ー餘詩胡(よしこ) & 莫乎琥(なをこ)ー
ヨシコとナヲコに再会したが、果たして?
剣道というより、剣術っていうのか、飛び上がり、回転し、舞うように敵を打ち据える。雪を蹴散らせ、低く燕のように飛ぶかと思うと、旋風のように頭上に飛び、変幻自在に竹刀を振るう。
こんなことする奴らは、誰だかすぐわかる。
ぅわおおおーっ、やったー、会えたーっ!
長い髪を後ろで編み込んで束にしているのが、ヨシコ。
波瑠餘詩胡だ。
昔と違って、左右で異なる色に染めている髪を交互に編んでいる。何だか太綱に見えた。いつも睜かれたような薄色の瞳をしている女子。華が咲いたような睫毛だ。
荒々しく自然なままに真っ直ぐな髪を振るのが、ナヲコ。菊籬谷莫乎琥だ。前髪をパッツリ切り揃えて眉毛を隠している。キラキラした鋭い双眸を睫毛が翳し、少し吊り上がった切長の眦(目尻)。
二人とも武闘派の女子だ。変わってないなー。
僕は彼女らを見ると、いつもヴァルキリーを聯想した。
ちなみに、完全な武闘女子たちだが、ヨシコは祖父が哲学者で、ナヲコは父が詩人で画家だ。
「おーい、ヨシコ、ナヲコ、ちょー久しぶり! 僕を憶えてるかい」
「え? 誰だっけ」
ヨシコが振り向いて、そう言った。
「おい、冗談だろ、ヨシコ、まじか。冷たいなー」
がっかりだよ。冗談だと思いたいかったが、けっこう、素の顔で言ってるので、きっとこれは本気だ。
「ナヲコはわかってくれるよな」
「誰だ、お前」
「ちょっと、待って。数年(実は十年)会わないだけでそれはないだろー。ヒロシだよ、昭和五人組のヒロシだよ、冷た過ぎるぜ、ハナはすぐにわかってくれたのに!」
「ハナ? ああ、ヒロシ、おまえか」
「僕だよ、当たり前じゃん。そりゃないよ〜、ナヲコ」
「言われてみれば似てる」
「僕は本人だっつーの、ヨシコ」
昭和五人組。今まで出てきた仲間の名前を見てわかるとおり、ヒロシ、ハナコ、ヨシコ、ナヲコ。いずれも昭和っぽい、読み仮名は(漢字で書くとキラキラっぽいけど、)。そんで、中学時代、周りから、昭和五人組って言われていた。
そう、あともう一人、男がいる。
僕は必死で食い下がった。
「ねー、二人とも、今日、僕んちでハナに会ったんだよ、グーぜん」
「は? ぐーぜん? 待ち伏せしてたんじゃない」
鋭いなナヲコ、何でわかるんだよ、そーゆーことだけ!
「そうだよ、ヒロシって、ハナに振られてたもんなー」
・・・・・・まだ告ってない。その予定もない。
「ちがう、ちがう、んなことないって」
「焦ると怪しい」
「ほんと、がちだよ」
何で僕ら仲良くできたんだろ。中学時代、もう十年前か。高校別々だったしなー。
「ハナは今夜、初詣にここに来るって、言ってたけど、君らもどう?」
「何、それ?営業」
「ナンパか?」
「ちがーう。昔の仲間を復活させたいんだ」
「今さら?」
二人が同時にそう言った。
今さら・・・か。
そうだよね。
「きゃははは、まぢショゲてるよ」
ヨシコが嗤う。ナヲコも呆れ顔で、
「相変わらずだな、ヒロシ。泣くなよ、めそめそヒロシ」
そうだ、小学生の頃はこいつらにいじめられていた。何で仲良くなれたんだろう?
仲良かった? そうじゃなかったのかな? もしかして。ほんとは僕の思い込み、いじめられてる事実が辛過ぎて、記憶を改竄していた? あり得る。でも、昭和五人組って言われてたのも幻聴?
「おい、まぢで泣いてないか、こいつ」
「もう冗談はよせ、ヨシコ。
なあ、ヒロシ、あたしたちも行く予定だよ。さっきハナから、メールもあったし」
僕は顔を上げた。
「めーる?」
ヨシコが大笑い。
「何、その情けない顔」
「だって、僕のメールは既読にならないのに」
ヨシコはさらに笑い、
「あー、それ。
ちいせーなあ、見る気になんなかっただけだよ」
僕はショックだった。
「だけって、そんな! 何でだよ! そんなの理不尽じゃん、おかしいよー、それって、そんな軽いもんだったの? やっぱ、仲良くなかったんだー」
「うざいなー。理不尽とか、うざい。理がどうした? くっだらねー、理を翳してマウント取りてーだけだろーが、クソが。理を喚く奴らはみんなそうさ。
薄汚い弱者の心を隠してるのさ。
強くてなんぼだ。
誰かに護られなきゃならないなんて自由じゃない。
仲良いとか、きもいよー」
急に怒り出すヨシコ。今度はナヲコが大笑い、
「あはは、あんた、いー加減だねー、ヨシコ。
さんざん、いたぶってさ、今度は怒り出すの? はははは」
「ふん、そういう性格さ」
よくわかんないけど、ナヲコが振り向いて、にっこり。
「じゃあ、初詣で会おう。アキラも呼んどけよ」
結果的には望んだ結果だ。結果的には良かった。結果的には。でも、悲しい。何だか、落ち込んだ。ハナと会ったときは凄く上がったのに。
とにかく、アキラに会わなくっちゃ。
アキラを連れて来なくっちゃ。
でも、返信ない。電話も出ない。
何でだよー。でも、あいつなら、ありか。何考えてっかわかんない奴だったからなー。
何で、僕たち、友だちだったんだろ〜! わからん! 本当だったのか、僕のこの記憶は。頭ん中なんて曖昧ばかり。
スマートフォンを見る。既読にならない。
アキラも見る気にならないのかな・・・既読にすらならないのは。
アキラとは、




