4 真理の深淵
――彼女が何者なのか。
それが問題だった。
シェレンベルクは相変わらず確信らしい確信を持てないままでいた。
ドイツ国内、国外においてラインハルト・ハイドリヒが暗殺された事態は大きな影響をもたらしている。
おそらく、とシェレンベルクは思った。
反ドイツの過激派たちは、ハイドリヒが死んだこの隙を逃さずに活動をはじめてくるだろう。それは、レジスタンスやパルチザンだけではなく、連合国も同じだ。
執務室の机に肩肘をついて考え込んでいるシェレンベルクの脳裏の片隅に、ハイドリヒの上官であり、彼自身の上官であるヒムラーの顔が浮かんだ。
しかし……。
考えながら小首を傾げる。
ドイツ第三帝国にあって巨大な恐怖の組織として機能しているはずのナチス親衛隊。その長官にあたる親衛隊全国指導者のハインリヒ・ヒムラーでは圧倒的に実力が不足していた。ヒムラーの権力は、多くの高官たちの力によって支えられていると言って良いだろう。なによりも、彼の権力は総統アドルフ・ヒトラーによってやっと裏付けされているに過ぎないのだ。
顎に指先で触れながら、シェレンベルクは眉をひそめるとうなり声を上げながら、窓の外に視線を流した。とりあえずシェレンベルクの命令なしで彼女を収容所に送るなと申し渡したのは、胸の奥にざわつくものを感じたからだった。
どうしてそんな予感めいたものを信じたのか、と尋ねられてもうまく答えることなどできはしない。
「あなたはわたしの味方でしょう?」
「……答えかねる」
聞こえてきた声に応じて、シェレンベルクは腕を組んだ。
味方。
そもそも諜報員の自分に「正しい意味で」の味方とやらがいるのかどうかすらわからない。もしかしたら、味方のはずが敵だったという事態もなきにしもあらず、だ。
「妙にうろつくと不審人物の疑いをかけるぞ」
冷静な言葉で応じて座っていた椅子をくるりと回すと、入ってきた少女――マリー・ロセターと向かい合った。
にっこりと笑った彼女は、はじめて会った数日前と比較して、変質しつつある。戸惑っていた態度とは打って変わってどこか不遜な態度が顔を出しつつあった。しかし、なによりもシェレンベルクに不気味なものを感じさせたのは、出逢ったときと全く変わらない純粋無垢な眼差しだ。
言っている事や、態度の不遜さとは裏腹に、その”表情”だけは変わらない。
彼女の後ろに控えているのは医師であるレオデガー・クリューガーと、フィールドグレーの制服を身につけた数人の親衛隊員だ。
どう丸め込んでこれだけの人間を動かしたのか。
シェレンベルクが内心で溜め息をつきながら立ち上がると、親衛隊員たちが片手を上げてローマ式の敬礼をした。
「ヒトラー万歳」
親衛隊員たち倣ってクリューガーも敬礼をする。
一般病院の医師がそんなことをする必要はないだろうに、というのが一種現実的なシェレンベルクの考えだった。
他の親衛隊員たちとは違って、シェレンベルクはローマ式の敬礼をするかしないかということをナチス・ドイツへの忠誠心の踏み絵として考えてはいない。人には人の事情というものがあるだろう。
ナチス党の敬礼をするということは、それほど大した問題ではない。
そもそも、連合国などでは「ドイツ式敬礼」などというが、無知にも程がある。
直立不動の姿勢で右手をピンと上げ、一旦胸の位置で水平に構えてから腕を斜め上に上げる。そうして手のひらを下側に突き出す動きをするその敬礼はルーツを辿ればローマ帝国にあり、これを本来は「ローマ式敬礼」と言う。
ごく最近イタリアのベニート・ムッソリーニがファシスト党や国軍に復活させたものでこれをドイツが採用しただけのことだ。
そして、そんなドイツ人に囲まれた状況の中に置かれて鈍いのか、それとも無知なだけなのか少女は動じない。
「ヒトラー万歳」
