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奇妙な街に住んでいた  作者: ぽぴ


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2/9

いきなりおじさん


住んでいる地域の雰囲気を「地域柄」と言う。


 私がかつて住んでいた地域はどんよりして、いつも曇り空のような雰囲気があった。空は快晴なのに、黒い雨水が垂れた壁が街の湿度を空へと逃さない。


 片足のゴールデンレトリバーに、墓に居座るシュナウザー。親が自殺してイジメを受ける同級生に、不良に「イジメないで」と手紙を書いた知的障害者。こちらを覗く大きなヒキガエルに、爆発したナメクジ。


 団地の1室には黒蠅のむれ

 藪からはヘビと変質者。

 ため池では毎夜、異音が。


 私が住んでいた地域では、こんな事がよくあった。違う地域に引っ越してから、それが普通ではないと知った。


 今回は、そんな街で遭遇した、ある「おじさん」についての話だ。



私が通っていた小学校には奇妙な噂が何個もあった。


プールサイドを走ると呪われる。

閉鎖された音楽室で人が死んだ。

3階の階段を数えちゃいけない。

夜の学校を見てはいけない。

校長先生は死んでいる。


 大人になって思い返してみると、どれも出どころが分からない噂ばかりだ。それでも当時は本当に信じてた。噂の中に本物があったからだ。


「いきなりおじさん」


 なんでも、学校の敷地と道路をへだてるブロック塀にいて、子供が近づいてくると、いきなり顔を出して脅かしてくる。そんなおじさんが居ると噂になってた。


私はそのおじさんを見た事がある。




 私はいつものように学校へ行った。朝ご飯にヤマザキの「アップルパイ」を食べ、リンゴとシナモンが好きな私は上機嫌だった。


お昼休み。


 友達と一緒にドッチボールをした。「無限バリアだから今のはセーフ!」と言い張る友達と、「いまのボールはバリア貫通でしたぁー!!」と言い張って楽しく遊んだ。


 鐘が鳴り、教室へ急ぐ私たち。ブロック塀の前を通り過ぎたときに、独特なニオイがした。甘いような、コーヒーのような、甘くて苦い、変なニオイ。


 私はとっさに「くっさぁーー!!!」と叫び、走って教室へ戻った。


 午後の授業では習字があった。「東」という字を書かされた。私は「(何で東なんだろう)」と不満に思い、お気に入りのキャラクター『でんじゃらすじーさん』を書いていた。


 でんじゃらすじーさんは、見回りに来た先生に見つかった。こっぴどく怒られた。アップルパイを食べて上がっていた気分が、台無しになった。


 午後の授業が終わり、下校時刻になった。友達と鬼ごっこをしていると、前に走って行った友達が「うわっ!」と飛び退き、こちらに戻ってきた。


「 いきなりおじさん!!!!! 」


「は?なに?」

私は聞き返した。


「 い・き・な・り・おじさん!!!(迫真) 」


「え、どうしたー?」

「いきなりおじさん!?」


 友達の大声に周りにいた同級生も集まって、みんなで友達を囲んだ。


「いきなりおじさんがいた!本当っ!命かける!」

「本当にいた!マジ!命!本気でかけれる!」


 まばたきもせず、鼻を膨らましてそう言う友達は嘘を言ってるように見えなかった。


 私たちは、いきなりおじさんがいたという場所に近づいた。すると、昼休みに嗅いだ、甘い苦いニオイが鼻に入った。昼より濃いニオイだ。


次の瞬間、いきなりおじさんが現れた。


 ブロック塀の後ろにある金網から、おじさんはこちらを見ていた。髪は白髪で、黄ばんだメガネをかけた灰色のスウェットを着たおじさん。


表情は笑っているような、無表情のような。

なんとも言えない、不思議な表情をしていた。

何かを喋るわけでもなく、ただ立っていた。


「え、キモ!」「…え、怖っ」

「え、どうする?」


私たちは困惑した。

ただの噂だと思っていたからだ。


「 先生に言いにいこーぜ! 」


 優等生が口を開いた。いきなりおじさんはその間もずっとこっちを見ていた。


 私たちは、この恐怖と珍しい物を誰かに知らせたくて急いで職員室に向かった。振り返ると、いきなりおじさんは機械のように首を「ググッ、グッ」と動かし、こちらを″顔″で追っていた。恐い人から離れているはずなのに、もっと不安な気持ちになった。


 職員室には、マッチョ先生と呼ばれる体格の良い先生がいた。


「失礼します。先生、変な人がいました!」


マッチョ先生はこちらを振り返ると、

「変ってなんだ?」と質問をしてきた。


「なんか、ずっとこっちを見てくるおじさんです。」

優等生がそう言うとマッチョ先生は一瞬黙った。


「あー…またあの人かな?どこにいた?」

「ちょっと、職員室で待っててくれる?」


 マッチョ先生は、私達を職員室の奥の部屋に案内し、電話の子機を掴んだままどこかに行った。普段、入れない部屋に私達はテンションが上がっていた。


 部屋に置いてあったトロフィーは、私達の指紋でベタベタになった。


20分くらいするとマッチョ先生は戻ってきた。


「もう大丈夫。帰るときは裏門から帰ってね。」


 私達は裏門から帰った。いきなりおじさんがどうなったのかは分からなかった。次の日、おじさんを見た私達は話題の人となった。優等生なんかは、おじさんの絵を教室の掲示板に貼っていたから、だいぶ天狗になっていた。


 あれ以来、おじさんを見たことはない。だけど、ブロック塀の近くを通ると、甘くて苦いニオイが薄っすらした気がする。


そこにおじさんがいたのか。

それとも、違う匂いだったのか。


いまとなっては分からない。



 後日、上級生が「いきなりおじさんを見た」と言っていた。なんでも、学校の前にある家の裏口に、いきなりおじさんが入っていくのを見たらしい。


私は不思議に思った。


その家は普通のおじさんとおばさん。

高校生のお姉さんと、この間卒業した上級生。


吠えまくる恐い犬がいるからだ。


本当に


いきなりおじさんの家なのだろうか。







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