第8話 理不尽な設置場所その2:溶岩の真上
「今日の指示……また無茶だな……」
俺は台車を押しながら、指示書を睨む。
第三層、炎の回廊に耐火仕様の宝箱を設置せよ
耐火仕様? いや、宝箱が燃えないだけで俺は燃えるかもしれないだろ!
炎が吹き上がる回廊を進むたび、体が焦げそうな熱気。汗と腰痛が同時に襲いかかる。
「うう……これ、設置したら絶対誰も取りに来れないだろ……」
誰も突っ込まない、俺の心の声。
耐火ベルト? ない。
火よけマント? 持ってない。
俺の武器は……台車と腰痛ベルトだけだ。
「ええい!行くしかない!」
台車を押しながら炎の回廊に突入する。
「ぎゃあああ!熱い!熱すぎる!腰も腕ももう限界だあああ!」
火柱の隙間を縫いながら、必死で宝箱を目的地まで運ぶ。
途中、炎の熱で手が滑る。
「あああ!落とすな!落としたら俺が死ぬ!」
なんとか設置場所に到着。
耐火ロープで固定するも、台車の下が溶岩で少し揺れる。
「やばい……今、ほんの少し揺れただけで死にかけた……」
ふぅ、と一息つくと、背後から声が聞こえる。
「おっさん、大丈夫か?」
振り向くと、ゴブリンが火の間隔を飛び越えながらこっちを見ていた。
「……お前ら、今日も現場監督か!」
俺は腰を押さえながら、スライムやゴブリンに囲まれて無事を祈る。
「……宝箱のために命を削る仕事って、なんなんだろうな……」
しかし、この溶岩の上に置かれた宝箱は、今日も冒険者の夢を待つのであった。