僅かに二酸化炭素濃度の高い気体
更科君。君は卑怯者だ。
僕は自分が人間失格とも思わないし、トカトントンなんて音は聞こえても来ない。
虚無主義なんて糞食らえだし、だからと言って自分が超人だと言う気もない。
教養に最早意味は無いとは思わないし、友人が等しく同じに見えたりしない。
言葉をこねくり回してるのを見たってどうも思わない。
でも君は違う。何にも価値を感じていないような目をしている。
何時でもまるで酸素を吸い込むように自殺をしてしまうような危うさを持っている。
何処でもつまり二酸化炭素を吐き出すように強姦をしてしまうほどに険しさを失っている。
嗚呼何ということだ。まだ何故分かってくれないのか。
まったく出来ることなら僕が殺してやりたいものだ。
不甲斐ない、最近の君はずっとそうだ。
下らない想像に身を浸し甘美な厭世主義に酔い、自分に酔い。
自惚れるな。君のような人間なんて掃いて捨てるほどいるんだ。
自分が特別だという幻想を捨てろ、現実を見ろ。海の中じゃ光は屈折してしまう物だ。
君はいつか言ったな、異常にも成り切れず、以上にも成り上がれないと。
馬鹿だな、人は其れを普通と言うんだ虚無主義者。
全ての答えは死では無いんだ。其れに早く気づいてくれ。
君は僕を他の友人達と同じ、通りすぎる赤の他人と同じ、挙句の果てにはそこいらの礫石と同じだと。
同じ、等しく価値がないと言った。オーケイ、其れでもいい。
でも僕は、君が好きだ。優しくて面が良く、話してても面白くそれでいて、どうしようも破滅に満ちている君の事が好きだ。
本を貸しても何ヶ月も帰ってこない所や挙句自分の物にしてしまうような君が愛おしくてしょうが無い。
破壊衝動と劣等感と虚無が一同に介したかのような君の性格には辟易するが、其処が僕は大好きなのだ。
だから更科君、僕と結婚してはくれないか。
前にも同じ台詞を研究室でも言ったな。僕は寝た振りをしている君の背中にそう投げかけたな。君はずっと黙っていた。僕は諦めて学食へ行ったんだ。
そういう風に僕には何も言わなかったのに、君は。
馬鹿な君は勝手に勘違いをして、惚れられていると勘違いして、其れを楔に生きていたのだろう。
何故僕じゃいけなかったんだ。君がその方面に耐性が無いことは知っていたが、動機が失恋だなんて笑えるなまったく。
君は逆様の世界で何を見た。最後に浮かんだ人物の顔は?願わくば其れが僕で有った事を願って。
更科君。僕は卑怯者か?
以上を持って私からの弔辞に代えさせて頂きます。
ボクっ娘も悪くないですが、ただメインには成り得ないようです。
本当に、悲しい事です。