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お兄様に送るインテルメッツォ

 二人称で書いてみようと思ったのですが、展開をつけるのがまだ慣れておらず話がのっぺりとしてしまったかもしれません。飽きずに読んでいただけたら幸いです。

 私には6つ歳の離れたお兄様がいます。仲良く遊びもしたし、時には喧嘩もしたし、時に頼り頼られの兄妹としていい関係だと思います。兄妹というのは喧嘩をしても次の日には顔を合わせることになるから、ずっと不機嫌なままでいることは叶わない。お母様が仲裁に入ることもあれば、美味しいご飯を挟んで仲直りをすることもありました。


 そんな兄様が社会人になり結婚をする運びとなったので、一筆手紙を認めようとそういう心づもりで今机の前に座っているのであります。書き初めはそうですね、このようにしましょう。




 親愛なるお兄様へ


 この度はご結婚、誠におめでとうございます。今までの人生、お互いに幾分かの紆余曲折を経てここに立っているということでありましょう。お兄様の人生についてここで一つ振り返ってみることとしましょう。


 まずは生まれからでしょうか。私はその当時影も形もなかったので詳しいことは存じませんし、お兄様も物心はついていないでしょうからお母様からの伝え聞になりますが、実は元々双子で生まれる予定だったそうですね。何やらお母様の容体の急変とかで、緊急手術で帝王切開をしてかなり小さい状態で生まれてきたとか。もう1人の生まれるはずだった命は亡くなってしまったそうで、お母様がその分の命があなたに宿ったのかもねと私に言ってくれたことがあります。

 なかなか生まれる時から激動だったようでございますが、幼少期はこれも相まってか体が弱くよく体調を崩したり、皮膚が弱くてよく医者に罹っていたり色々していましたね。少なからず私にもお兄様が塗り薬をカサカサの手のひらに塗っていたりしたのを覚えています。


 生まれがいいというのは私もそうでしょうが、運動は水泳を習い、文化はピアノを習う、典型的なお坊ちゃんの育ちというものを踏襲しておりましたね。

 ピアノではショパンの革命のエチュードを演奏会で演奏していたのを覚えています。ちょうど感染病が流行っていた頃で録画、録音をネットに公開するというかなり狭い発表でしたが、疲れるということで肩を揉んでいたことなどを覚えています。

 水泳では言わずもがなでございましょう。中学生の頃から全国大会に出場して、様々なことがありましたが結局高校二年生の頃まで全国大会出場を果たしていましたね。高校三年生の頃は本当は実力的にはギリギリのラインでしたが、感染症を言い訳に「行けたんだけどね、感染症がね、」と言い訳している様子はなかなか面白かったものでございます。


 学業におかれましても、小学校から大学まで続いている一貫校に入り悠々自適な生活を送られていました。私には叶わなかったことなので少々妬ましくも思いますが、学業にあまり比重を載せない分早朝から水泳の教室に出向かれたり、そのまま登校したりと今から思うとなかなか一般人にはできたものではないことをしていたなと思わされます。


 さて、一通り振り返りが終わったところでございましょうか。ご結婚に差し当たりお兄様の女性関係についても触れてみることとしましょう。


 まずは生まれたところからでしょう。入院中同じ病室にいた2名の女性がいらっしゃいましたね、同じ日ではありませんが同じ病院、同じ時期に生まれたということでお兄様と拓也様、そして愛莉様は幼少の頃より仲良くされていたかと思います。夏休みには一緒に避暑地へ旅行に行ったり、冬にはスキーを一緒にしたりと。私も3歳くらいの頃にスキーについて行った記憶が残っていますし、皆様とは年に1度程度ですが会ってご飯を食べたりしていますね。愛莉姉様におかれましては勉強が優秀で遠くの大学に入り最近は寮で生活をしているとのことで、私もたまに連絡を取っていますが本当に聡明な方で、しかも嫉妬してしまうような可愛さをお持ちの方でございます。


 次に私の気になるところとしましては幼少の頃住んでいたところの近所さんであったお兄様と同い年の優香様と、その2歳年下の楓様ですね。お二人はお兄様と同じピアノの教室に通っていたり、また音楽大学に連なるところに通われていましたので今では音楽大学に入り作曲などをされています。優香様には私も多少師事することがありましたので最近のご様子も存じ上げております。楓様と優香様とお兄様で音楽のコンサートに行ったこともありましたね。優香様とは趣味も本当に合っていて、好きな曲や映画のワンシーンなど示し合わせてもいないのに本当に同じところが好みで、お兄様も音楽大学には行っていないもののかなり音楽に理解がありますから作曲した曲についての議論などをされていたこともありましたね。お二人は「30歳まで2人が独身だったら結婚する」などと言っていましたが、なる前に結婚してしまいましたね。


 音楽の話で言えば、通っていたピアノの教室の先生のご子息である沙耶様もお兄様と同い年でしたね。優香様とお兄様と沙耶様、楓様はとても仲良く、もちろん私もその輪に加わることがありましたがやはりその4人で仲良く遊ぶことが多かったのではないでしょうか。水泳が影響して学校に関しては結構無頓着であった手前、ご近所さんとの付き合いが多かったようにも感じられます。


