AI Ὅμηρος(ホメロス)について
ハナコが言う、異世界とは・・・・
「ハイファンタジーの仮想空間って、バーチャルってことか?」
アキラが訊く。ハナコはにっこり。
「当たり! そうよ」
「へー、おもしろそー、バーチャル世界って、どうやって入るの?」
ヨシコがハナコに訊く。華奢な少女は、
「ゲームよ」
僕はまたまた眼を丸くし、素っ頓狂な声で、
「ゲーム?」
・・・何だよ、ゲームの話?
「そう。最新バージョンは凄いのよ。みんなでやろうよ。面白いよ、きっと。ヒロシを助けると思って」
アキラが急に、
「あ、わかった。知ってる。もしかしたら、AIのか」
「そー、そー、それ」
ハナコの微笑に応えて、ナヲコも、
「ああ、人工知能ホメロスのことか、めちゃ話題だよな」
「知ってるー、あー、やってみたい」
・・・え、ヨシコまでも。
何だか全然わかんない、みんな忙しそうなのに詳しいな。僕、暇なんだけど詳しくない。
「通販で明後日には着くわ」
「でも、その頃、まだ日本にいる?」
「あたし、いないわ」
「そうなの、わたしも」
「おいおい」
「でも、大丈夫、いつでもどこでも同時進行」
「はああああ?」
何だか、僕とアキラと二人で話したことに近いような気がしてくる。
「どこでも、はわかるけど、いつでも、はどうかな」
アキラが問う。その顔は確信犯の顔だ。当然、僕より賢い彼も気がついて、わざと聞いている。
ハナコは、
「全然、大丈夫」
そう言い切った。
そして、案の定、彼女は言う、
「だって、世界はマルチ・バース」
「どういうこと」
ヨシコがまったくわかんないって表情でそう尋ねる。
ハナコはにっこり。
「別の宇宙があるってことよ。異なるたくさんの宇宙があるってこと。
たとえば、全く同じだけど、歴史が異なるとか。全く違っていて、物理法則も違う宇宙とか。その違い方も設定は似てるけど違うとか、違い方が半端なくて、そもそも、あり方が想像にもできないほど違うとか。
意識に描くこともできないくらい、とか」
「想像できない・・・くらい?」
ヨシコ、説明されて余計わからないらしい。
ハナコもちょっと考えてから、
「〝ある〟の意味が根底から違う、どういうふうに存在するか、と言うことすらできない宇宙。
そういうふうに考えると、どっかで区切りがあって、空間的に別の宇宙になるパターン以外にも、同じ場所にある別の宇宙、同一なのに違う宇宙、それ以上の何かである宇宙まで想定できる」
ナヲコは、
「何でそんなことわかるの」
ハナコはうふっと笑い、
「わからないわ。でも、当然そうなのよ、根拠は虚しい」
「え」
僕とアキラもその答には驚いた。
「この世には、現実にはかたちがない。時間の相違なんて関係ない。時間性は最深層の意識、もう個人の意識ではない集団的無意識、その下の阿頼耶識が采配しているだけ。その縛りから脱獄すれば、すべて同時のようなもの」
「かたちがない? 何でそう言い切れる」
アキラが問うた。
「だって、かたちがないことに証明は要らないわ。明晰判明よ。有り無しで想うから惑うのよ。
理窟でも理論でもない、論理性なんかなくって、まったく関係ない。かたちがないってことは、かたちがないっていうかたちもない完全な中庸、無色透明。狂裂で過剰な自由。
何でもあり、それは肯定も否定もしようがない」
ちょっと待って、僕には全然・・・・・・あれ? アキラ?
アキラが眼を輝かせ、
「そうか、そうだ、言われてみればまったくそうだが、この理解も理窟に拠る理解であって、かたちであるから、相当しないけれど、相当しないと言い切るにもかたちが必要だから、ああ、言葉や概念で言い切れない、いや、それもそうじゃないんんだ。
でも、わかったよ、すごいなハナコ、ハナコの言うとおりだ」
ハナコが大きくうなずく。ああ、ハナちゃん! 僕を置いてかないで。
ヨシコが、
「ちょっと、二人で盛り上がってるけど、あたし、全然だよ」
・・・右に同じ。
けれども、ナヲコは、
「いや、私は感じたよ。
何か飲み込めた。
ちなみに少し話戻るけど、同じ場所に、別の宇宙があるっていうなら、もっと単純に次元の違う宇宙っては絶対あるんじゃない」
ハナコも、
「そうね、この三次元の世界にも、実際、二次元や一次元空間が存在しているからねー。
平面の世界って、理解できるもんね」
アキラも、
「四次元は見えないけどね、でも、たぶん、今ここに同時にあるんだろうな。認識の形式が三次元まででしかないから、認識不能だけれど」
うん、その話までは僕もわかってる。だから、会話に加わろうと必死で、
「うーん、四次元て、上下・左右・前後(座標の縦・横・奥行)の軸の他にもう一本、空間軸があるってことだもんね。想像もできないよねー」
仲間はずれ状態のヨシコは、
「わかったわよ、わかったことにしとく。ちなみに、例のゲームなんでしょ、あたしも知っているけど、詳しく知ってるわけじゃない。
具体的にどうすればいいのよ?」
ハナコはスマホを出した。
「普通と同じよ。
ダウンロードしてログインすればいいだけ」
アキラもスマホを出し、
「あとは、それをAIὍμηροςが何とかしてくれるってことなんだ」
「そう」
ヨシコ・ナヲコも出し、
「すごいリアルらしいけど」
「脳に直接脳波として送るからね。内部存在を減少させる。だから、ゲームであって、ゲームじゃない、リアルなんだよ」
僕は出遅れまいと、
「じゃ、アプリをダウンロードして、早速、参加しよう」
ハナコも、
「じゃ、みんなスマホ出して。ダウンロードして」
「できたよ」
「まずは登録。
確認メールが来るから、そのメールの中のURLをクリックして」
「これか」
「で、専用のヘッドネットが明後日、来るから、それでそれぞれ始めよう。時間は関係なく、わたしたちは自由に連絡できる。進行できるから」
いよいよ異世界へ