シェレンベルクは応じてから、親衛隊員らを人払いすると少女にソファをすすめた。
「くだらないと思っていても律儀なものね」
くすくすと笑った彼女は、きちんと膝をそろえて座っていた。
「それで、まだ軟禁の命令が解けていないというのに何の用だ?」
もったいぶった言い方をするシェレンベルクに対して、彼女は興味深そうに室内を見渡してから首をかしげた。
「ベーメン・メーレン保護領」
「……――?」
唐突に少女の口から飛び出した単語に、シェレンベルクはそっと神経質に目を細めて目の前の金髪の彼女を見つめた。かつて殺害されたラインハルト・ハイドリヒと同じ色の金色の髪と、青い瞳を持った、白皙の肌の。
「リディツエ村に対して行われた報復攻撃について、今さらなにを言っても始まらないけど少し浅はかね」
淡々とした彼女の言葉に、シェレンベルクは無意識で頷いた。
恐怖政治は、飴と鞭が絶妙にバランスを取ってこそ成立する。
「リディツエ村……?」
「しらばっくれてもダメよ、だってわたしが統治していたんだもの。わかっているわ」
目の前に出された紅茶のカップに指先で触れたマリーの横顔を、シェレンベルクは眉をひそめたままで凝視していると、ややしてから彼女はカップの中に満たされていた紅茶から視線を上げる。
「わたしもね、半信半疑なのよ。信じてもらいたいっていう気持ちもあるけど、わたしはこの世界のこの出来事に荷担していいのかと、いまだに思ってる。迷いがないわけじゃない。でも迷って良いわけじゃないの……」
ヒムラー作戦、ベーメン・メーレン保護領、そしてラインハルト・ハイドリヒの死後に行われたリディツェ村の破壊。
それらをマリーは知っている。
彼の知識はマリーの知識であり、マリーの存在はラインハルト・ハイドリヒそのものなのだから。
だってそう……――。
「彼」は「彼女」が生きることを望んでいる。
もしもマリーがラインハルト・ハイドリヒの人生を背負うということを選択すれば、それはすべからく肯定するということに他ならない。
「それでも、彼がわたしである限り、わたしは背負うと決めた」
背負うことに決めた。
それからしばらく、シェレンベルクを前にして彼女は多くの事を話し続けた。
ヒムラー計画や、年の初めに開催されたヴァンゼーでの会議。
そしてカナリスやヒムラーについて。
決して本心とは思えない事柄の中には、少なからぬ真実を宿して。
*
「結論を申し上げます」
言いながらヒムラーにシェレンベルクは数枚にまとめた書類を彼に提出した。
「一件が国家の大事に関わることであると認識しておりますが、現在の所”それ”について否やを申し上げることはいたしかねます」
書類に素早く目を通しながら問いかけたヒムラーにシェレンベルクは大きく頷いた。
「はい、彼女の素性は未だ不明です。ただ、現在のところ彼女に連合国や犯罪者の影はは見受けられません。ですから、取り急ぎ彼女に対する処罰を決定する必要はないように思われます」
先頃、彼女がシェレンベルクに対して話しをした多くの事象に対する詳細については言及せずに、言葉を選びながらヒムラーに報告する。
ちなみに報告書についても確信には決して触れていない。
「なるほど」
「閣下。ところで近く強制収容所を訪問したいと考えておりますが、いかがですか?」
「……ふむ」
つぶやいてからヒムラーは口元に指先を当てたままで考え込んだ。
小心なヒムラーの考えていることなど、シェレンベルクにはわかっている。なにせこの目の前の男は「最終的解決」の推進を行っているにもかかわらず、収容所や処刑場で何度となく倒れているのだ。そもそも、倒れて威厳が保てなくなるのであれば行かなければいいものを、と思わなくもない。
