんが猫なで声になりながら俺の隣にすり寄ってきた。思わず緊張してしまう。
「は、はぃ!」
緊張して思わず声が裏返ってしまう。
「ダメ?」
上目遣いでそう言ってきた。これは流石に破壊力が凄すぎる。
更に百合姉さんは腕を組んできて、胸を押し当ててきた。
最早完全に、完璧に頭真っ白状態である。
「入学してくれて、ある事をしてくれたら何でもお願い叶えてあげるから。ね?」
あ、ヤバイ。
「どんなことでもいいのよ?」
その発言と同時により一層胸を押し当ててきた。
完全に頭が真っ白になってしまい、俺は頷いてしまった。
「よかったぁ!ありがとうね!それじゃあ私の方で入学手続きは済ませておくわね!」
そう言うと百合姉さんは俺から離れてもとの位置に戻った。腕にまだ胸の感触がある。
「ばっかじゃないの?気持ち悪い。」
妹の発言は無視をして百合姉さんに話しかける。
「入学したとしても、何で入学して欲しいんですか?それにして欲しい事って…」
きっと、何か理由があるのであろう。その理由を問う。それにして欲しい事って…
「それはね…」
百合姉さんは少し顔を曇らせる。
「貴方にこの学校の生徒会長になって欲しいのよ。」
えーと…どういうことだろうか?生徒会長…それって最上学年しかなれなくね?ってか無理じゃね?
「この学校は生徒会選挙ならぬ生徒会戦挙で生徒会長が決まるの。1年生〜3年生まで全学年参加するわ。入学した生徒には指輪が配られるの。その指輪は学校内に限りそれぞれの能力に見合った異能を使える力を持つの。それを駆使して戦って優勝した人が生徒会長になれるの。その、戦いで貴方に勝ってほしいの。」
えーと…
「百合姉さんの言葉は信用したいと思いたいんですが急に異能とかって言われましても…第一それに能力に見合った異能ならバカな俺より適任な人がいるんじゃ…それに何で俺に生徒会長になって欲しいんですか?」
俺は率直な感想を述べる。それに何で俺に生徒会長になって欲しいのか…謎である。
「私は生徒会長よね?その私ならわかるの。幹くんの潜在能力は素晴らしいものだって。
生徒会長になって欲しい理由…ね。前回の戦挙で私と2年生の子の一騎打ちになったの辛うじて私は勝つことが出来たのだけれど、彼女は強かったわ。この学校の生徒会長というのは学校の全ての権限を握っているの。私が幹くんを女と偽り入学させる事が出来るようにね。
けれど彼女は、その権限を使って学校ごと無くそうとしてるの。理由はわからないのだけれど…そんなのは嫌なの。多くの子が学校を愛しているのだから。それを貴方に止めて欲しいの。
お願い幹くん。どうか力を貸してください。」
百合姉さんは頭を下げてお願いきてきた。その目には、少し涙が滲んでいるように見えた。
仕方ない…
「わかりました。やれるだけやって見ます。」
俺は言ってしまった。無責任かも知れないが好きな人をこれ以上苦しませたくない。
「本当!?ありがとう!そして、ごめんなさい。私は、3年生で今年卒業してしまうから頼れるのは幹くんしかいないの。どうかお願いします。」
こんな弱気な百合姉さんを見るのは初めてかもしれない。
色々おかしいかもしれないが、好きな人のためだ。やれることはやってやりたい。そう思うのが男ってもんだろ。
この話が終わり、翌日には本当に入学手続き等が済んでいた。
俺は春野 美樹という名前で入学したらしい。制服も届いた。試しに着てみたがスカートが慣れない。スースーする。それを見て百合姉さんは可愛いと言ってくれたのだが、明らかに目が笑っていた…
月日は流れ、季節は4月。あの話からもう2ヶ月もたった。早いものだ。桜が満開になり。暖かい風が俺を包む。
「いってきます。」
俺は、本当に白百合花園女学院の1年生。春野 美樹として学校へと通い出す。