第9話 理不尽な設置場所その3:水中
「え……また水中……?」
俺はマップを二度見した。
課長の指示はこうだ。
第四層、水中部屋に宝箱を設置せよ
いやいやいやいや!
俺、泳げるけど、水の中で重い宝箱を担ぐとか無理だろ!?
しかも水流が速い。台車なんか押せるわけない。
「仕方ない……行くしかない」
俺は潜水マスクもシュノーケルもなしで、水中部屋に突入する。
――頭がぐわんぐわんする。
台車が水で半分浮くけど、その分、操作がめちゃくちゃ難しい。
「ぐおおおお……押せ!押せ!……腰は……腰は耐えてくれ!!」
途中、魚型モンスターが俺の足に絡みつく。
「ちょっ……やめろ!宝箱が動くだろ!!」
モンスターは悪気はないが、俺の悲鳴を無視して泳ぎ去る。
やっと設置場所にたどり着いた。
水流で揺れる宝箱を必死で固定する俺。
「ふぅ……やっと終わった……」
しかし、後ろから水音が。
「……おっさん、無事か?」
振り向くと、ゴブリンが水面をピョコピョコ跳ねている。
「お前ら、今日も現場監督か……!」
水中設置のせいで、宝箱は少し浸水気味。
冒険者が開けたら、ポーションが薄まってるかも……。
「まあ、多少は仕方ないか……」
こうして、水中部屋の宝箱も無事(?)に設置完了。
腰と腕はパンパンだが、今日も冒険者の夢のために働く俺であった。