表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9

妄想くん

 日常編の追加更新となります。今後、〇〇編はいくつか増やす予定ですが、ジャンルによって区分する予定なので最新話が最新の編に必ずしも入るわけではないと言うことをご了承ください。それではお楽しみください。

 嫌なことがあった。

 自分にはほとんど関係がないのに、なぜか自分が責任を負わされている。

 むしゃくしゃして無性に何かを壊したい。


 そんな時には妄想をする。


 パリンッ


 リビングでキレ散らかし、皿を割り、破片が飛び散る妄想。


 でも、そのあとはどうだろう。割れた皿の片付けをやる人間は自分しかいない。ああ、面倒だ。取り損ねがあったら足を怪我してしまう。怪我をしたら病院に行かないといけない。そうしたら時間もお金もかかってしまう。


 「はぁ。」


 ああ、面倒だ。


 こう考えていると、次第に元の嫌なことがどうでも良くなってきて、また日常に戻る。



 また、嫌なことがあった。

 なにも仕事をしていない奴が、私のたった一つのミスに難癖をつけてきた。

 一つ怒鳴りつけて喧嘩でもしてやろうかと思った。


 また妄想をする。


 「ふざけるな!お前がなにもしてない間、私がどれだけ仕事をしていると思っている!今日も、私が別件で手が開けられない時に君に任せた仕事、最低限もいいとこまでしかやってなかったじゃないか!それでよくもまあそんなデカい顔ができたもんだな。」


 まず怒鳴るとしよう。喉が痛んでしまう。私は幼い頃喘息持ちで、そこまで喉が強くないからしばらくこれが尾を引くだろう。うーん。


 もしあいつが言い返してきたらどうだろう。


 「こっちだって真面目に仕事してるさ。毎朝ちゃんときているし、君と比べてもちゃんとした生活を送っているよ!そんなに怒るって言うんならこんな仕事やめてやるさ。」


 こう言うのは1番面倒くさい。

 かと言ってこちらが一方的に怒鳴るのも弱いものいじめみたく格好が悪い。最近はなんでもすぐハラスメントにするもんだから、それを言われるかもしれない。


 ああ、面倒だ。


 こうして怒りを胸にしまい込んでまた日常に戻る。



 自分に対しても妄想をする。


 誰もがあっと驚くようなプレゼンをして、自分の企画が全て通る。

 友人誰もが羨むようなパートナーがいて、毎晩家で出迎えてくれる。

 パソコンに一度触れれば人を魅了する映像作品を作れる。


 ああ、こう言うのは良くない。高望みをしても虚しくなるだけだ。

 昔の妄想を思い出してみよう。


 ちゃんとした大学に行き、ちゃんとした会社に入り稼ぐ。できているな。

 土日はベランダでコーヒーを机に置き新聞紙を広げ、ジャズでも聞きながら市場の確認をする。気が向いたら楽器に触り、街中で聞いた流行りの曲を吹いてみる。うんうん。できている。

 

 いい出会いがなかったことだけはどうしようもないが、こう自分の思い描く『理想の自分』に近づいているとすごく嬉しくなる。



 でもまた嫌なことがあった。

 例の仕事をしない奴がまた余計なことをした。

 最近は会話するだけでも不愉快なくらい、初めて明確に人を嫌いだと思った。そんな奴がまた突っかかってきた。いい加減にしてほしい。


 ここで妄想を一つ挟もう。

 

 気の置けない友人と薄暗いいい感じのバーのカウンターで会う。彼の口から愚痴が出ることもあれば、私の口からそれをこぼすこともあるし、時に自慢し時に賞賛し仲良くやる。

 そんな彼に相談をするのだ。


 「会社に、仕事ができないのにどうしても顔のデカい奴がいるんだ。そいつが私に突っかかってきて仕事のしようがない。どうしたものか…」


 「一度、無視してみると言うのはどうだい?」


 「そう簡単にできるものかい?」


 「想像してごらん。そいつが何かを言っていても一向に取り合わない。今まで聞いていた意見も聞き入れないし、大事な情報を共有することもない。個人に親切で伝えていたことも、全体に言うだけで終わりにするんだ。そうすればどうだろう。向こうも何か勘付いて態度を変えいるかもしれない。」


 「もしそうしなかったら?」


 「そんなことは考えないのさ。自分の都合のいいように想像すればいいんだ。どうだい?」


 「なるほど、こいつはいい気分だ。泣きついてくるのが目に浮かぶ。あいつは『あのようなこと言ってすみませんでした。以後気をつけるので、どうか話を聞いてもらえないでしょうか。』って言ってくるんだ。そこで私は『ああ、わかった。』とそっけなく返すんだ。気分がいいな。よしわかった。そうしよう。」



 でも現実がそううまくいくとは思っていないので、妄想の中で満足してまた日常に戻る。



 ちょっとまずい事態になった。ちょっとの道だからと酔っ払って運転をしていたら飛び出してきた人を轢いてしまった。幸い夜も深まり辺りにそれらしいカメラもないし、人もいない。住宅街ってわけでもないから誰かに見られることもなさそうだ。


 一つ妄想をしよう。


 轢いてしまった人があの会社の奴だったらどうだろう。ざまあない。一回殴り殺そうとしたもんだ。清々するな。でもこの人は別人だ。

 どうだろう、このまま放置していたら流石に朝になれば人に見つかって、警察の捜査が始まり、近くの監視カメラから私の車が見つけ出されるかもしれない。そうすると私の調査が始まり、飲んでいたことがばれ、捕まるかもしれない。そうしたらどうだろう。会社にはいけなくなるし、なんなら奴に清々したと思われるかもしれない。

 これはよろしくないな。


 一つ考えを変えてみよう。私はこのあと宝くじを買い、それが大当たりして大金を手に入れる。元々貯めていたお金も合わせて、海外に行くんだ。そこでは轢いたことなんて忘れて気ままに生活を送れる。いつも土日にしていた生活を、毎日行うのだ。週休7日、いい響きだ。

 いやでもこれもダメだ。次第にお金が尽きたらこちらに戻らなくてはならないし、そうしたら捕まるかもしれない。困ったものだ。


 「どうしたものか。」


 思わず声を漏らす。

 目の前の人はぐったりとして動かない。かといって騒ぎ立てる誰かがいるわけでもない。酔いも醒め冷や汗はかいているが、現状は変えようもない。


 よし、自分のいいように想像しようか。この目の前で倒れている人は運悪く上から降ってきたレンガに体を打たれたのだ。ちょうどそこに工事用のレンガが積んである。崩れそうな積まれ方だし、不慮の事故だな。


 よしよし、これでいい。


 そうしてまた日常に戻る。

 この事件が夢だったのかいつしかの妄想なのか、実際のことだったのか、酔っていたしよく覚えていない。

 現実なんてそんなものだ。実現するかは行動力、その時の状況、気分次第。だから私は今日も妄想を重ねる。

 ある時の妄想の続きかもしれないし、現実で迫られた選択の、選択しなかったもう一方の未来のことかもしれない。


 『あれが見つかったら、どうなるんだろうか。』

読んだ感想や書き方や言葉遣いなどの指摘等あれば是非お願いします!

評価やブクマも励みになります!よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