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奇妙な街に住んでいた  作者: ぽぴ


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3/9

溶けたフィギュア


住んでいる地域の雰囲気を「地域柄」と言う。


 私がかつて住んでいた地域はどんよりして、いつも曇り空のような雰囲気があった。空は快晴なのに、黒い雨水が垂れた壁が街の湿度を空へと逃さない。


 片足のゴールデンレトリバーに、墓に居座るシュナウザー。親が自殺してイジメを受ける同級生に、不良に「イジメないで」と手紙を書いた知的障害者。こちらを覗く大きなヒキガエルに、爆発したナメクジ。


 団地の1室には黒蠅のむれ

 藪からはヘビと変質者。

 ため池では毎夜、異音が。


 私が住んでいた地域では、こんな事がよくあった。違う地域に引っ越してから、それが普通ではないと知った。


 今回は、そんな街で遭遇した、ある「フィギュア」についての話だ。



 雨が降っていたあの日。どこかの家庭が出したゴミ袋が破けていた。


 おそらく、野良猫かカラスの仕業だろう。黒い容器とご飯粒が道に散らばっていた。ごみ捨ての日にはよくある光景だ。


ん?


見慣れない物がある。


 ピンク色の髪に、制服を着た女性のフィギュア。破けた袋から投げ出されるように飛び出していた。


しかし、奇妙だ。


フィギュアに穴が空いていた。

腹部を貫通するほどの大きな穴が空いていた。


 私はフィギュアに近づいた。傘を肩に担ぎ、しゃがみこんで、フィギュアをまじまじと観察した。


 溶けてドロリ、とした物が腹部の周りで固まっていた。


「(…何、これ?)」


初めて見る状態ものだった。


 フィギュアはうつ伏せだった。正面は見えない。


 そこそこアニメを見る人間としては何のキャラクターか気になった。だから私は、側に落ちていたプラスチックを手に取り、フィギュアを裏返した。


顔だ。


顔が溶けている。


 フィギュアの顔は、鼻から顎にかけてドロリと溶けて、原型がわりと残っている目や前髪ですら、黒いミミズ腫れのような跡があり、すすのような黒い粉が顔を覆っていた。



 腹部は―、熱した何かを押し付けられたのか、おヘソから背中までドロリと溶けていた。制服のグレーに、髪のピンク。そして、少しの緑が混じった痛々しい状態だった。


「(このキャラクターが嫌いになったのかな…)」


 そんな事を考えていると、ふと学校でラジオを作ったことを思い出した。確か、「はんだごて」と呼ばれる道具を使って、いろんな物を溶接した。はんだごてを押し付けるといろんな物がドロリと溶けた。


目の前にあるフィギュアも同じ状態だ。



あたりには傘で跳ねる雨粒の音。

私とフィギュアは静かに雨に濡れていた。


私はフィギュアを。

フィギュアは空を。


何か意味があるわけでもなく、ただ見つめていた。


 私は身震いした。きっと雨に濡れて体が冷えたせいだろう。それとも――背後に感じていた気配。



 フィギュアを見ている途中、背後で雨音が変わった。ザーという雨音に、何かペチャペチャとしたたるような音が混じた。


私は勢いよく立ち上がった。


2秒――、時が止まった。


立ち上がった後のことを考えていなかった。


 私は傘を握りしめて歩き出した。ペチャペチャと音がしている方を見ないように。


 お化けは信じていないけど、わざわざ見る必要もない。そう言い聞かせ、その場を立ち去った。




 結局、あのフィギュアが何のキャラクターだったのか分からないままだ。ピンクの髪にグレーの制服。


 そもそも、なんであんな事したんだろう。


 そういえば、親からペットを買ってもらえない子供は、代替としてぬいぐるみを欲しがるという話を聞いた事がある。


 そうなると、あのフィギュアの状態は何かの代替だったのだろうか…。


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