loop004:莉子
それはクリスマスイブの朝だった。
「母さん、今日は遅くなるよ。
オールになるかもしれない」
沙織母さんはきっと全て分かっている。
だけど、筋だけは通しておかないと。
「分かったわ。
晴道も『十九歳』ですもの。
わざわざ許可を取る必要もないわよ。
誰と過ごすのかなんて野暮なことは聞かないわ。
それにね、母さんは晴道のことを信用しているの」
ああ、これは定番の、
「避妊してくれるって!」
やっぱりな。
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今日は花音さん主催のクリスマスパーティーなのだ。
参加者は、
小泉香織
如月千紗
里塚由美子
早乙女莉子
一ノ瀬花音
中里京子
橋本花月
島村千鶴
(敬称略)
これは俺と出会った順だ。
他意はない。
それにしても、まるで攻略対象が全員そろう特別イベントのようだった。
俺、いつの間にか恋愛ゲームの主人公にでもなったんだっけ?
⸻
まずは立食パーティーから始まった。
一応人数分の席は用意されているが、
各自の定位置はあえて決められていない。
席を固定してしまうと、
俺と同じテーブルを巡って壮絶な争いが始まってしまうという、
花音さんなりの配慮だった。
出される食事はどれも凄まじかった。
ライブキッチンで供される米沢牛のステーキ。
キャビア・オシェトラの食べ比べまで用意されていた。
一皿一皿がまるで芸術作品のように盛り付けられていく。
見れば分かる。
どのシェフも超一流の料理人だ。
本来なら、こんな出張ライブキッチンに立つような人たちじゃない。
「ちょっとお金に物を言わせすぎちゃったわ。
大人げなかったかしら」
主催の花音さんが苦笑交じりにそこまで言うなんて、
一体どれだけの費用がかかっているのやら。
⸻
パーティーは大いに盛り上がった。
それぞれの近況報告や将来のこと、
そしていかに俺と付き合ってきたかという思い出話。
莉子はあの拉致事件以来、積極的にアタックしてくるようになった。
それが俺にとって意外なほど心地よく、翌年の莉子の誕生日には、自然とそういう仲になっていた。
今ではそれぞれ別の大学に通っているが、機会を見つけては逢瀬を重ねている。
やがて、プレゼント交換の時間となった。
花音さんの提案で、それぞれがプレゼントを一つ準備し、それを賭けてビンゴゲームをするのだという。
プレゼントの中身は事前に明かされるが、誰の出品かは伏せられる。
先にビンゴになった人から好きなものを選べるシステムだ。
そして、その景品の目玉は──『晴道と今晩ホテルに泊まる権利』。
俺の出品だけは、強制的にそうなっていた。
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ビンゴゲームは狂気的な盛り上がりを見せた。
というか、一部のメンバーは……否、言うまい。
百年の恋も冷めそうなほどの、凄まじい痴態だったから。
結局、激戦を制して一番にビンゴを叩き出したのは、莉子だった。
⸻
そして、翌朝。
「莉子……」
「うん、晴道?」
「莉子……本当に良かったのか?」
「何のこと?」
「だって、もしものことがあったら……」
俺は沙織母さんの信頼を裏切ってしまった。
「ふふ、私は後悔なんてしないわ」
莉子は愛おしそうに、自分の下腹部にそっと手を添えて言った。
「だって、私なかなか機会がないもの、チャンスは最大限に使わないと」
──その言葉に、背筋が凍りつく。
俺はもう、晴花と再会してしまうのだろうか。
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いや、分かっている。
これは夢だ。
だって、昨日まで俺は十六歳で、高校一年生だったはずだ。
三年間もの記憶が丸ごと無いなんてあり得ない。
それに何より──今日、誰一人の心の中の声も聞こえないんだ。
だけど、それにしては五感がリアル過ぎる。
そして……これは、いったい何度目なのだろうか?