多かれ少なかれ、国家社会主義ドイツ労働者党の上層部に立つ者たちはなにかしらのコンプレックスを抱えている。完全な人間などいるわけがないから、気にするだけ無駄なのではなかろうか、と思うがシェレンベルクは口に出さない。
「それで、どこの収容所に行くつもりだ?」
「そうですね、ザクセンハウゼンにでも」
ベルリン近郊にあるザクセンハウゼン強制収容所は、正確に言えば絶滅作戦のための収容所ではない。
「刺激はより少ないかもしれませんが、試金石としてならば使えるかと」
彼女が本当にハイドリヒであるならば、収容所の劣悪さなど意に介さないだろう。
「よかろう」
自分がアウシュビッツ強制収容所を訪問したときに倒れたのを思い出したのか、ヒムラーの顔色は良くはない。
「そのときは、わたしも同行する」
意外なことをヒムラーが言い出した。
「……は?」
「なんだ、わたしが同行したらまずいのか」
「いえ、そういうわけではありませんが……」
「幸いザクセンハウゼンならベルリンからもそれほど遠くはない。業務に支障はないだろう」
青白い顔のままで告げる彼に、シェレンベルクは内心で大きな溜め息をついた。
要するに、マリー・ロセターとヒムラーの両方のお守りをしなければならないということだ。
「承知しました。日程が決まりましたら早急にお知らせいたします」
ベルリン近郊のザクセンハウゼン強制収容所は当時、政治犯や思想犯を中心として収容されていたオラニエンブルク強制収容所の後継的な収容所として設立された。占領下にあるポーランドやフランスなどに置かれたいわゆる人種を理由にした強制収容所ではない。
ハインリヒ・ヒムラーの前から退室したシェレンベルクはやれやれと、右手の平で軽く自分の肩をたたいた。
「まったくもって厄介事ばかりだな」
国外も国内も騒がしいことこの上ない。
長い溜め息をついた彼はそうしてコツリと靴音を鳴らした。
世間は喧噪に満ちている。
そんな情勢下でラインハルト・ハイドリヒが暗殺されたことは、ドイツ第三帝国にとっては大きな痛手だった。
そこにまるで降って湧いてきたような少女の存在。
彼女は確かに「知るところまで」知っている。
これからドイツはどこへ向かおうとしているのか、そしてどうなるのか。
まだ、シェレンベルクも知りはしない。
*
今まで生きていた自分という人格に、まるで”ひび”が入るように、その内側に包み隠されていたものが表出していく。
マリーはじっと鏡を見つめたまま、自分の手のひらで、自分の頬を指先で辿る。
”そこ”にあるものがなんなのか。
戦後から遠くに生まれた彼女は、戦争など知りはしない。
マリー・ロセターにとって、戦争とは遠く海の向こうで行われる自分とは関係のないもの。
――そのはずだった。
マリー・ロセター。
それが自分の名前。
頬を辿る爪を、少女は無意識に頬に食い込ませる。
鈍い痛みは、その”肉体”が確かに自分のものだと伝えているというのに。そこにあるのは確かな現実感ではない。
肉をかきむしれば、その内側に隠された本当の自分が見つけられるかも知れないと浅はかな思いに捕らわれて、幼い頃にかきむしった経験があった。今でこそ血が流れるほど激しくかきむしることをしなくなったが、今でも同じような思いに捕らわれる。
病室の扉が開いて、マリーは我に返った。
「……シェレンベルク」
振り返った彼女は背中まで届く長いストレートの金髪を揺らした。
「ノックはなしなのね、相変わらず」
「君は、我々の監視下にある。そんなものをする必要がどこにある?」
「……そうね」
告げられた男の言葉に、マリーは微かに口角をつり上げて笑った。
マリー・ロセターという少女は、確かにヴァルター・シェレンベルクの目の前でゆっくりと変質していく。
最初に出逢ったときに不安を訴えて泣いていた彼女は今はいない。