 皆様幼少からそばにおられましたので、恋愛感情などに発展することはなかったのでしょうか。ここであの女狐が出てくるのであります。


 お兄様に聞くところではちょうど高校に上がったころ、通っていた水泳の教室でその方に出会ったということでしたね。お兄様はもちろん全国大会に出る実力を身につけてらっしゃいましたし、その方も女子水泳選手として全国大会に出場していましたね。その点は評価をしましょう。奥方様になられますので一応名前はあげておきましょう、綾香様でございますね。


 いつから恋心のようなものが芽生えたのかは知りませんが、本格的に付き合い始めたのは高校三年になるころぐらいだったと聞いています。そこまで可愛いわけでもないですし、なんだかいじめられていたとか前の彼氏に酷いように扱われていただとか、そもそもいい話が上がっていなかっただけに私もお父様もお母様もかなり怪訝な顔をしていますね。


 初めて一緒にご飯を食べた時も、緊張されたのかわかりませんがお腹を下して帰り際あまり体調のすぐれないようなご様子で、本当に大丈夫なのかなこの人、と思ったのを覚えています。


 お兄様と違って受験がありましたので、大学受験のために水泳はお兄様より一歩先に引退されて勉学に励まれたようで、数学などにおいては優秀な成績を収めたと聞いています。

 かくいう私も少々成績が低迷していた頃に綾香様に家庭教師としてきて頂いて指導をいただいたことがありますので、その点では感謝を申し上げましょう。


 ただ、私としてはまだ結婚に納得していない部分がございます。容姿がまずお兄様に似合いません。もっと可愛らしい方はたくさんいらっしゃると思います。それに、勉学ができるからといって「頭がいい」というわけではございません。話が通じなかったりする方は私の好むところではございません。

 お母様と一緒にご飯を食べた際にも、あまり行儀の良いといいますか育ちの良い方には映っておりません。

 歯の揃いもなんとも言えませんでしたね。私の母方の一家は歯医者を経営しておりますから、歯のことに関しましては他の家よりも一層厳しいことは承知でございましょう、その上でかなり歯の状態がいいとは言えません。


 そんな女性のどこがお兄様の心を射止めたのでしょうか。


 近頃は夜通し連絡を取られたり、ことあるごとにお会いになられたり、まあもう結婚が近いのであれば認めないわけにはいかないのでしょうが、優香姉様や愛莉姉様と親しい私からするとぽっと出の女性に奪われるよに見えるのがどうもやりきれないところがございます。

 綾香様はその過去も相まって精神状態が安定しているとは言えません。ご連絡の際もお耳汚しを謙遜ではない用途で使いたくなるようなことが何件もありました。(部屋が隣ですのであまりにも大きな声で喋っていらっしゃると聞こえてしまうのです。)


 何より優香姉様が不憫でございます。お二人の相性は本当に良いと私もお母様も思っておりますし、30歳になられたからのお話結構お姉様は気にかけてらっしゃいましたし、最近私と2人でお茶をした際も綾香様に対する愚痴で少々盛り上がりもいたしました。


 このような話をしてもお兄様が気になさらず、狂ったように綾香様を推す理由が私にはどうにも理解できません。何か妖の類なのではないかと疑ってしまうところでもございます。


 実際この世界には不思議な現象というものがいくらでもございます。日本でも古くから神話の信仰はありますし、神隠しなどの現象も実在するものでございますから、女狐、というのもあながち虚構ではないでしょう。


 話は変わりますが、近頃は物騒な話も多いですね。路上で女性が通り魔に遭い滅多刺しにされて亡くなられてしまったとか、ビルから飛び降りた人にぶつかって下を歩いていた人諸共亡くなってしまったとか、ニュースではそのようなことばかりが放映されています。

 私も包丁の扱いなどには気をつけたいなと思う所存でございます。最近は料理などもいたしますので指など切らないようにと。


 同棲する際にはぜひ綾香様にも包丁に気をつけるようにとお伝えください。


 喧嘩などすることはございましたが、私はお兄様のことを尊敬しております。様々な問題があったでしょうが、全国大会に出るほどの努力と実力は本当に心から評価するところでございます。

 その点、今後お兄様がどのような生活を送られるかは私の想像するところではございませんが、無病息災、長らくの健康をお祈りしております。


 お兄様を思う妹より


 


 感情が乗るあまりあまり適切でない表現をしてしまったかもしれませんね。書き直さなくてはいけないかもしれません。消さなくてはいけない一文もあるかもしれません。


 書き直す間に指を切ってしまいました。紙と言うものは鋭利で仕方ありませんね。少し血が滲んでしまいました。


 そんなこともありましたが一通り手紙を書き切りまして、こちらをザクロの花の綺麗な模様を押した、赤く染まった封蝋で閉じましてお送りするといたしましょう。


 結婚式の無事な開催を心待ちにしております。

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― 新着の感想 ―
今作も読ませていただきました。「お兄様」呼び、尊いですね。お兄様への愛が強すぎるあまり、血の滲む程結婚相手を恨んでしまう妹はなかなか可愛くて面倒くさいなと思ってしまいましたが、お兄様が好きすぎので仕方…
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