子供というのは、大人たちが思うよりもずっと早く世間に順応して、成長していくものだが、それにしても彼女の変質の仕方は異常なものに感じられた。
マリーはなにを感じているというのだろう。
「わたしの存在なんて”たったそれだけ”」
独白するように呟いた彼女は、興味深そうにシェレンベルクを見つめてから、彼の腕にかけられた衣服に視線を留めて小首を傾げた。
「信じてくれるの?」
そんな様子はさらさらないみたいだけども。
「さて」
「そうよね」
短い男の言葉に、少女はそっと片目をすがめてみせる。
「好きなだけ試してくれて構わないわ。わたしは、もう覚悟なんてとっくにできているし、”彼”もそうよ」
まるで小鳥がさえずるようにつぶやいた彼女は、表情をあまりたたえない瞳を鏡の中に戻した。
別段、自分の容貌に見とれている様子ではない。
では彼女はなにを見ているというのだろう。
「この世界は主の奏でる手回しオルガンにしか過ぎないの。わたしたちはただ、定められた調べに合わせて、踊るのみ……」
ぽつりと彼女がつぶやいた。
それは、かつてそう。
病床のハイドリヒを見舞ったヒムラーに対して、ハイドリヒ自身が告げた言葉だ。
「……わたしも、ラインハルト・ハイドリヒも。そして、あなた――シェレンベルクも。全ての人間はその能力に見合った役を神によって演じさせられているだけにしかすぎないわ」
彼女の言葉に絶句したのは、シェレンベルクだ。
マリーが告げた一説は、ラインハルト・ハイドリヒの父親である音楽家リヒャルト・ブルーノ・ハイドリヒの作曲したオペラの一説だ。
それを年若い彼女がそれとわかっていて告げることなどあるわけがない。
つまり、それは彼女がその一説を”最初から”知っていたことに他ならない。言い回しそのものは少女のものであるというのに、その言葉の裏側に潜められた圧倒的な存在感。
「ライニを恐れていた者たちにとって、彼が死に至ったと言うことで安堵したこともあるでしょう。また、異なることを想起した者もいるでしょう。わたしは、彼のやり残したことを成すために喚ばれたの」
まるで言葉の裏に含められたものを感じてシェレンベルクはぞくりと背筋を正した。
彼女から感じるのは、冷徹な殺戮者としてのハイドリヒではない。未熟な魂が大きく昇華されて舞い戻るという絶望感。
ただでさえ、彼――ラインハルト・ハイドリヒを無視することなど、今だかつてできなかったというのに、そこに”喚び戻された”というマリー・ロセターから感じるものは、幼い残虐性などではなく、そしてハイドリヒのような狡猾な恐怖感でもない。時間という大きな流れの中で成熟しきった狩人の冷徹だ。
「どうせ、親衛隊情報部は、多かれ少なかれわたしを試すつもりでしょう?」
静かに淡々と言葉を綴る彼女は、踵に重心を置いてくるりとシェレンベルクに向き直った。
「どちらにしたところで、あなたたちの負けだけど」
そう。
こんな”子供”はいない。
金色の髪と青い瞳の。
かつてそれは「金髪の野獣」と呼ばれる男の持ち物だった。それを今、二十歳にも満たない少女が持っている。
「……本当に、君は?」
「なんでもいいわ」
静かにマリーが笑った。
年齢の割に、ひどく老成した笑みだった。
「わたしは、マリー・ロセターであって、マリー・ロセターではなく、ラインハルト・ハイドリヒであってラインハルト・ハイドリヒでもない」
百年という年月が作り上げた完璧な冷徹の化身。
「マリー・ロセターも、ラインハルト・ハイドリヒも、わたしという欠片でしかない」
ハイドリヒが望んでいた変化だ。
性別などどうでもいい。
ただ、人間とは未熟なもので、それが大成するには長い時間が必要だった。
長く、長く……。
ただひたすらに、ひとりやふたりの人間の生命の中では完結することなどできはしない長い時間が必要だった。
胸の中心を手のひらで押さえるようにしてマリーは言葉を綴る。
「彼はわかっていたのよ。自分が、未熟な人間でしかないと言うことを。だから、多くの時間の流れの中で魂が成熟する時を待っていた」
まるで、たったそれだけのことだとでも言いたげな様子でマリーは告げる。
「あとは、あなたたち次第」
「完璧なラインハルト・ハイドリヒ」を、死んだ男が召喚したのだ。
一語一語をかみしめるように告げると、マリーは疲れたのかベッドの端に腰をおろして、立ち尽くしたように彼女を見つめているシェレンベルクを見つめ返した。
「それはそうと、どこかへ連れて行ってくれるんでしょう?」
先ほどまでの神がかったような表情はどこへと思えるような瞳で、少女は言いながら小首を傾げる。
「あぁ、野暮用だ」
今の今まで来訪の理由を失念した様子だったシェレンベルクが、マリーの言葉に自分の腕にかけていた婦人用の清楚なワンピースとカーディガンを手渡した。
上質のソックスと、上質の靴も。
「わたしの服のサイズ知ってるの?」
悪戯っぽく告げた彼女にシェレンベルクが憮然とした。
「見ればわかる」
「さすがに恋多き男ってところ?」
クスリと笑った彼女に、男は制帽を軽く直すようにしながら表情をとりつくろうと、小さく吐息をついてから視線を外した。
「十分後にまた来るから着替えておけ」
「わかったわ」
異常な変化。
目の前でゆで卵の殻がむけていくような変化を目の当たりにして、シェレンベルクは内心で動揺していた。相手が女子供だから動揺しているわけではない。
相手が女であろうと、子供であろうと、冷徹に対処できる訓練を彼は積んでいるし。少しばかりのことで動揺するような人間には情報部などつとまらない。
彼女を監禁している病室から出たヴァルター・シェレンベルクは、彼女の主治医であるレオデガー・クリューガーが歩いてくるのを認めて表情を改めた。
「彼女はもう退院してもかまいませんが、行く当てはあるのですかな?」
退院しても良い。
それはつまるところ、マリー・ロセターの傷が完治したと言うことを暗に告げている。
日付は六月十六日。
ラインハルト・ハイドリヒの葬儀の日から一週間がたった。
「余計な詮索は無用だ」
「……まったくですね」
シェレンベルクのぞんざいな言葉に、クリューガーは肩をすくめる。この外科医はいつもどこか飄々としていて、親衛隊員たちにすら態度を崩そうとはしない。
医師としての確かな腕と、その性格は多くの者からの信頼を勝ち得る結果になっていた。
「治療費の請求は、国家保安本部でかまいませんかな?」
物怖じすることもなく告げた彼に、シェレンベルクは無表情に近い顔のままで頷いた。
「ところで、中佐殿」
クリューガーがそう切り出した。
「気をつけてください、あの少女。普通の子供ではありませんよ」
「……そうか」
わかっていた。
彼女が普通の子供ではないと言うことなど。
この一週間、それほど多くはない時間だが彼女を観察してきたのだ。
「ただの外科医でしかないわたしには分析いたしかねますが、彼女はまともな人間などではない」
鋭い瞳が全てを観察していた。
それはそう……。
入院中の彼女を見てきたクリューガーの頭脳はひとつの可能性を導き出した。
「治療費は国家保安本部まで請求してくれ。わたしの名前で構わん」
クリューガーの言葉を遮るように、シェレンベルクは告げると時計を見直した。マリー・ロセターとの約束の十分はとっくに過ぎている。
相変わらずノックもせずに病室へ入っていく若い情報部員の男の背中をクリューガーの視線が追いかけけた。
レオデガー・クリューガーも、ヴァルター・シェレンベルクも同じだ。
彼らが考えるのはただひとつ。
彼女――マリー・ロセターとは何者なのだろう。。